115話【―バフォメット―】
◇―バフォメット―◇
セイドリック・シュダイハの手の上で、
【
その
「――な……何でその《石》を
天に
「なんだぁ……【召喚師】……貴様も知っているのか、この【
セイドリックは
恐らく、《石》を用意した時点で
「セイドリック様、それは……その《石》は……一体」
セイドリックの異常な
しかし、セイドリックはそんなフェルドス・コグモフを
「何をしているんだフェルドス……
「……は……はぃ……セイドリック様……」
セイドリックのその異様な
しかし、その行動を待っていたと言わんばかりに、セイドリックはニヤリと口元を
それに気づき
「――エドガー!!《石》を
「――分かってる!!」
当然、エドガーも気付いていた。
セイドリックがフェルドスを
しかし
だが、それに
「――負けなら負けにすればいいっ!そんなことを言ってたら、皆死にますよ!!」
切迫した
エドガーも、こんな老人に付き合ってはいられないと、セイドリックに声を
「セイドリック!その《石》を
「キヒヒっ!遅いんだよっ!――【召喚師】ぃぃぃぃっ!!」
◇
「――行くわよっ!サクヤ、サクラ!!」
「うむ。分かっている……のだが、
「わ、分かったけど……何なのアレ……
《石》の
サクヤは左眼を、サクラは
「くっ……
二人の異世界人は、エドガーの援護に行こうとするも、苦しさに
「……き、気持ち悪……」
「ぬ、うぅぅ」
《石》の
一般人には何もなくても、《石》を持つ者には、相当の苦しみが与えられていた。
「――ちっ……私はともかく……初めて
ローザは、最悪一人ででもと思っていたが。
「ローザ!!」
「――エミリア!?」
“悪魔”に、【
「大丈夫!私も行くっ!もう決闘とか言ってられる状態じゃないよ!」
「
「へ、平気じゃないけど……私は【聖騎士】(仮)だもの……」
足は
しかし、エミリアの
そして今まさに、セイドリックがフェルドスを
動き出したのは、エドガーと同時。
エミリアは、自分の
当然、会場は
エドガーが敗北を
それも、槍を構えて。
見ている側からすれば、セイドリックを
しかし、不穏な空気を感じ取るものもいた。
「……ねぇ、あれ、やばくない?」
「う、うん……どうしたんだろう、エミリア先輩」
「……絶対におかしいわ!リエっ!」
「そうだね……でも、この歓声だと、私達の声なんて届かないよっ」
騎士学生の後輩達はこの異常に気付くも、自分達の無力に
そして
「――はあぁぁぁぁっ!!」
「――エミリア!……ったくもう、
飛び出したエミリアを追うように、ローザもその手に剣を
◇
「――セイドリック!!」
エドガーが場外から出て、【
だがしかし、エドガーの赤い剣を
その持ち主は、シュダイハ家側のもう一人の参加者。
「なっ……あなたはっ!!」
この
しかし、
「がははっ!いいねぇ!試合なんてめんどくせぇ!このままやっちまうか!!」
【光のカーテン】を
「――くっ……」
そして――フェルドスは。
「あ、ああ……セ、セイドリックさ、ま……」
フェルドスの背、エドガーが斬った背中の傷口には、【
「……しまっ――」
引き金になったのは何だっただろうか。
おそらく、シュダイハ陣営にいたメイド達の悲鳴だっただろう。
フェルドスの背中に突き刺さる
「――き、きゃあああああああああああっ!!」
ざわざわと、エミリアの方に注目がちだった
「な、なんだ……?」
「シュダイハ陣営がなんかやったのか?」
「もしかして……【召喚師】?」
「【召喚師】が、対戦相手を殺したのか?」
《石》を背中に突き立て、フェルドスは倒れている。
「――エドっ!!」
「――エドガー!」
「エミリア……ローザも……ごめん、間に合わなかった……」
倒れるフェルドスを見て、エドガー達は
あの時戦った、“悪魔”――グレムリンとの戦いを。
そして残念なことに。
その
「ぐ……ぐぅぅ……ぐぅぅぅぅっ!」
フェルドスは苦しそうに
しかし、それはエドガーが斬った傷の痛みではないと、
「――キヒヒ。さあ、フェルドス立てぇ!【召喚師】を
セイドリックの
それと同じく、特別
◇
「ちょ……っと……
「き、君は……一体何なんだこれはっ!何が試合だっ、俺はこんな事――」
「いいから……早く
苦しそうに壁に寄りかかりながら、それでも何とか助けになりたいと、ソイドの持つ
「……な、何をだ……」
「――死にたくなければ、今すぐ逃げろって……」
「いや……しかし――」
「――早くしてっっ!!」
サクラの
会場に、ソイド・ロロイアの声が
選手紹介の時よりも大きく、
『み、皆様ぁぁぁ!逃げてください!!
ソイドの叫びの後、
しかし、その
「――ぎゃああああああああああぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあっ!!」
フェルドスの背中に刺さった【
そして――
◇
特別
「――何のつもりなのかしらね。王家の
「姉上……【聖騎士】の
ローマリアの
フェルドスの
「……な……なんなの……」
筋肉と言う筋肉が盛り上がり、人間の大きさなど優に
全身からは黒い体毛がわさわさと生い
「――あ、姉上……き、騎士を……【聖騎士】……を……」
ローマリアは、窓を
セルエリスは、
「……ちっ、この国に
「――はい。こちらに……」
「あ、姉上……?姉上……姉上ぇぇぇ!!」
セルエリスは、ローマリアを置いていった。
妹など初めからいないも
残され、へたり込むローマリアに、
「――ローマリア様!……いた!居ましたよ!副団長!!」
「ナイスだノエル!急いで
「ですけど、いいんですか!?ロヴァルト兄妹達をほっといて」
「仕方ない。私達は国を王女を優先する……ロザリーム殿達に任せるしかないだろう」
セルエリスが
去り
妹を頼むと、しかし、戦いへの参加は認めないと。
◇
「これはまた……
「……本当だね……」
ローザの記憶にあるもの。
それは、“悪魔”バフォメットだ。
男女
確認するまでもなく、胸元は大きく
黒い体毛で
「ロ、ロロ、ローザ……どうしよう……怖い、怖い……けど!」
エミリアは
「エミリア……下がって――いえ、協力しなさい。
「うん。頼むよエミリア!一緒に戦ってくれる?」
「――!!」
ローザとエドガーからの、
エミリアの恐怖心は一気に
「ふ、ふふ……初めから言ってよ!!頼りにしてるってっ!」
完全に“悪魔”への恐怖がなくなった訳ではないが、勇気をくれる槍と、頼りにされていると言う
「――二人共!来るよっ……完全に僕達
静かにフェルドスを――いや、バフォメットの
エドガーは、本当はエミリアには戦ってほしくなかった。
けれど、サクヤとサクラが《石》の
広いとはいえ、ここは街中。ローザは全力で戦えないのだ。
その為に、二人は【心通話】で
エミリアは
しかし、そのエミリアに協力してもらわなければ、乗り切れないと判断した。
だからエドガーは、エミリアに声を掛けた。
「頼む」と――「一緒に戦ってくれ」――と。
◇
大きな身体をエドガーに向けて、動き出す。
黒い翼はバサバサと音を鳴らすだけで、空を飛ぶ
エドガーは一人で、ローザはエミリアを
それだけは
「はぁっ!!」
切っ先から生まれた炎の魔力が、バフォメットの腕に
「――効いてないっ!?……いや、
バフォメットの右腕による反撃をジャンプで回避する。
街中な以上、全力の火球は使えない。
それはローザもエドガーも同じ。
それに、前回の失敗もある。
魔力の使い
「ローザ!エミ――っ!?」
ローザは、
そしてエミリアは。
「キヒヒ……エミリアぁ……僕の女神ぃ」
「セイドリック!こんな事もうやめなさいっ!!こんなことをしても、私は
「――黙れ!黙れ黙れ黙れぇぇ!!」
「――っ!」
セイドリックは、【聖騎士】時代からの
エミリアはそれをガードして
「ギャハハハハァァ!エミリアァァァァァ!!」
「――なっ!!」
セイドリックは、
《石》に長時間
「――
ナルザをぶっ飛ばして、ローザがエミリアとセイドリックの間に入り込むように斬り込む。
「キヒ……キヒヒヒ……エミリアァァァァァァァ!!」
「――ちっ……
引退したとはいえ、【元・聖騎士】。
セイドリックの槍術は見事だった。
それは、《石》に
もしくは、エミリアに対するその
「ローザ……それって、この人はもう……で、でも、あの《石》は“悪魔”にっ!」
「時間のせいでしょう。この男は、きっと前から【
セイドリックの心はもう死んでいる。助からないのだ――もう。
「キヒャァァァアァ!!エミリアァァァァ!」
セイドリックだったものは、エミリアに再
「――は、早っ……いっ!!」
「――くっ!」
エミリアに迫るセイドリックを
しかし、意外なほどに
あれ程に強いローザが苦戦している。
魔力だって回復している筈だ。
しかし、こんなにも動きが
「コイツ……!だいぶ
(魔力が
「ギャハハハハッ!!」
セイドリックは【
「――なっ!!」
槍はローザの肩をかすめて、エミリアに迫っていく。
「エミリアっ!逃げ――」
高速で迫る槍は、完全にエミリアを
エミリアは何とか槍で
「くっ――このっ!!――ぐぅぅっ――うぐぅっ!?」
が、
「エミリア!」
「――エミリアぁ!!」
ローザの
しかしセイドリックは空中で有り得ない
腹部の痛みによろめく、エミリアの真後ろに。
「キヒヒ……キヒヒ……エミリア。エミリアァァァァァァァァ!!」
エミリアが気付いた時には、セイドリックは自分にくっ付いていた。
そして、
「――っ――ぁ……」
――ぐしゃっ――ぐじゅっ――
ぼたぼたと、大理石の
それは、エミリアの血だった。
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