189話【サクラフブキ】
◇サクラフブキ◇
サクヤの過去の話は、それで終わりだった。
でも
(生まれつき持っていた……だとすれば、
――ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ!!
「――わぁぁぁぁっ!!」
まるでフィルヴィーネの発言を
「わっ、ごめんごめん……アラームだ!」
サクラは【スマホ】をタップして、
その様子を、少し戸惑ったように見るフィルヴィーネは。
(このタイミングで空気を
そう内心で
「クックック……
(まぁいい……しばし様子を見よう。楽しみでもあるしな……)
「そ、そうですね……明日も早いし、サクヤも疲れたでしょ?」
エドガーも、少し疲れを顔に
「――あ、はい。少しだけ
「うん。それじゃあ、おわりだね」
優しげにサクヤに接するエドガーを見ているサクラだったが。
「ねぇサクラ――そろそろ私を離してくれないかしら?」
「……え?あ……ごめんごめん、リザちゃん」
サクヤの独白中、ずっとサクラに
機嫌もよさげに「ま、まぁいいのだけれど」と、言っていた。
リザをテーブルに降ろすサクラを見ながら、エドガーがフィルヴィーネに声を掛ける。
「――僕は先に戻ります。そろそろメルティナも帰って来てるだろうし……今日の事を説明しないと」
「ああ、それならあたしがローザさんに言ってあるよ?」
「……え、ローザに……?」
エドガーの目は「出来るの?」と問いかけているように見える。
サクラは自信なさげに言う。
「あはは……た、多分」
自身はないのか、
「と、とにかく。戻ってるかどうか確認しに行ってくるね。サクラとサクヤは……お風呂にでも入ったらいいよ、その……ゆっくり休んでね」
そう言って、サクヤとサクラ、二人に気を回して部屋から出ていったエドガー。
「そうしようかサクラ。わたしは先に行くぞ?」
「――あ……う、うん」
サクヤもかなり疲れたのか、エドガーの言う通りに大浴場に向かうようだ。
残されたのは、サクラとフィルヴィーネ。とリザ。
自失気味にサクヤを見送るサクラ。その姿に、フィルヴィーネが声を掛ける。
「……気を遣われたな。エドガーにも、サクヤにもな」
「……そう、ですよね」
フィルヴィーネは
理由も分かる。それでも、助言はしない。
それをしてしまえば、この
サクヤもエドガーも、サクラに気を遣って早めに出て行った。
エドガーは二人に気を遣って、考える時間を与えようとしたのだろう。
サクヤは、おそらく気まずいのだろうとフィルヴィーネは考えた。
「――どう、思いますか?フィルヴィーネさん……」
「サクヤの、
少しビクつきながらも、サクラは
「……はい」
フィルヴィーネは
スーツの様な服を、魔力で切り替えて、ラフな服装に着替える。
フィルヴィーネの服は全てサクラが用意したもので、日本のトレンドを
アップにした髪を
「サクラ。お前はどう思った……サクヤのあの話を、そのまま信じるか?」
「
「――であろうな。エドガーの【
(しかし、この娘が真に気にかけているのは……)
エドガーの新たな能力、【
「……だがなサクラ――お前が真実に
少なくともフィルヴィーネには、リザを両手で
サクラは、サクヤが帰った後の扉を見つめ、
「……知ってます。あたしは、サクヤの言葉に怯えてました……きっと、聞きたくなかったんだと思います……それは、【忍者】……――サクヤも、エド君も気付いてて……サクヤもきっと言わないようにしてたんだと思いました……多分、初めて会った時に、もう気付いてたんだと思うんです」
ふぅ、と息を落とし。
しかしもう、
「――あたしがもし、サクヤの妹の……
「……ふむ」
(答えに
フィルヴィーネは
自分がサクヤに話させたとは言え、言動にすら
フィルヴィーネは慎重に、それでもサクラに言える範囲の言葉を与える。
「――サクヤからすれば、悪くはない気分だろう。だが本人からすれば、【魔眼】の暴発とは言え……殺してしまったと言う事実があるからな……」
異世界の
そう思っていた。だがそれは、サクラが思っていた事だ。
しかしきっとサクヤは、あの時初めて顔を合わせた瞬間、サクラが妹の生まれ変わりだと気付いたのだ。
「お主達は、同じ
「え……うん、多分……そうだと思うけど……」
「お前が妹の生まれ変わりだとして……サクラ、お前はどうするのだ?――まさか、妹として生きていくつもりか?」
「それは……違う、けど……」
「――けどなんだ?あ奴の話しに
「――ち、違うっ!!」
カッとなって、大きな声を出してしまう。
それでも
「それだけは違うんです。あたしは……同情なんてしてない、だって、だってそれじゃあ……」
自分自身に同情するのと同じ。
自分が
それだけはしてはいけない。
「カワイソウでしょ?」と、自分から同情を
「……――ならばそれでいいではないか。馬鹿者が」
「――え?」
「やれやれ」と言って、フィルヴィーネは疲れたように息を
「――サクヤに言ってやれ。自分は違うと……妹ではないと、ハッキリとキッパリと……その口で言えばいい。あの視線は妹ではなく、
サクラがリザで顔を隠している間、サクヤはサクラを見ていた。
それを、サクラは気付いて隠していた。目が合えば、確定だと言われる気がして。
「……し、知ってますってば、そんなこと!」
フィルヴィーネの様に、「何事も
最後はバタン――!!と扉を閉めて、サクラは逃げて行った。
「……やれやれ、青いな」
「そりゃあ、フィルヴィーネ様と比べてしまえば誰だって青いでしょうに……」
若く青い果実の様な、少女達の
ん千年とん百歳の“魔王”様は、
(……これが
目を閉じて、悩める少女達の
助言の一つで
例えその悩みの答えを知っていようとも、その先にどんな選択肢が存在していようとも、フィルヴィーネには、この世界に
◇
二階の休憩スペースの柱の影から、一階に下りる為の大階段を見つめる。
少しして、全速力で階段を
その走っていく少女の後ろ姿を見ながら、もうひとりの少女は
当然、自分自身にだ。
過去を話したことで、何か
《契約者》である彼か、はたまた自分か。
まさか彼女にだとは、思いもよらぬ形に自分を
記憶を
笑顔のまま時を止め、そのまま
『――あははっ!姉上ぇ!こっちです、こっちこっち!』
思い出されるのは笑顔のままの幼い妹だ。
けれども、ありえない筈の成長した姿の妹が、
「……話さねばならぬ状況だったとはいえ、
彼女が
それは
「――だが……わたしは信じるさ。サクラ、お前を……コノハではない、別の世界に生きていてくれたお前を……わたしは、絶対に守って見せる……!」
妹を殺めた【魔眼】に
もう二度と、
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