106話【互いを思って】
◇
サクラは
意外にも一番ダメージを受けたのはローザだった。
鼻を
サクヤは転げまわって目鼻をゴシゴシ
エミリアは息を止めて
そして、
「ぷはっ!……どーよっ!あたしの勝ちぃぃ!!」
取り出したのはスプレーだけでなく、
「……サ、サクラ……エドにも効いてるから……それ」
「――え?……ああっ!」
残念な事にマスクは一つで、休憩スペースとは言え、
当然と言えば当然だった。
「ご、ごめーーーん!!」
サクラが
「こんなに嬉しい事なんだね……誰かに認めて貰えて、一つの壁を乗り越えるのってさ……」
「……そうだねっ」
サクラが一番に同意して、エドガーを見る。
どうやら、サクラも壁を
それが自分の様に嬉しいと、エドガーは
(サクラが嬉しいってだけで……なんだか僕も嬉しいな、エミリアも……エミリア?……あれ、なんでエミリアいるんだ!?)
ようやく
今度は、本来ここにはいない
「エミリア!?」
「――ふぇっ!?な、何?」
アロマを
「なんでこんなところにいるんだよっ!今はエミリアにだってやることが……!!」
「ええぇ……い、今!?今なの?」
肩を
「落ち着いてってエド……私、この手紙貰って、
「
「エド君ストーーップ!!」
サクラとサクヤに
「あ!……ご、ごめん」
クラクラする頭を
エミリアはエドガーの顔を
「私ね……自分がどうこうなるより、エドがローマリア
「……え?」
それだけ?それだけの為に、自分の人生が
「――な、なんでっ!エミリアはこんなことしてる場合じゃ!!」
エドガーは、怒りなのか何なのか分からないまま、
しかし、エミリアはキョトンとしている。周りにいるローザ達もだ。
「――なんだよっ!皆、なんでそんな……!!」
確かに
でも、周りの皆にそんな顔されたら、エドガーはどうしたらいいか分からなくなる。
「まったく……本当に
「
エミリアのツッコミを
「エミリアは……エドガーが誰かに
結局、二人は
特にエミリアは、何があってもエドガーの事はブレない。
だがエドガーの場合は少し違う。エミリアを助けたいという思いは当然ながら強い。でも、そこに
ローザや、サクヤとサクラ、メルティナの事。
メイリンやローマリア王女の事が続けざまにやってきて、
「エドガー……自分の顔を見なさい」
「……顔?」
ローザはサクラを見る。
サクラは「え?……あ、ああ。
「はいっ、エド君……どうぞ」
エドガーは――泣いていた。
「……え、あれ……?」
言葉では怒っていた。エミリアがここに居ていいわけはないと。
やるべき事があるんだと、自分に言い聞かせて。
「……なんで」
心では、嬉しかったのだ。
ローマリア王女が、会ったばかりの王女が、王家の中で
自分を
そして何より、エミリアがそれを喜んでくれたことが。
「僕は……泣いて」
泣いていることを
もし
エミリアもローザ達も、エドガーが泣くほど嬉しかったのだと、
だから、キョトンとしていた。いや、キョトンと感じたのはエドガーだけで、本当は皆、
「……ほら、涙
ローザがエドガーの頭を
もう完全にお姉さんだった。
「――ありがとう……ローザ。皆も……エミリアも、ありがとう」
「うん!!」
もう、
――無くなった。
当人のエミリアが、こんなにも開き直っているのに、サポート役のエドガーが
全力を
それがエドガーの為であり、エミリアの為だと――
◇
その後。
ごたごたが一切無かったと思わせるくらいに、スムーズに終わってしまった。
「こんなものかな……何か言いたいことあるー?」
「……終わりね。後はエミリア、
「
笑い事ではないが。
この
――サクラが、戦いに出るからだ。
エドガーの
「サクラ。こんな事、本当は無責任には言えないんだけど……」
エドガーの言葉に、サクラは笑顔で。
「――大丈夫。もう変に考えるのは止めたから……あたしは、
二ッと笑って、エドガーに
エミリア、アルベール、エドガー、サクラだ。
サクヤには、
痛手だが、無理をさせるつもりもない。それはエミリアが申し出てくれたことでもあり、エドガーは
サクヤの肩の
どうやら毒も完全に
本人は大変
「よしっと……じゃあ、私は帰るよ。怒られてくる、えへへ……」
だから、笑い事ではない。
「エミリア……」
「ん?なぁに?」
小首を
「――あ、明日……頑張るから。その……えっと……が、頑張ろう!」
「……あはは、なにそれ~……うん。頑張ろうねっ」
◇
エミリアは【福音のマリス】に、【
帰り、
しかしふと、誰かの
「――誰っ……!!」
(もしかして……!シュダイハ家の差し金……!?)
エミリアは
暗がりの中、カツン――カツン――と金属音を鳴らし、現れたのは。
「あれ?……
緑の髪に、銀色の
見た目や性格などの
「イエス……
異世界人メルティナ・アヴルスベイブ。彼女がエミリアの前に立つ。
自身のメモリーとシステムが、絶対に正しいと――信じて。
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