62話【ハリセンはMP1】
◇ハリセンは
サクラは、ドッ!ドッ!ドッ!と
そして、心の底から感じた言葉を
「――ビックリさせないでよぉぉぉっ!!」
「ぬわぁっ!?」
着いた早々、サクラは
サクヤは耳を押さえながら頭をくら~っとさせて一歩
「うるさいわよサクラ。エドガーは眠ったのでしょ?そんなに大きな声を出したら、起きちゃうわ」
それどころか、やれやれと言った
サクラは、いったい「誰の
「いやいや、あんな所で待ってないで入ってくればいいじゃないですか!別に気にしないし、エド君だってローザさんの事気にしてましたよ?」
ローザとサクヤがエドガーの事を気にして、ドアの前に待機していた理由はサクラにも
だから変な
「……ダメよ。――私達は
遠くを見ながら、やたらと
ようやく耳が落ち着いたのか、それに同意しうんうんと
「――た、確かに。あの時の
実はこの三人ともう一人、ここにはいないがエドガーの幼馴染の少女エミリアは。
エドガーがまだ目を覚ます前の数日で、ある取り決め。つまりエドガーの世話をする
◇
数日前。
『おはようサクラ。エドは?』
眠そうにしながら、それでも朝一で
「今日もメイドさんはいないようだ」と、サクラは内心
『おはようエミリアちゃん。エド君はまだ目を覚まさないよ……今は【忍者】が見てる、行ってみたら?』
『あ、うん……今はいいや』
管理人室(エドガーの部屋)の方をジッと
エミリアはサクラの隣に
『な、なんで隣に?』
進んで広い食堂の一つのテーブル、ましてや隣に座る理由などないはずなのだが。
『ちょっと
『……ええぇ』
真剣な横顔で話し始めるエミリアに、サクラは嫌な予感しかしなく。心底嫌そうな顔をする。
『そ、そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃない……』
サクラは、この世界に来てまだ日が浅いにも
⦅絶対
サクラは心の中で、近い未来を
そんなサクラに、エミリアは申し訳なさそうに続ける。
『で、でね!考えたんだよ。私さ……エドのお世話をしたいなぁって』
『――はい?』
指をツンツンと合わせてもじもじとするエミリア。そんな
『いや、だからね。エドのお世話を――』
エミリアは、サクラが話を聞いていないと思いトーストにジャムを
『聞こえてる、聞こえてるって!……で、どうしたいのよエミリアちゃんは。まさか一日中エド君に張り付いて、色んなお世話を
と、サクラは笑いながら言うのだが。
『……。……。……えへ』
『――ウソでしょ?』
無言のまま身体を
どうやら完全に
『……だ、だってぇ』
エミリアも、何もかもを世話したいとは言わない。
ただ。ちょっとだけ。ほんの少しだけでも、幼馴染であるエドガーと一緒に居たいだけだ。
『だってじゃないってエミリアちゃん……ちょっと考え直した方がいいよ?いくらなんでも重すぎるもんそれ……』
『――何の話をしているのだ?』
『あ、【忍者】……』
サクラがエミリアを
◇
『それはいい案だなっ!』
『――あんたもかいっ!!』
恥ずかしそうに話すエミリアから
その反応にサクラは、学生
『痛いではないか……というかそんなにポンポンと出してもよいのか?その
サクヤの言う
サクラはこの二日間、自分の
結果、かなり
ということは、【ダイナマイト】や“銃”も可能なのだろうと考えたがが、怖くて出来なかった。
『平気よ。|こんなハリセンくらいなら、
右手に持つハリセンをペシペシと左手に打ち付けながら、サクラは言う。
『えむぴぃ?……相変わらずサクラはよくわからぬ言葉を使うな』
『精神力みたいなもんよ。エミリアちゃん的に言えば魔力……なのかな?』
『あはは、私は《魔法》なんて使えないけどね』
エミリアは
そんなエミリアに気を使ってか『そ、そうなのか……』と言いながら、叩かれた
ちなみにジャムは付けず、トーストも焼かずにそのまま食べるのが好きらしい。
『……で、エド君はどうだったのよ?変なことしてないでしょうね。あんたは昨日の
『なに?前科?』
昨日【福音のマリス】に
一方サクラは
『んぐっ!!――な、なにもしていないぞっ、断じてしていない!』
口に
『あんた……目が泳いでるわよ』
⦅あたしと同じ|癖⦅くせ⦆なんだよなぁ⦆
完全に黒なのだろう。忍びとしてそれはどうかとも思うが、サクヤがどこか抜けていることは、サクラもエミリアも、おそらくローザやエドガーも
今更何かを言ったりはしないが。
『……なんでそんなに表情を隠せないのよ。【忍者】でしょ?ローザさんを
当の本人は。
『ロ、ロ、ローザ殿と同じくするでないぞっ!!』
わざわざ足を
本心なのであろうが、そんなことを聞かずにサクラは
『ほらそういうとこ!メイリンさんに見られたら
テーブルに
『……うっ!』
メイリン・サザーシャークは、ここ宿屋【福音のマリス】の従業員で、あのローザですら
それはサクラやサクヤも同じらしく、
『そんなに苦手なの?メイリンさんの事。すっごくいいお姉さんだよ?』
『そ、それは
しどろもどろするサクヤに、面白がったエミリアは。
『あ、メイリンさんおはようございます』
『おはようございます。メイリンさん』
サクラもノリで
『――おはようなのだ!メイリン殿!今日はまだ何もしておらぬから……』
今の事を聞かれたのではと勝手に思い込んだサクヤ。
簡単なエミリアの作戦に引っかかっていた。
『……――いないではないかぁっ!!』
『『あははははっ!!』』
両手を上げて、ぶわっと
エミリアもサクラも笑って返した。
『まったく……子供か、お
安心して、ドカッと
『うう……苦い』
『どっちが子供何だか……あ。所でさ、エミリアちゃんが言った
話を戻そうと、サクラがエミリアに話しかける。
『ああ、うん。何か対戦でもしない?……ちゃんと
物理的な事では、完全に一人有利な
それだけで、エミリアと異世界人、戦いに特化していないサクラも
単に負ける
『別にいいけどさぁ……』
⦅エミリアちゃん、絶対自分が負けた時のこと考えてないよね⦆
『でしょっ!?よし決まり!――メイリンさんが
メイリンは、【
ローザが言うには、《化石》の魔力に反応して、【
翌日にはピンピンとしていたが、エドガーが目を覚まさない事もあり、少し仕事を減らしているところだ。
『それじゃあローザさんを起こすのは、言い出しっぺのエミリアちゃんね』
『――えっ!?』
突然の
そうだ、エドガーのお世話決めをするには、ローザを起こさなければならない。
いつもはメイリンがローザを起こしてくれているのだが、今日はまだ居ない。
今日あのズボラなローザを起こすのはここにいる誰か。と
『ふっふ~ん。じゃ、よろしくねエミリアちゃん!あたしと【忍者】はここで待ってるから、その代わり
サクラに先手を打たれたエミリアは、口を開いたまま
『うう……分かったよ、行ってくる』
トボトボと二階に上がっていくエミリアの背中を笑顔で見つめ、ヒラヒラと手を振るサクラに。
『お主は
と、昨日ローザを起こしに行ったサクヤが。
実感がこもった顔をサクラに向け、げんなりしながら言った。
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