61話【看病される日常】
◇
【
その場所で【
あの時全力を尽くし気を失っていた【召喚師】の少年、エドガー・レオマリスはどうしているかと言うと。
「ふ~。ふ~。はい、エド君!あ~んっ……」
エドガーはベッドに座りながら、横にある
スプーンで木の皿から
「あ、あのさ……サクラ」
「――あ~んっ!!」
「……あ、あ~ん……モグ……モグ」
とても強制力が働いた《あ~ん》をされ、サクラに
何故かここ数日、連続でサクラがエドガーの看病をしている。
とは言え、エドガーは病人という訳ではない。
あの日、ローザやサクヤ、サクラに連れて帰って貰ったエドガーは。
なんと五日間眠り続けた。一度も起きることなく、水分も取らず、トイレにも行かずにだ。
心配する少女達が見守る中、やっと目を覚ましたエドガーであったが、身体を自由に動かすことが出来ず、こうして少女達に
しかし、その
「どお?――美味しい?」
小首を
一方
薄味ながら、食べる側への配慮が
中の具には
「う、うん――おいしいよ」
「そっかぁ!よかった~」
心の底から安心したようにホッと胸をなでおろすサクラ。
モグモグと
「あのさ、サク――」
「――あ~んっ!」
「……あ、あ~ん」
(な、何でこんな事に……?)
目を覚ました時に一度顔を見ただけで、ローザにもサクヤにも、エミリアやメイリンにも会っていないエドガーは、裏で何が起きたのかがわからないまま、サクラに
「ふぅ……美味しかった。――さてと……――っ!」
木皿に入った
うまく力が入らずに、バランスを
「――だ、大丈夫っ!?エド君、無理しないでいいから」
サクラはエドガーの身体を起こして、ベッドに座らせるが。
エドガーの顔色は明らかに悪かった。
しかしそれは、体調面での悪い顔色ではなく、自分の身体が動かない事への
それに近いだろう。
「――なんで、こんなに動かないんだろ……」
「……エド君」
エドガーの
しかし「これを話すのはサクラの自由にしなさい」などとローザに言われてしまったため、サクラは考えた
(ローザさん……あの人、絶対自分が
大事なのは大事な話なのだが、実はそんなに
いったん言い出せなかったサクラが、
「――サクラ、何か知ってるんだよね?」
「え」
ギクリと固まって、エドガーの
「「……」」
子犬の様なエドガーの
(なな、何なの!その顔っ!!反則でしょっ!)
サクラは
「――くぅ~!――もう無理っ!――エド君……話すからその目止めて!申し訳なくなる!」
エドガーの欲しがり作戦に
<ローザさん。エド君に話しますよ
<……>
<ローザさん?>
反応がないローザに、サクラは席を立って様子を見に行こうとしたが、エドガーの
――すると。
<――勝手になさい>
少し遅れてローザからの返事があり、その短い言葉にこもった
(めんどくさっ!!)
<――悪かったわね>
「いっ!!」
ローザが先読みしたかの
◇
「魔力が、無い……?」
サクラから説明を受け、エドガーは目を見開いて自分の右手にあるはずの《
しかしそこに赤い《紋章》はなく、いたって普通の男子の手があるだけ。
「うん――ローザさんが言うにはね。あの時放った一撃……あれで魔力がすっからかんを通り越して、
エドガーは、三人の異世界人の“契約者”として《紋章》を持っている。
ローザの右手の《紋章》、サクヤの左眼の《紋章》、そしてサクラの
完全に消えているのだが、それがエドガーの
「え~っと。エド君は、“召喚”すると疲れるんでしょ?」
「え、うん。そうだね」
「それ!」
ビシッと指差し、エドガーに向ける。
「その“召喚”の時の
つまり【
「じゃ、じゃあ……また元に」
「うん。戻れるはずだよ。現にあたし達はこの世界にまだいるからね。契約が
「本当によかった……《紋章》が消えてたことには気が付いてたけど、ローザも中々来ないし、聞けない事なのかなって思ってさ……サクラもなんか言いにくそうにしてるし」
腕で顔を
「うっ……なんかごめんねエド君。あたしがもっと早く言えればよかったんだけど」
サクラも、自分の選択ミスがこの結果を
「いや、サクラでよかったかも……話してくれてありがとう。大丈夫って分かったらなんだか安心して眠れそうだよ……」
サクラは、エドガーに
「うん、ゆっくり休んで。多分
「ありがとう。サクラ」
そう言ってエドガーは眠りについた。
それを確認したサクラは、起こさないようにそーっと席を立ち、ゆっくりとドアを開けて。
「――ひぃぃぃぃっっっ!!」
ドアを開けた
ローザとサクヤの顔がぬぅっと出てきたことで、完全に油断していたサクラは、心臓にダメージを負ったのだった。
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