第3章《近未来の翼》

プロローグ【地下室に光る緑】



◇地下室に光る緑◇


 突き付けられた銃口じゅうこうに、エドガーとサクラは両手を上げて降参こうさんする。

 事の発端ほったんは、サクラが言い出した。


『エド君……“召喚”見せてよ』


 と言うじつに軽い発言がきっかけだ。

 そして何故なぜか、発動してしまった【異世界召喚】によって“召喚”された人物に、銃口じゅうこうを向けられているのだ。


 もうぐ夏に入ろうとしている【リフベイン聖王国】で。

 エドガーが“召喚”した、四人目の異世界人。


<サクラがあんなこと言うからっ……>

<こんなことになるなんて誰も思わないじゃん普通っ!>


 【心通話】でひそひそ話をするも、新たに“召喚”された異世界人にも聞こえているようで。


当機とうきに無断で、会話をゆるした覚えはありませんが……」


 チャキっ!と、銃口じゅうこうをエドガーの後頭部に当て、威圧する異世界人の女性。

 緑にかがやく髪、光沢のあるレザーと思われる服装と、腕や脚に付けられた武装。

 そして。その銀色のひとみは冷たく、まるで熱の通らない金属塊きんぞくかいの様な重厚感じゅうこうかんびている。


「――あ、あなたも異世界人なんでしょっ!?同意どういしたのはあなたのはずよっ!どうし――ひぃっっ!!」


 サクラが説得せっとくしようと、“召喚”されるさいの《謎の声》とのやり取りがあっただろうと言おうとしたのだが、新たな異世界人聞く耳持たずで銃をサクラに突き付ける。


「フリーズ。しゃべらないで……」


 青ざめた顔で、コクコクとうなずくサクラ。


検索けんさく開始します……――……。完了。該当がいとう無し……この世界は、どの惑星わくせいにも当てはまりません。どうすればいいのでしょうか、マスター・ティーナ……指示しじを求めます」


 一人ブツブツと話だし、機械音声のように棒読ぼうよみでかたる新たな異世界人は、まわりを見渡し。


「――反応有りっ。上部!!」


 右手に持った銃はエドガーとサクラに突き付けたまま、反対の左手に持った銃を天井てんじょうに構える。

 すると同時に、天井てんじょうから落下してくる人影。


「ちっ!――すきは無いがいただくぞっ!!」


 エドガー達と新たな異世界人の丁度ちょうど間に、いきおい良く落下しながら短刀をるう【忍者】サクヤ。


「!――理解不能。センサーに反応していませんっ!!」


 サクヤは落下と同時に、短刀で相手の銃を叩き落とし、新たな異世界人はものすごいいきおいで後方に距離きょりを取る。

 脚に火の“魔道具”でもついているかのようないきおいだ。


「【忍者】っ!!助かったよ~――ふぎゅっ!!」


「まだ安心できぬぞっ……!」


 助かったよろこびで飛びつこうとするサクラに、サクヤは手で制してサクラの顔をつぶす。


「サクヤっ!」


主殿あるじどのっ……!あの不届ふとどき者はどういたしますか!?らしめてやりますかっ!?」


 最近サクラの【スマホ】で見ている《時代劇》の台詞せりふを言い、サクヤはご満悦まんえつだ。


「くぅぅ……あんたそれ言いたいだけでしょ!」


 鼻頭はながしらおさえて、サクラはツッコむ。


「――理解、不能……」


 ドサリと、新たな異世界人は倒れた。


「え?あれっ……??」


「……【忍者】、あんた……」


「ち、違うぞ……わたしはまだ何もしていない」


 突然倒れた新たな異世界人は。

 可愛らしくクゥゥゥと、お腹を鳴らし。

 ――気を失った。


「「「は?」」」


 緊張感が一気にとける中。

 気を失う寸前すんぜんに、新たな異世界人は言葉を発する。


「――当機とうきは、認めない……お前が、当機とうきのマスター……などとはっ……」


「――えっ?」


 その言葉は、エドガーを完全否定する言葉だった。

 地下室で、エドガーと四人目の異世界人が邂逅かいこうする。

 そんな出来事まで。

 ――また、話はさかのぼる。

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