105話【運命】
◇運命◇
【聖騎士】ノエルディア・ハルオエンデが、エドガーに渡した一枚の紙切れ。
ノエルディアは帰り
この
ただそれは、ローマリアの
一体何が書かれているのか。そんな事を考えながら、エドガーはローザ達を集めた。
場所は、おなじみになって来た二階の休憩スペース。
ローザやサクヤ、サクラが“召喚”された時に説明を行った場所だ。
「
「ロ、ローザさん……どしたの?なんか、目に見えて疲れてませんか?」
ローザの隣に座るサクラが、気にして声を掛ける。
「……」
ローザの
それだけで
「ノ、ノー。
エドガーも
ローザはきっと、エドガーとサクラが見ていないところでメルティナをフォローしてくれていたんだ、と。
気になるのはメルティナが何をすれば、ローザがそこまで疲れるのかだが、それは今聞く時ではないだろう。
「……じゃあ、いいかな?」
エドガーは話を進めようと、声を掛ける。
と、サクラが
「【忍者】はいいの?いないけど」
「うん、サクヤには僕が【心通話】で同時に
ハブるつもりなど
「……だけど。サクヤを戦いに出すつもりも――無いよ……」
それはつまり、二敗を覚悟するということになる。
サクヤは
サクラは出たくない。
言い方は悪いが、サクラにだって
エドガーも、初めから
「……」
それが分かってか、サクラが
「大丈夫だよ……何とかする。僕とアルベール、エミリアが勝てばいいんだから……」
異世界人の参入なしでこの戦いを乗り切る。
これが今できる、
「勝てるの……?キミたちだけで」
ローザがエドガーに問う。
「……正直、相手のメンバーも分からないし、三人全部が勝てるかなんて分からない。けど、やるしかない……エミリアの未来のために」
エドガーは
かくなる上は、エミリアを連れてでも逃げ出そうと。しかし、それは最悪の
本気で考えてはいけない物であり、|もっと最善な手があるのかもしれない。
しかし、タイムリミットは強制的にやって来てしまった。
「エド君……」
エドガーはエミリアの幼馴染だ。
ただ、悲しい事に――それだけだ。
結婚がどうとか、
相手がセイドリック・シュダイハだという事だった。
手当たり
「……
「キミの言いたいことは分かったわ……それで?王女から来た手紙、
ローザは特に反対することなく、この会議を進める。
「あ、うん。そう……これだよ」
紙切れに書いた
「
サクラも、エドガーの
「……だね」
半分に
ローマリアの手書きとみられる文字が書かれていた。
『エドガー・レオマリス殿。
「――えっ!?」
「……」
「やっぱり……僕か……」
ノエルディアは言っていた。
セルエリス様は、【召喚師】が
「【召喚師】であるエドガーが決闘に出るのを知って、嫌がらせでもしてきたという事?」
「――何それっ!
ローザの
メルティナは
「つ、続けるよ……」
エドガーは冷や汗を背に
『私は……“不遇”職業なんてものがあることを知らなかった……【召喚師】が、これまでどれほどの年月、
ここでエドガーは、手紙を読むのを止めてしまう。
「……エド君」
「……」
ローザもサクラも、【心通話】で聞いているであろうサクヤも、エドガーが読めなくなった理由が分かる。
――怖いのだ。エドガーは、王女に
“不遇”に
心底怖いのだ。
「――貸しなさい、エドガー」
ローザが、エドガーの
読まなければ、先に進めない。
『……【召喚師】が受けてきた事を、先代の王である祖父が、若い頃に決めた事だと知り……エドガーの前の【召喚師】、お父上様もそれを受けていたのだとも知った。理由は
「――っ!!」
「ちょっと。話は最後まで聞きなさい……サクラ。<貴方もよっ!!>」
【心通話】でサクヤにも言っておく。
どうやら、
「……でも、もう……僕は……」
――苦しい。
――聞きたくない。
エドガーの
今までもきっと、そうだったのだ。
自分がきっかけで、エミリアに迷惑をかける。
助けたいと思っていても、自分が足を引っ張り、更にはその足に
過去、友達になっても、エドガーが【召喚師】の息子だと知った時、
それを乗り
だが友達だと思っていた人は、裏ではエドガーを
何度も、エドガーはそれを
エミリアは、【召喚師】が
「――だ・か・ら!最後まで聞きなさいっ」
ローザはエドガーの頭をクシャクシャっと
その優しい笑顔に、エドガーは
「……うん」
「……よし、いい子ね」
『それを取り下げることはない……――ただ、私、ローマリア・ファズ・リフベインの名において、
「以上よ……」
聞き終えたエドガーは
サクラが
すると、休憩スペースの扉が――バァァァン!!と開けられ、ローザもサクラも、
そこには。
「エドォォォォ!良かった!良かったね!……
扉を開けた
突然現れたエミリアは、ダッシュしてエドガーに
「わっ!エ、エミリア!?……どうして、今日は来れないんじゃ?」
「手紙!これ、
涙目でエドガーに見せる手紙、それは今し方ローザが持っているものと似たものだった。
「エミリアー……
グイッとエミリアの顔を押し返す。
しかし、そこにはもう一人、割って入る少女がいた。
「――
――半裸で。
「ちょっ!――えぇっ!?」
エドガーを取り囲む三人を止めようとしたサクラは。
今この
(あれ?……なんで、あたし……これ、知って……)
そして気づく。
(――ぁっ!……これって……元の世界で見た、
元の世界【日本】で見た、エドガー最初の姿。
それがこの光景だと気付く。そしてそんな事を考えていると、ローザとエミリア、サクヤが、エドガーを取り合いだす。
「どきなさいエミリア、エドガーを
「ローザこそ!!
「
エドガーは押し付けられる三人の
「――ふふっ。なんなのよ、もう……馬鹿らしいじゃん、あたしが……」
「まったく、分からないものね」――と笑うサクラは、“召喚”されてから
それが分かった
「……ふふっ。すぅぅぅぅ――ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ガシッとサクヤの頭を
「――んがっ!」
「――痛ったぁ!!」
「やるわねっ、サクラ!」
「とーぜん!だってあたしも、この異世界に
四人におしくらまんじゅうされるエドガーを尻目に、サクラは。
「――これから
と、エドガーだけでなく、ローザやサクヤ、エミリアにも
これから始まる。――異世界人サクラの、本当の異世界ライフの始まりを、
◇
開けられていた扉は閉められた。静かに、中の五人に知られない様に。
まるで
「――どうして……どうして……どう、して……」
メモリーの
――その中にいた、
「……マスター・ティーナ」
――エミリア・ロヴァルトの姿に。
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