26話【召喚師の火種】
◇召喚師の火種◇
エドガーが
泣きじゃくると言う言い方が、
「――うわぁぁぁぁぁん……ひぐっ……わあぁぁぁん!」
しゃくり上げ、大声を上げて、大粒の涙を流してだ。
子供特有の泣き方と言えば、想像は
それにしても、中身が5歳と分かっていても、17歳の少女のガチ泣きとは。
「ど、どうしたの……?」
コノハが泣いているのは、宿のロビーだ。
誰も客がいない事が助かるというのはおかしな話だが、コノハをガン無視するサクヤや、
ならば、この様子を見ていたフィルヴィーネに聞くしかない。
「――フィルヴィーネさん……いったい何があったんですか?」
「おお。エドガーか……なに、
フィルヴィーネは階段の踊り場で様子を見ていた。
エドガーはそこまで上がって行き、
事の
コノハにそう言った
コノハは、持っていたリザを結構な
「それくらいでどうにかなる訳あるまい」と、フィルヴィーネは鼻で笑ったのだが。
サクヤは違った。コノハに対して、激怒りしたのだ。
今も泣きじゃくる妹を気にかけてチラチラと横目で見るくせに、盛大に怒ったらしい。
「物を
「も、物って……」
エドガーはちらりとサクヤを見る。
怒ってしまって気まずいのと、
しかし意地を張って、何が
階段を下りて行き、エドガーはサクヤの肩をポンッと叩く。
「サクヤ……それだけじゃ
「あ、
サクヤも泣きそうだった。
「ほら、僕も妹がいるけどさ。ただ上から怒鳴るだけだと、何で怒られたのか分からないでしょ?ちゃんと
「ははは……」と、
「――あわわ……うわっ!」
あわあわするリザを
「ほら、コノハちゃん。リザは大丈夫だよ……ほらリザもなんか言って」
「……そ、そうよ!私は
小さな手で、コノハの涙を
リザはやけにコノハを気にかけている。
それはサクラだと言うのもあるだろうが、それだけではないのではないかと、エドガーは思っていた。
その
「――こやつ、サクヤがコノハの話をした
「え、ああ!あの時ですか……」
サクラがサクヤの過去の話を聞こうとしなかった時、サクラは顔を隠すようにリザで見せない様にしていた。
「そうだ、
「そ、それは言わなくても分かります……」
「ふふ……
「……うっ!」
「
何かに刺されたようなリアクションのリザを
答えてくれるかな?と、少し思ったが。
「――《石》……
「へぇ……へ?え?……はぁっ!?」
少し落ち着いていたコノハがまたぐずりそうだったが、何とか
「……な、何かしら……?」
「リザ。目を
エドガーは笑顔だ。だが「
「
「えっ!?」
フィルヴィーネは、助言はするが答えは出さないと言っていた。
それがどうして今は?と、ほんの少し頭をよぎったエドガーだったが、それどころでもなくなってきたので、リザから話を聞くのが先決だ。その為には。
エドガーは少し、ほんの少し大きな声でサクヤを呼ぶ。
「――サクヤ!急いで謝るんだっ……」
「え、ええっ!?……し、しかし姉であるわたしが折れる訳には……」
「いいからっ!こんな時に姉の
座り込むコノハの前に立たされ、先ほど言われたようにしゃがみ込んで
「ぅ~……」
「う。そ、その……だな」
コノハの
きちんと説明をして、理解してもらえるようにしなければ。
「……コノハ。わたしは……いけない事をしたから怒ったの……でも、怒り方がいけなかったと思う。それは、ごめんなさい……」
深く頭を下げるサクヤ。コノハも
「姉上も悪い子なの?」
真剣な姉の
いい子いい子だ。
「コノハ……うん。ありがとう……でもね、コノハがしたことは、決して良くはない事なのよ?……それは、分かってくれたかしら」
コクリと、浮かべた涙を
「うん、それじゃあ、リザおにん……じゃなくてお姉さんに
「今、お人形って言おうとしなかった?」
「リザは
リザの疑問はエドガーが封じ込めている。
それに気付くことなく、コノハは。
「はい、姉上……」
すくっと立ち上がり、コノハはエドガーに持たれるリザへと寄っていく。
エドガーからリザを優しく受け取り、両の手のひらをくっつけて乗せる。
「リザ、ごめんなさい……痛かった?」
「……そ、そうね。少し……でも、コノハに
小さな手を
その優し気な
「うん。これからは、大事に
「ええ、そうして……――ん?」
「
「ん?え?……ちょっと……今なんか」
「さて、コノハちゃんも上手に
リザの
残念ながら、
◇
コノハとサクヤの小さな
残ったエドガーは、リザから聞き出さなければならない。
「じゃあリザ……聞かせてもらうよ?【
「……えっと……」
リザはフィルヴィーネを見る。
許可を
フィルヴィーネは「構わんだろう」と
「まずは、サクラの
「《
サクラの《石》、それは
今は
エドガーは、サクラは自分の心の
「なにも
「リンク……ですか。それって……つまり」
「そう。
「フィルヴィーネさんでも……ですか?」
「ああ。
サクラの精神、心が《石》の中に逃げ込んでいる。
【
「それじゃあ……【朝日の
しかし、サクヤを送り出してもいいものだろうか?
そもそもサクヤの話を聞き、心を取り乱して逃げたのだ。
そのサクヤが追って来て、戻って来いと言ったとて、素直に
「……メルティナの【
「あれは【
もしかしたらと思ったが、やはり
エドガーだって“魔道具”には
「――
「何を言う」
「……え?」
フィルヴィーネはニヤリと笑う。
心当たりがあるのだろうか。いや、もう確信しているような笑みだ。
「何のためにこ奴に話をさせたと思っている……」
「――え、ふぎゅっ!!」
フィルヴィーネにむんずと
そして、その指の
「……あっ!!」
「そうか!」と、その《石》を指で
それは、エドガーが加工してリザに
「いや……でもコレは、僕が加工して出来上げたもので……そんな大した力は」
「充分だ。で、あろう?」
「……――はい。フィルヴィーネ様……充分に可能です」
可能だった。エドガーは
それ以上に、自分が加工した《石》がそれほどのものだと言われて、正直嬉しかった。
リザは言う。
「初めからそのつもりではいました……ですが皆が皆、別のやり方で進んでいましたので。それを待った方がいいのかと思い」
では
エドガーはハッとする。
「……!……もしかして……時間が無い?」
「そういうことだ。このままでは近い内に、人格がコノハに固定されるであろう。そうなれば、サクラの
「そんな……」
今初めて、
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