114話【決闘~三回戦~】
◇決闘~三回戦~◇
それは昨日からそうだった。
アルベールとサクラが戦った一回戦と二回戦中は、
エミリアの為に、何が何でも勝たなければならない事実と。
【召喚師】として、“不遇”と
その二つの
エドガー・レオマリスに――試合の
それは昨日の時点で、
ローザに言われて、その可能性はかなり高い。いや、確実だろうと思った。
それに加えて、
三人の|審査員はご老公だ。つまり老人。
その
つまり、手が回されている可能性が非常に高かった。
「……そろそろだ」
エドガーは、
向こう側でも、次の対戦相手であろう男性が、
「何してるんだろ……これから戦うって言うのに」
◇
シュダイハ側の三番手の選手。
フェルドス・コグモフ。
古くからシュダイハ家に
フェルドスは今、不安に
それも、同じメンバーのカリーナ・オベルシアが、あんな負け方をしたからだ。
手足に開いた
しかも、それを見ていた
自分も負ければ、あんな風に簡単に切り捨てられるのではと、
「……これはダメ、あれは……ダメだ……ダ、ダメだ……」
もし、対戦相手であるエドガー・レオマリスに負けた時、シュダイハ家をクビになるのではと、家にある
(僕も……カリーナみたいに……切られるのか)
横目でちらりとセイドリックを見るが、相変わらずメイド達に
セイドリックが小声で言った「使い物にならん」という言葉は、カリーナが負けた
「――おいっ!フェルドス」
「はひゃいっ!な、なんでしょう!セイドリック様……」
ちらりと様子を見た
金髪の前髪を、息でふぁさふぁさとさせて。
「なんだ……気持ちの悪い……それより、お前は
「……え」
意外な言葉だった。
てっきり、負けた後の事を
「なんだ……意外そうな顔をして……
「――!い、いえ……ありがたきお言葉……
顔を
(――ま、まさかセイドリック坊ちゃんが……僕をここまで買ってくれているなんて!)
少し
「――ああ。頑張れ……クックック……」
(まあ、フェルドスが負ける事は無いのだがな……――
セイドリックは、メイドに持たせている
よく見れば、箱を持っているメイドは
いそいそと待機場所に戻るフェルドス。
しかし、セイドリックの
「ああ。エミリア……僕の女神……待っていてくれ、僕は
エミリアを舐める様に
(……そうだ。初めからこうすればよかったのさ……そう、決闘なんて、最初から関係ないんだ)
メイドに持たせた
◇
特別に用意させた、騎士学校の屋上にある
「面白かったわねぇローマリア。あの炎を
「え、ええ……そうですね……エリス姉上……」
一回戦も二回戦も、
テーブルの中心に置かれた特大の
今、スフィアには【召喚師】エドガーが
「――
ぼそりと
今のセリフを、第三王女ローマリアが聞き逃すはずは無かった。
「あ、姉上……エドガーをご
「……何の事……?」
「何のって……今、
ローマリアは反対側に座る姉に
「ローマリア殿下、ご
ローマリアは――ぐっと
ヴェインの強さは
ローマリアがこれ以上
肉親であろうが、セルエリスは
自分の非になる事は、ことごとく
それが、
セルエリス・シュナ・リフベインと言う女だ。
「……」
「ほらローマリア……試合が始まるわよ……?」
「……はい、エリス姉上……」
そうして、屋上に
◇
ソイド・ロロイアは、
しかし今は、その
先程、選手の紹介直前に騎士達がやって来て、
何も聞いておらず、
ロヴァルト家側の選手、【召喚師】エドガー・レオマリスもそれを
しかし、エドガーに
ソイドも、【召喚師】を知らないわけじゃないが。
仕事として
なのに。今、ソイドはそのことも忘れて試合を見ていた。
その理由は。
【召喚師】エドガー・レオマリスが――強すぎたからだ。
開始早々、先制しようとしたフェルドスの剣は、エドガーの赤い剣に真っ二つにされた。
追撃を
それを
古き
◇
「……
エドガーの試合を見ながら、ローザはイラつくのを
「ロ、ローザ……落ち着いて――って、熱っつ!?」
エミリアはローザの
その熱量に、自分の手が
「ローザってば!!」
「――っ!?――な、何やってるのよエミリア!」
ジュウゥ――と音を鳴らすエミリアの手に、ローザは気付いて手を|払《》う。
「……何って……ローザが怒ってるから……止めようと」
「バカなの!?
五試合目の
四人目がいないロヴァルト側は、エミリアを二戦出すと言う作戦を用意していた。
それこそ、先程のセイドリックの様に《王家》に声を上げて。
声を
「大事……だけどさ……ローザが怒ってたらダメだよ。ローザには、
手をひらひらとさせながらエミリアは笑う。
自分の未来が
「……
そのエミリアの笑顔に、ローザはハッとさせられる。
この手の熱さは――自分の怒りだけではない事を。
右手の《石》から
「……そうね。彼は必死に
その怒りを、胸に
◇
観客席では、ブーイングの嵐だった。
【召喚師】への
フェルドスの無力さもまた、ブーイングを引き起こす
「……み、耳が……」
四人で
「……ひっどいなぁ」
ラルンは、席にふんぞり返りながら
すると、隣の席にいた中年の男性観客が。
「――だろう!全く
「……あ、そっすね」
(……そうじゃねーっての)
さらに隣や後ろの観客たちも、皆
「……っ!」
「リエ……」
「リエちゃん……」
身内であるリエレーネは、レイラとピリカに肩を叩かれながら、暗い顔を上げて
「ありがとう……レイラ、ピリカにラルンも……」
「ほら、エドガー先輩を応援しましょう!このまま行けば、判定勝ちですよ!」
「うん。そうだね!」
ピリカは、現在
残り時間は
しかしそれは、定められた敗北。
エドガーの反則負けが
◇
ガギン――と音を鳴らせて、剣が
「くぅぅ!……ひぃぐっ!」
フェルドスは
その
エドガーは何も言わず、無心でフェルドスの剣をへし
八度もフェルドスの心を
「……こ……」
「――
エドガーはちらりと、
しかし、特別
「何を言うか……
「……そ、そんなぁ。く、くそぉぉ!!」
へっぴり腰のまま立ち上がって、自陣の方にある予備の剣を取る。
「……」
片手剣でもまともに
ただ単に、エドガーの剣である【赤い剣】の威力が高すぎるだけだ。
「……もう終わらせましょう……場外に出てください、それなら……きっと」
エドガーの言葉に、もう完全に心の
「そ、そうか……場外――」
しかし、特別
「
「――く、くそう……くっそぉぉぉ!!」
エドガーが
心の
「……なら……決着をつける……戦闘不能にして、終わらせる!」
そのエドガーの言葉は、フェルドスにカリーナ・オベルシアの敗北シーンを思い起こさせた。
赤い剣で
「――い、い、嫌だ……嫌だぁぁぁぁぁ!!」
シュダイハ家への
フェルドスに残されたのは、生きたいと言う生への
「はぁっ!」
エドガーは剣を
フェルドスは
しかし、それでもフェルドスの恐怖心を
「あがっ!――がぁぁぁぁ!背中……背中ぁぁぁぁ!セ、セイドリック様!どうか、どうかお
フェルドスは、いとも簡単に場外に飛び出した。
会場はざわつくが、特別
まるで見てもいないかのように、無言を
(このまま行けば……あと
それは、火球を発射する動作だった。
フェイクではあるが、それでセイドリックがフェルドスを思いやってくれればと、エドガーは言葉を
「さあ、負けを認めてください!セイドリック・シュダイハ……これが放たれれば、
セイドリックは、すり
「――ちっ……仕方が無い。フェルドス、お前はもういい……負けでも勝ちでも……こうするつもりだったのだからな」
「セ、セイドリック様?な、なにを……」
セイドリックは、再び
乱暴に
――【
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