143話【劣化した世界】
◇
全員が宿の外に出て、広いスペースを確保したエドガー達は、メルティナとサクラが中心になって事を進めていた。
サクラの案である、自動車を作成するためだ。外に出て来てはいるが、少し通行人の
特に“魔王”フィルヴィーネだ。サクラが
もう言っても効果がないと分かって、誰も言わなくなったが。
「……ではサクラ、《石》に
そんなこんなで、メルティナは自身の背にある《石》、【
「あえて聞くけど、痛くないよね?」
「イエス。物理的な痛みはないはずです」
「……
サクラは前髪を上げて待機していたが、ほんの少しだけ不安そうにしている。
【
サクラの
そのどこに力があるのだとサクヤが言ったり、エドガーも元の【朝日の
ローザの見解は――『頭の中にあるのでしょう?』と一言。
それはつまり、元は手のひらに
その事を
ヤケクソとも言うが。
三人共教える気はなさそうだが。
「
「三分ね」
「
エドガーの問いにサクラが答える。
「だね。1
どうやら時間の数え方は、サクヤ以外の【異世界人】が共通のようで、エドガー達の数え方は多少の
しかし今いる時間から数えて、過去の世界から来たローザとフィルヴィーネの数え方までが違うとは思わなかったが。
「……わたしの所は、
「あ~、そういえばそっか……何だっけ、
「むぅ……仕方が無いな……
パンを
ローザに突っ込まれたパンだった。
メルティナとサクラの作業に
「
「フィルヴィーネさんも出来るんですか?」
エドガーも三人に近寄り、声を掛ける。
フィルヴィーネが言った
きっと今のメルティナと、似たような事が出来るのではないかと。
「出来なくはないがな。
「――ワタシにも定められた
「メル……ありがと」
嬉しそうにするサクラ。
メルティナがまさかサクラの
少しばかり意外で、エドガーも嬉しそうにする。
「面倒だな……人間は」
「フンっ」と鼻を鳴らして、フィルヴィーネは
そのまま地べたに座って、こちらを
もしかして、見定めようとしているのだろうか。
あと、一応
「……インストール完了……」
「メルティナ?」
「どしたの?」
情報を
気になったエドガーとサクラは、顔を
「――ノー。大丈夫です。設計法は分かりましたが……しかし素材が全くありません。外装やエンジンはともかく、
「
「可能性は無くはないですが、今は無理でしょう……」
「う~ん……どうしよ」
サクラとメルティナは、二人でいろいろ考えてくれていた。
エドガー達の住むこの世界、【リバース】は、
サクラの住んでいた《現代日本》からは考えられないほど、エネルギー問題や
それは“魔道具”が
今それを考えても意味は無いかもしれないが、サクラとメルティナが理解できる
エドガーは、全く話についていけていないが、ローザが。
「――
「え?」
「イエス。その通りです、ローザ」
ローマリア
心当たりがあるのか、フッと笑い、立ち上がるとエドガーを見て言う。
「
嫌な
地下にあるもの。それは、エドガーのコレクションであり、大切な“魔道具”と――《石》だ。
「……いや、ちょっ」
「――そっかっ!魔力だ!“魔道具”!《石》!!」
「なるほど。元の世界の設計ではなく、この世界に合わせるのですね」
聞いてくれそうにない。
「そっかそっかぁ、そうだよね!この世界にない
なんだか、非常に楽しそうにするサクラ。
彼女は、元々
両親から
「――じゃあ、《石》の力を動力エネルギーに変えるとして……
「イエス。それはいいですね、魔力がキーになれば、この王都では動かせるのはワタシ達だけになります。
「
「――それならば、ワタシが行って来ましょう」
「え!?……ちょ、ちょっ!――ちょっと待って!!――メルティナぁぁぁ!!」
スタスタと歩いて行ってしまうメルティナを、エドガーは
このままでは、大切なコレクションが使われてしまう。
もう、今更とも言えるのだが。
「……うん!!ローザさん、これなら、夕方には行けますよ」
一人
どうやら、完成形が見えたらしい。
「そう。期待しているわよ……」
ローザもにこやかに返す。その様子を、フィルヴィーネだけはつまらなそうに見ていた。
まるで「こんな事に時間をかけおって……」と言いたそうに。
事実そうなのだろう。フィルヴィーネはきっと、全員を
だが、頼られない以上使うつもりもないし。
感を取り戻すまでは、フィルヴィーネは表立って行動するつもりもない。
手足に付けられた
「――くだらぬな、まったく……」と。
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