76話【ルーリアと言う女性】
◇ルーリアと言う女性◇
「――動くな」
音もなく床に降り立ち、
ルーリアの首元には
ゴクリと
「……やっと来てくれたのね、
「――
サクヤは身バレ防止のために顔全体を赤いマフラーで
「……だ、だって……」
「だってではない。それに
ルーリアは小さく
「よし……その前に、体勢を
自らの失敗に気付いたサクヤが、苦しそうに言う。
「――へ?」
サクヤは無理に背伸びをして、ルーリアを
理由は
その
そんな女性の首元に刃物を当てていたのだ、一歩間違えば本当に斬っていたかもしれない。
「わ、分かったわ……
「……」
ルーリアは両手を上げて
小さな
「ふはぁぁぁ……苦しっ。すまぬな、
「え、ええ!?女の子!?あなたは本当に
かわいいものを
「――おいっ!」
サクヤはルーリアの手を
「きゃっ」
ルーリアはそれに
「げっほ!……おいこらっ、
ルーリアのあまりの敵対心のなさに、サクヤはすっかり
サクラが【心通話】を切ったままだったからだ。
「あ、ごめんなさい。つい」
「ついとはなんだ!ついとはっ!」
ルーリアも、
「……ま、まぁいい。で、そなたは何者なのだ?ここにいていいのか?」
サクヤは腰に手を当てて質問する。
意外にも、ルーリアは素直に答えてくれた。
「私はルーリア・シュダイハ。この家の長女で子爵の娘。で、この屋根裏は私の部屋でもあるから大丈夫よ……次は?」
(よくしゃべる……だが丁度いい。利用させて貰うとしようか)
心の中でそう判断し、サクヤは質問を続ける。
「すだ……しゆだ……すだいはとはこの家の家名のはずだな。その娘が、
シュダイハが言えないサクヤ。
「シュダイハね?この服は……そうね、シュダイハ家に女は一切いらないからよ。私は娘で長女だけど、貴族としての
ルーリアは短めのメイド服のスカート
「それで娘をめいどとして働かせているのか……ま、まさか!正門でしていたようなことも……?」
サクヤは、正門で見たセイドリックに
「ああ……あれ見たの……
「まぁ、いい
「弟も、昔はあんなんじゃなかったんだけどね」
そう言って、ルーリアはセイドリックの事を話してくれた。
サクヤはまだ聞いてはいないのだが。
ルーリアによると、弟セイドリックは、【元・聖騎士】であり、ケガで引退はしたが実力のある騎士だったらしい。
おかしくなった(女遊びが
それまでは細身で長身、
しかし、【聖騎士】を引退した直後から
(確かに、見た目は
髪は伸びっぱなしで、腹も何段かと言うほど出ていた。
隣にいた父親も似たような体系だったので、サクヤは似た者親子だと思っていたが、それは違っていたらしい。
更に、セイドリックは何人かの女性を囲っているとの
残念ながらそれも本当らしい。
「弟には好きな女性がいたの……でも。その女性は、弟が【聖騎士】を
「簡単に
セイドリックはそれから
「
「エミリア……?それって、弟が結婚するっていう伯爵家の娘さんよね?」
ボソッと言ったつもりが、ルーリアは
ルーリアは身を乗り出してサクヤに
「……あ、ああ、そうだが。何か知っているのか?」
「う~ん。
「……そ、そうか。それは何とも残念な話しだ」
自分もターゲットにされかねない情報に、サクヤは口の
セイドリックの
後は帰りたいが。
「ん?なんだ……その目は、わたしは
どうも
ルーリアはサクヤが自分を殺しに来たと思っていたらしく、チラチラとサクヤの
「……そんなに死にたいのか……?」
「……うん。でも少し、考えは変わったかな。どうやら、あなたはセイドリックの事を調べているのよね?なら、今の情報を少しは活用できそうでしょ?」
「何が言いたい?」
サクヤにも何となく
ルーリアが言い出しそうなことが。
「――私を助けてくれない?……それが情報の
「……」
(……確かに、殺してくれと言われるよりは
だが、このルーリアに情報を貰ったのも事実であり。無下にすることも出来ないのが、サクヤの人情でもあった。
「助けると言ってもだな……そなたはどうしたい?……そんな事、この家を出れば済むではないか、それも許されぬのか?」
サクヤはルーリアに
「う~ん。私ね、死んでしまえば楽だって思ったこともあるのよ……貴族に生まれても、何の価値もない
変なところでヒートアップをするルーリア。
ボフ!ボフ!とソファーを叩き、
「おいこら!何なのだっ!」
「あ、ごめんなさい……そうね……メイドとして働くのはいいわ。でもね、ここではイヤ!あんな父上を見るのも、弟が馬鹿をやることに何も言えないのもね……」
ソファーを叩き、
「はぁ……分かった。分かったから長椅子を叩くのをやめよ。
これ以上
「――本当っ!?」
「ああ。その代わり」
当然
「分かってるわ。私が話せる事なら何でも話すし、弟の事も調べておく」
サクヤが言いたいことを分かっていると言いたげなルーリアは、喜んで協力を申し出た。
「そうか、それは良かっ――むっ!?」
一つ安心材料ができたと思った
下の階に人の気配を感じた。
「ん?なに、どうし――むぐっ!!」
「静かにっ」
ルーリアの口を手で
すると
「――誰かいるの~?」
サクヤはルーリアに
それにコクコクと
「わ、私よ……ルーリアよ。その声、ミルディでしょ……?今行くわ」
「……なんだ~ルーリア様か。またサボってるんですか?旦那様に
「あはは……ごめんごめん、今行――」
と、ルーリアは今までいたサクヤがいないことに気付いた。
「どうしたんですか?」
「あ、なんでもないわ。今行く」
(夢じゃないわよね。信じるからね、
ルーリアは
部屋には誰も居らず、先程叩きまくったソファーから舞う
◇
誰もいない
「つ……疲れた。本気で疲れた……戦いの方がマシだな、これでは」
野菜が入ってると思われる木箱にのしかかり、ぷはぁと息を
「それにしても、なんなのだあの女は……面倒な事を言い出して……」
「働き口……か。
ムンっと右手を
「それにしても……なんとも理想と違う
本来は、屋根裏からコッソリと親子の会話を盗み聞きし、
が、降りた場所は屋根裏部屋。しかも
更にその人物は、サクヤのような
「しかも簡単に抜け出せてしまった……ルーリア殿は
サクヤは立ち上がって、尻をポンポンと
セイドリック・シュダイハの
なんだかただ
「さて、帰ろう」
◇
帰り道、屋根を飛び回りあることに気づくサクヤ。
「……もしかして、このまま屋根を
遠くに見える、
「……おのれサクラぁぁぁぁぁぁぁ!
屋根の上で、遠回りさせられたことに気づいたサクヤであった。
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