137話【命と向き合う】
◇命と向き合う◇
取り
「――あぁっと……メルティナっ!」
「――イエス。
フィルヴィーネを“召喚”した
それをそのままにしては置けない為、誰かがやらなければならないのだが。
どう考えても、メルティナしかいなかった。
「ごめん、ありがとう!!頼んだよっ」
エドガーは振り返ることなく、扉を出ていく。
そんな事を思うメルティナは、【クリエイションユニット】を
サクラも「先、行ってる~」と、残らず行ってくれた。
メルティナが
「――マスター達は行きましたね。では、【クリエイションユニット】
4機の【クリエイションユニット】は、連結して大きなリングとなった。
その大きさは、すっぽりと人間がくぐれる大きさだ。
分かりやすく言えば、機械で出来たフラフープに近い。
「――マスター……少し、ワタシは悪い子です……」
そう言って、メルティナはフィルヴィーネを“召喚”した魔法陣を記録し始めた。
それはまるで、敵の弱点を探る為に密かに行われているようだった。
エドガーが想定してはいないであろう、
◇
地下から長めの階段を上り切り、大浴場の
なんだかとても長く地下にいた気分だが、しめったれた事を言っている
「取り
大浴場の
「――
「うわっ――ホントに冷たっ!エド君、これやばいんじゃない!?」
実際、フィルヴィーネもだった。
エドガーの背に感じるはずの熱が、全く感じられていない。
「――急ぐよっ!……そうだサクラ!ローザを呼んできてっ」
「――?……あ、オッケー任せて!
熱と言えばローザだ。サクラも
そのローザと【心通話】で連絡を取ろうとしたサクラだったが、
「――ああもうっ!食堂?それとも二階の部屋?」
もしかしたら、サクラも感じているかもしれない。
本当は今の状況で、あまりローザに手伝ってもらう事を
だが、そうも言っていられなくなってしまった。
(ローザにとっては、この人は“魔族”……敵なんだもんな。でも……僕は)
肩越しに見る青白い顔のフィルヴィーネを、死なせたくない。
ローザとだって絶対に上手くいくと、いかせてみせると、エドガーは考えていた。
大浴場から
サクラは曲がってロビーの方に行った、二階に行くにも食堂に行くにも、ロビーを通らなければならない。
「102号室ね!」と、サクラはダッシュで
エドガーとサクヤはそのまま直進して、102号室へ。
「サクヤ!その
フィルヴィーネにかけられた、エドガー愛用の深緑色のロングコート。
「ま、ます、たーき?」
「
「しょ、
「あ、開きました!
「よし、ありがとう。フィルヴィーネさんはベッドに……その
「――はいっ」
ベッドに寝かせたフィルヴィーネは、息を
隣に寝かせた
「くそ……!とにかく
自分にツッコミを入れて、エドガーは急いで部屋
サクヤも、自分の上着を脱いで
チラチラとエドガーを確認していることもあり、
「――僕も炎を
エドガーの能力である【
エドガーが使う剣、【
そして火球は出せても、人肌を温める
結局何も出来ないのかと
「――そう簡単に使われたら、私の価値が下がってしまうでしょう?」
「エド君!お待たせ!」
「ローザ!お願いだっ……この人を――って、ローザ?」
サクラに連れられてローザがやって来たが、エドガーをスルーしてフィルヴィーネを見た。
「……“魔族”、それも“魔王”ね……」
フィルヴィーネの
どうやら、ここに来る前にサクラに色々聞いたみたいだ。
「こっちは大丈夫。まだ
「……ローザ?」
肩を落とし、深~いため息。
エドガーは
「……キミからの【心通話】は届いていたし……色々サクラに聞いたから、まぁ理解した。でもまさか――その“
ローザは、エドガーと目を合わせることなく
「……あ、“悪魔”?」
サクラの
「“悪魔”だとっ!?そ、それは本当なのですか!ローザ!!」
「……え――で、でで
エドガーはもちろん
ローザ以外は地下に居た為、国の王女が
「あたしと同じ
「そりゃ
「ひ、久しいわねエドガー、元気していた?」
ローマリアは気まずそうに
そのエドガーはキョロキョロとしている。
おそらく護衛の【
「お、お久しぶりです……けど、今は……」
「ええ、分かっているわ。私もローザについてきただけだから、気にしなくていいから」
「そ、そうですか……助かります、あ!でも、落ち着いたら話聞きますからねっ!?」
ローマリアはコクリと
「……そんなに見なくても、分かっているわよ」
ローザはため息を
「……魔力がほぼ空ね……“悪魔”は魔力を
「どうすれば!?」
「落ち着きなさいってば……エドガー。本当に助けるのね?……この“悪魔”は、キミが戦ったバフォメットと同じような存在よ。敵の可能性だってある。それでも――助けると言うのね?」
ベッドを
それだけ
ローマリアだけはローザを心配そうに見ているが、それは誰も気づかない。
そして、エドガーの返答は。
「――助ける……敵ではない可能性だってあるなら、
真剣に、
エドガーは命を
彼女もまた、エドガーの魔力で
「……はぁ……分かったわ。キミの選択を
小さくウインクをして、ローザはエドガーの答えを受け入れる。
サクヤとサクラも、無言だがお
「ありがとう……!でも、魔力をって……」
「そっかエド君!魔力の
「ああ!そうかっ!」
サクラは気付いた。ローザの言いたいことが。
以前ローザにしてもらった、エドガーの魔力を回復させた方法。
自分の魔力を分け与える、
それをしろと言っているのだろうが「ローザはやらないの?」とは、エドガーは思わなかった。なるべく頼らないようにと、
「“悪魔”の
優しく、“悪魔”の
「後は……手?」
手を
この工程を知っているサクラが、サポートするように声を掛ける。
「エド君。フィルヴィーネさんの紋章は、右手でしょ?ならいっそのこと、その人形――じゃなくて、“悪魔”を手の甲に乗せたら?」
「そうか、そうだね……!」
そう言いながら、サクヤが
「――ど、どうぞ!
「ありがとう。サクヤ」
ベッドに置かれたエドガーの右手の甲に、サクヤはゆっくりと小人を乗せる。
肌の
(――!……私の紋章が変わって――いえ、違うわね……この“魔王”のものが、同じ位置に――か……)
赤と紫の紋章は、ローザの炎を
ローザの中では、この新しくなったエドガーの右手の紋章は、一体どう見えているのだろうか。
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