136話【魔王降臨(おまけ付き)】
◇魔王
全員が配置について、やっと【異世界召喚】の最終準備が
つい
それはそれで、フィルヴィーネに自分の世界での準備をさせるものだとすれば、ご
そう思う事にしよう。
「……
一人、絶対に
魔法陣のど真ん中で、
その視線はサクラに向けられ、先程言われた言葉を心の中で反復させる。
『あんたは深く考えたらダメだって……いいとこが消えちゃから。【忍者】、あんたはエド君の影なんでしょ?なら、エド君の考えを理解できなくてもいいから。ただ、その
確かにサクヤは忍び――【忍者】だ。
それがサクヤが教えられた、忍びとしての
(本当に、サクラは似ている……同じ事を言いおって。不覚にも笑顔になる所だったぞ……)
サクヤは嬉しかった。
言われた事は、素直に心に効いた。
その言葉が、かつて大切にしていた人物からの言葉と
左眼の【魔眼】にサクラを映して、サクヤは思い出す。その言葉を。
『……お眼が綺麗です。きっとその眼は、人を支える事の出来るお力なのでしょうね……
(――
サクヤは、
一歩後ろで、
忍び失格かもしれないが、それでもサクヤは初めて“恋”をしたのだ。エドガーと言う、自分を必要としてくれる少年に。
家族に
大切にされたい。そう、思い始めていたのだ。
◇
エドガーは魔法陣の正面に立つ。
メルティナは後方。サクヤの後ろに立っていた。
回復したばかりのサクラも、サポートをすると言ってエドガーの本に目を通していた。
“召喚”に使用される【ルーンス文字】だけは、まだ読めないが。
「それじゃあ、本当に始めるけど……」
「承知です」
「イエス」
「オッケー」
エドガーは【異世界召喚】をする前に、ローザに【心通話】を送る。
<ローザ。聞こえる?……これから【異世界召喚】をするよ。一応、報告をと思って……>
返事は無い。やはり、先程メルティナとの衝突(エドガーにはそう見えた)が
エドガーは目を
<もしかしたら、ローザは
ローザに初めてあった時に聞いていた、“魔人”や“天使”の情報。
忘れたわけではない。ローザは、“悪魔”や“魔人”は
フィルヴィーネは“魔王”、簡単に言えば、“魔人”や“悪魔”、“魔族”の親玉になるはずだ。
でもエドガーには、フィルヴィーネが
だから、“召喚”を
<ローザ。僕は、“魔王”を“召喚”するよ……後で、沢山怒られるから……だから>
気持ちを
しかし、それは言えなかった。ローザにだって、きっと言いたい事が山ほどあるはずだから。
だから、言わない。
ただ、この【心通話】が届いている事を願って。
「……よし。始めようか」
エドガーは本を開く。
先程の時間に書き出した、フィルヴィーネをイメージした
それを読むために。
「……な、なんだかあたしまで緊張してきた」
サクラは立ち上がって、事前に言われたはみ出し線まで下がる。
サクヤは
メルティナは一番落ち着いているように見える。
そしてエドガーは、全員を見渡してから、
「……レオマリスの血、【召喚師」の血が
伸ばされた右手には、赤の紋章が
紋章から
【
「我が名は、エドガー・レオマリス……契約を
エドガーが、赤い紋章の浮かぶ右手を
「うわっ!……あ、
「――大丈夫!そのままだっ!!」
びっくりして動き出しそうになるサクヤに、少し大きめの声で
魔力はサクヤの
「う、動いて……」
【
元から
そして合わせるように、サクヤの右手にくっついたままになっていた【
それを確認して、エドガーは。
「サクヤ!お疲れ……ゆっくり、ゆっくりとこっちに来てっ」
言葉は
その間も、魔力はドンドン
きっとそのまま、フィルヴィーネの心臓になるのだろう。
「……すっご……紫の光が部屋中に広がって……キレ―……」
サクラは、
部屋中を
とても“魔王”様を呼び出しているとは思えないほど綺麗だった。
「――ぐっ……」
エドガーは、吸い上げられ続けられる魔力が底をつかせようとしていた。
「
「エド君……」
「マスター!」
三人は一斉に
その右手には、赤い紋章と――
「……契約の紋章が、ローザのと同じ場所に……」
赤い丸みを
紫色の紋章は、紫の三日月が二つ、上下に描かれていた。
それは
「マスター、フィルヴィーネの形成が終わります」
メルティナからの報告に、エドガーは気合を入れる。
ここで“
「ああ。もう少しだ……」
木箱の中身はとうに空になっていた。
【
今回の【異世界召喚】は、使われた“魔道具”こそ少ないものの、その魔力の消費量は今までの四人と
【
他の“魔道具”もそうだ。
【
「形成率95%……96・97・98・99……100%。完了です」
メルティナの終了宣言に、エドガーも緊張を
紫の魔力光も、
――そして、魔法陣の上には。
「あ、あれが……フィルヴィーネさんかな?」
サクラが様子を
「……倒れてない?」
「倒れています」
「……死んでいるかもしれぬぞ」
「こらこら、大丈夫……の、はず」
魔法陣の上では、フィルヴィーネらしき人物が、
その姿は
「――は、裸じゃん……!」
サクラは
「ああ、ダメダメ!全然
サクラの
エドガーもメルティナも、急いで向かう。
サクヤは、
「フィルヴィーネさん……!まさか、失敗!?」
手応えはあった。初めて、自分で狙った
貴重な“魔道具”の
「――ノー。息はあります……眠っているだけかと」
「そ、そっか……よかった」
エドガーは、脱いだコートをフィルヴィーネ(仮)にかける。
一応名乗っていないので、(仮)を付ける。本人だろうけど。
「……エド君……あたし、変なもの見えるんだけど……」
サクラの言葉に、全員でサクラの
そこは、胸。大きな胸。ローザといい勝負をしそうな、
「
泣きそうになりがら、指をさす。
「た、
「そう、
「……これは、生体反応が……二つあります!」
もぞもぞとフィルヴィーネ(仮)の胸の
どう見ても
エドガーは照れながらも、恐る恐るその小さな
「……
生きている。この小さな
そう分かった瞬間、
「――ほっ。よかった、生きてる……」
息もしている。
「それさ――虫……って落ちは無いよね?」
「違う違うっ!……と言っても、何かは分からないけど……人の形をした、何か?」
サクラの
こうして、異世界の“魔王”は“召喚”された。
ただ、本人の希望の登場は出来なかったであろうと、ここにいる全員が感じていた。
《
本人は
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