169話【喧騒はやってくる】
◇
メルティナからの苦情(せめてもの抵抗)を受けて、フィルヴィーネは服を着た。
フィルヴィーネが魔力で作り出した服は、
これが“魔王”の戦闘服だと言う。
下はかなり短いスカートだ。タイトとも言えずワイドでもない。
見た人によっては、超ローライズパンツにも見える事だろう。
手足にも同じくレザー素材のロングブーツとアームカバーを装着しており。
“召喚”されてからは借り物の服を着ていたフィルヴィーネだが。
先程の戦いで、ローザの炎によって
これで自分の好みの服を着れると言うものだと、内心喜ぶフィルヴィーネ。
「さてと、これでいいであろう?」
「イエス……」
「む?なんだ
「いえ……そうではなく……」
メルティナはローザを見る。
ローザも、まぁまぁな
初めは、エドガーの妹の服を何着もアレンジして着ていたのだが、最近自分で購入した物は、この前の戦いで焼け
なので今は、ローザも自分の魔力で作ったビキニスタイルの
暑いのか、それとも
「……メルティナを
ローザはフィルヴィーネに話しかけている。
メルティナの
なんだか少しは打ち
「そうだな。それで今日は
「そう。分かったわ……」
「え……あっさりと
すんなりとフィルヴィーネの
メルティナが到着するまでの数十分で、なにが起こったのかと思うレベルだ。
「別に。フィルヴィーネも異世界人の仲間だしね……順番に
「――え、ええっ?」
受け入れたどころか、好意的にも見える。
実の所、ローザは先程の戦闘で、ストレスの大半を解消していた。
“魔王”に敗北を与えた事で、
しかし、それもフィルヴィーネの対応
「うむ。では始めるかな……【
「だ、だから、それやめてってば……!」
フィルヴィーネはカッコいいと思って言っているのだが、ローザはやはり気に入らないらしい。
「ほれメルティナ。お
「え……あぁ……
フィルヴィーネは夜空に上がって行き。
メルティナもまた、少し離れて上昇した。
そして、本日最後の戦いが始まる。
◇
開始の
フィルヴィーネのいる夜空に、
先制をさせたのはフィルヴィーネだが、ローザもそれを受け入れて攻撃している。
フィルヴィーネの背後に位置するメルティナは、両手に持った【エリミネートライフル】を
「――どうしたメルティナ!このまま何もせずに
「そ、そういう訳ではっ!」
メルティナは
“悪魔”バフォメットとの戦い以来に使うが、メンテナンスはばっちりだ。
「そこですっ!!」
キュインと一瞬音を鳴らすと、電撃を走らせて
音速で、しかも背後から迫る弾丸を、フィルヴィーネは
――ガギン!と音を鳴らした弾丸は、メルティナの横をかすめて行った。
「なっ!?」
(理解不能!!音速の弾丸を!?――しかも完全に裏をかいたはずです!)
しかも、ローザの攻撃を回避した直後でもあった。
それを、見もせずに
「――お
「……イ、イエス……その通りです」
フィルヴィーネの言葉に、メルティナは
完全にその通りでショックを受けたのだ。
メルティナがまだ戦闘サポートAIだった頃、その
その戦いでは、周りを気にする必要は無かった。
【ランデルング】に積まれた【エクステンションバリア装置】が、実弾もエネルギー弾も
だが、今は違う。
【
しかも味方がいる事で、攻撃の
パイロットがいた時とは違い、自分の攻撃の
時間と経験がそれを
「そんな事――経験して
「そ、そうは言われても」
メルティナは一人ではない。
そう伝えたかったフィルヴィーネだったが、どうも
そんな混乱するメルティナに、地上にいるローザが助け
「――私と“
少し
ローザが言う――今、メルティナが自分よりも強いと。
「……ローザ……」
しかし何かすっきりしたような、そんな
(……ワタシいない間に……ローザに何があったのでしょうか)
しかし、そのローザの言葉はメルティナに刺さった。
気を
それは、ローザもフィルヴィーネもがされたくない事なのだろう。
メルティナも意識的にそうしていたわけではない。
ただ、知らなかっただけだ。
「クックック……
「うるさいわねっ!それなら
ローザは火炎放射をフィルヴィーネ、そして
その攻撃に、
「――なっ!?」
「むっ……!」
竜にも似た
それを
「……ロ、ローザ!」
ローザとフィルヴィーネの言葉を考えていたメルティナは、まともに
自身の身体よりも大きいサイズの【エリミネートソード】を
そんなメルティナの心を
「フッ……それでいいのよ、私達にはね」
ローザは、どんなに強い相手にだろうと立ち向かう。ローザの場合突っかかるとも言うが。
事情も状況も違う、異なる世界からやって来た。
そんな異世界人である自分達の
それはそれぞれが違うものであることは明白で、
けれども、それが
この
「――メルティナ。私は……
「それはもう、分かっているでしょう?」と、メルティナに問い掛ける。
が、その言葉は
「なんと……やはり
【心通話】からは無言。
「ローザ、それは……い、いいのですか?」
知られても、いいのかと。
フィルヴィーネを“召喚”する時、ローザはそれを知られるのを嫌がった。
メルティナに
あの時、それが自分の中でも
着地し、メルティナはローザに近寄っていく。
フィルヴィーネも空中で
「……ええ。決めたわ……このままでは、私はエドガーの役に立てない。立てなくなる……それよりだったら、私の
「しかしそれでは……マスターはきっと……」
エドガーは傷付くだろうか。
自分のせいだと。自分が“召喚”したせいだと、自分を責めるかもしれない。
「――かもしれないわね。でも、それは違うわ。私は
「だからメルティナ。
それは、異世界人での
「――面白いではないかっ!
最初からしていないでしょう。とローザは感じていたが、口にはしなかった。
「そういう事よ。何も
ウインクし、ローザは
フィルヴィーネもまた、合わせるように空に上がっていく。
「……」
(ワタシに……出来るでしょうか。マスター、エミリア……)
人工知能のままでは、こうはならなかっただろう。
この感情を
◇
フィルヴィーネを常に
(悩みなさい。メルティナ……きっとそれが、
気持ちを切り替えて、今度は。
「――さてと、聞いていたでしょう?返事をしなさいな……」
胸元のカメラを持ち上げ、レンズを
ローザの
こちらも聞いておかなければ。
全員で――先に、未来に進むために。
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