144話【本領】
◇
メルティナを待つ間、サクラは何か思いついたように
「《石》
「……どのくらいの物を作るつもりなのだろうか……
「さぁ。けれど……やる気があるのはいい事でしょう?」
「そ、それはそうだが……わたしには不安しかない」
「……私は楽しみだわっ!異世界の馬車……あぁ、私も行きたいなぁ……」
「……ローマリアはダメよ。せめて休日になさい」
「うぅ……ローザが言うなら、
サクラの様子を見るサクヤ、ローザ、ローマリアの三人は、口々に物を言って話をしていた。
王女はどうしても一緒に行きたいようだが、
「……それにしても、ローザ殿はどうして場所を探しているのだ?」
ローザが戦える場所を求める
言いたいことは分かる。
サクヤはきっと【召喚の間】を使えばいい、と言いたいのだろう。
【召喚の間】は歴代の【召喚師】が使用してきた
大掛かりな“召喚”を行う
【召喚の間】、その最大の
それは、ローザの炎であろうと、メルティナの
「【
「そういうものか……?」
「そういうものよ。毎日のように訓練しているのだから、なんとなく気付きなさいよ……」
「うぐッ!」と、サクヤは
もう
ローザ、サクヤ、エドガーの三人は、早朝トレーニングと
その時ですら、ローザは剣しか使っていない。
それほど、ローザの《
ロザリーム・シャル・ブラストリアは、剣士ではない。
――魔法使いだ。以前の戦いで使用していた【
つまりローザは、この世界に来てから
ただ
「――私が本気になるには、この街は
ローザの炎は、自由自在に消す事が出来る。
逆を言えば、並の人間にはローザの炎を消すことは出来ない。
水を掛けようが砂を掛けようが、ローザの意思が全てだった。
「なるほど……わたし達の世界とは、
サクヤは、戦国の世と比べて「うむむ」と考え込む。
「ふふ、そうよ。ただ……」
(その《魔法》を使う為の魔力の
「ただ?」
「……あ、いえ、なんでもないわ――ほら、エドガーとメルティナが来たようよ」
「おお。本当だ……あ、
サクヤに返答せず、ローザは自分自身の問題を心に
この先魔力が回復できても、弱まっていく自分が、どこまでエドガーの役に立てるのかと、思わずにはいられなかった。
◇
メルティナは大きめの木箱を
その後ろから来たエドガーは、ガックリと肩を落として、絶望すら
これは、
「お待たせしましたサクラ。【
「――え~っと……うん!あたしの方も設計図描いてたからさ、これを見て作ってくれる?」
サクラは箱の中身を確認して、メルティナに大学ノートを渡す。
車の
「これは……張り切りましたね」
「まあねっ」
サクラは、メルティナが持ってきた木箱をガサゴソさせながら、想像を
「正直、魔力がどうとかはよく分からないけどさ……数を増やせば何とかなるかな?」
「……はは……もう好きにしていいよ……」
エドガーは、もう完全に
少し申し訳なさそうにするメルティナが、エドガーの頭を
その様子を見てローザが
「安心してくださいマスター。《石》が有効に使えれば、《石》そのものよりも素晴らしいものが作れるのです。きっと、マスターもお気に
「……そうなのかな?」
子犬の様に、エドガーはメルティナを見上げる。
エドガーはしゃがみ込んでいる為、メルティナは中腰状態だったのだが、エドガーの
「そ、そそ、そうです……です、す」
<……
メルティナは、前マスターのティーナ・アヴルスベイブをベースに身体を
肉体年齢は、
つまり簡単に言うと、年下好きなのだった。
<感情が
<へぇー、へぇー>
<確かに、
<
「はっ!――!?ワタシは、口にしていましたか?……それとも【
イラっとしてそうなローザが。ニヤニヤするサクラが。
同意して
心が弱っているからだろうか。
「ノー!!ち、違います!」
「――えっ、何が?」
状況理解をしていないエドガーは、突然
「マ、マスターには関係性は
「ええぇ……」
エドガーは、更にへこんだ。
それを見て、他の異世界人達は笑う。
「……
「でしょうね」
ローザが前と同じ
「あたしは想定してたけどねぇ」
「わたしもだ」
「
「――なぜお
サクラは、自分に同意するサクヤを
フィルヴィーネはもう
「――と、とにかく!【クリエイションユニット】
メルティナは、手足に付けられたリングを
人間サイズ以上に大きくなったリングは、空中でゆっくりと回り始めて、やがて停止する。
「サクラ。設計図を!」
「あはは、あ。はい……」
まだ笑っていたサクラはメルティナの
「……インストール開始……終了」
早い。
「はっや!」
「続けて作成を開始します……」
どうやらもう、メルティナは全員を
そもそも
サクラは苦笑いを浮かべながら、メルティナの隣に立って
ローザはエドガーを
サクヤも、
見事にバラバラ、
そんな人間達を、“魔王”フィルヴィーネだけが見ていた。
(――あほらしい……が。
そう心で
◇
作業は
「終了まで残り三分。想定よりも大きくなったため、【クリエイションユニット】のゲートを広げます」
空中に浮かぶ【クリエイションユニット】は、スライドギミックにより幅を広げた。
4機の【クリエイションユニット】は連結を解除して、レーザーで
しかしその間に、しっかりと作成は完了した。
後は完成品を出現させるだけのようだとメルティナが言う。
「――完了しました。多少
メルティナの言葉に
すると【クリエイションユニット】は小さく
「――えっ!?」
エドガーは、完全に馬車を想像していた。
木と鉄で出来た、
しかし、現れたのは想像とは真逆。
木の車輪ではなく、黒い
「「す、凄い!!」」
エドガーとローマリアの
それは、数人いた通行人も同じだったが、どちらかと言えば恐怖しているように見えた。
しかし意外にも、サクヤはそうでもなかった。
「あんた、
「……」
「【忍者】?」
「あ、ああ。何というか……想像していたものと同じ過ぎて、
「……は?」
サクヤが想像していたものと、同じ。
それは、サクラが設計したものと同じだという事。
(どういう事?……時代的に、この子があたしと似たような
「ん?」
(……とぼけた顔して……
真剣に考えるサクラに対して、サクヤは
(……あたしと同じ
何気に失礼だ。
サクヤの
戦闘面に関しては言う事は無いが、それ以外は、正直子供以下だとサクラは思っている。
――本当に失礼な話であった。
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