188話【咲夜の歴史】
◇
その言葉を聞いた時、
サクヤの口から
まるで、あたしがその
「――わたしは本来、双子です。妹の名は……コノハ。《咲くやこの花》、から名付けられたらしいです」
あたしの名前ではなかった。
でも、胸のドキドキは止まらない。全然止まってくれない。むしろ、コノハと言う名を聞いて心音が加速していた。
エド君もリザちゃんも、
「――初めの頃は、【魔眼】なんて知らなくて……普通に過ごしていました。ですがコノハの、妹の心の臓を止めたのは、本当に
あたしを見て、その言葉を並べていく。
「かけっこをしていたんです。でも、突然動きを止めた妹は、後ろ姿のまま……笑顔のまま……息を引き取った――その場で死んでしまったのです……どうにも、
「
いつもはおちゃらけて、ふざけて、笑って
そんな
話しを聞きながら、あたしは
「うわっ……!?」
「――ふぎゅっっ!」
リザちゃんで顔を隠すみたいに、
「――はわぁぁぁぁ!」と、リザちゃんは変な声を出す。
うるさいとも思ったけど、
エド君も、何かを
「――その後は、目隠しをした生活でした……家族内でも、
全てのきっかけとなった“妹”コノハの命の停止。
それが始まりとなって、サクヤの
父親は、サクヤの左眼が【魔眼】である事を知っていたらしい。
自分が心臓を止められる事を恐れて、
最低だ。でも、恐怖は
あたしだって、恐怖は知ってる。
声も出ず、身体が言う事を聞かない。
誰にも言えなくて、人知れず、心を
サクヤのお父さんも、そうだったのかな。
「五年ほど
「今思えば悪い事をした」そう言うサクヤの
「……
「徳川に
「わたしから歩み寄っても
長いサクヤの独白に、フィルヴィーネさんは。
「――どちらにせよ、お
自分の家に
そう言えばあたしも、居場所は自分の部屋だけだったっけ。
「その通りですフィルヴィーネ殿、わたしの
サクヤは拳を
少し
最近はエド君とも剣術の
「ある程度の
この
家の人に用意された、
それを言ったらわたしも変わらぬがな、と、
「それでも。
「い、
エド君が聞く。少し聞きにくそうにしてるから、かなり気を使っているのが分かった。
「はい、
一人の子供を“
いくら異能を持っているからとはいえ、
「わたしは気にしていません」
「事実ですから」と笑うサクヤの表情は、優しげに
そんなのは違うよ、
それは多分、サクヤが妹を
「そうして数年何も変わらず、父上は隠居しました。名を息子、わたしの兄に
そうか、少なくとも、お母さんは味方でいてくれたんだね。
――ああ。あたしとは反対だ。
サクヤの時代だと、女性の立場はかなり低い筈。
それでもサクヤの味方をしてくれてたと考えたら、いいお母さんだ。
「……兄上が
そういえばそうだった。
「――なんと!お前は
フィルヴィーネさん、それあたしも言いました。
「違うっ!……あ、いや違います」と、いつもあたしに言うみたいに言いかけて、フィルヴィーネさんにツッコむ。
「
ああ、その言葉だけで、エド君が
多分、大切な人がいたのに“召喚”してしまった。って思ってるんだ。
「……何の時間を過ごしていたのか、わたしの人生は何だったのか……
妹の死、家族から“
十年以上
そして
あたしも一緒に居たとはいえ、もしかして、あの時のサクヤって、あたしに対してかなり緊張してた?
ああそうか……もうその時に、あたしが妹なんじゃないかって、
『そんなはしたない声を出すものではないぞ、そなたもヒノモトの
あたしの顔を見た瞬間のサクヤ。よく思い出せば、凄く
やっぱり、妹さんの
「
身体の再構築。そのおかげで、不安定だった【魔眼】の
「……ふむ……では、ここに来るのが運命、いや
「「――!!」」
フィルヴィーネさんの言葉は、サクヤにもあたしにも刺さった。
きっとこの場にいれば、ローザさんにもメルにも刺さるはずの言葉だ。
「正直言って、“運命”などといった安い言葉で買えてしまえるほど、
サクヤは
あたしも、内心で返事をしていた。
「ならば話は簡単だ……“運命”は“必然”に変えればいいだけ、運命的に出会うのではなく……初めから必ず
運命の出逢いを果たした。
そんな言葉、何の信用になるのか。
あたし達異世界人は、理由が
そう取っても、取られてもかまわないと思っていた。
でも、自分自身で思う事が違えば、それだけで見方は変わる。
必ず出逢う。何があっても必ず。
絶対、エド君と出逢う。
運命の出逢いと、必然の出逢い。
運命は変えられる。けれど、必然は変えられない。
逃げられない、確定の世界。
あたし達とエドガー・レオマリスは、そういう関係。
そう取るだけで、世界の色が変わる。
考え方、思考実験、思い込み。
なんだっていい。あたしが決めればいい。
あたし達で決めればいい。
――そう思えれば、どれだけよかったんだろうね……
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