41話【額の違和感】
◇
サクヤが食事をしている間に、エドガーはメイリンの掃除を手伝っていた。
「すみませんメイリンさん、いきなり食事を作って貰って」
「えっ!?」
ロビーの掃除が
今頃はおかわりを食べているはずだ。
「どうしたの?エドガー君、また急だね」
メイリンは、急なエドガーの
「いや、メイリンさんも忙しいのに悪かったなぁって」
このエドガーの表情は、メイリンも見慣れたエドガーの昔からの
最近は出なくなっていたと思ったのだが。
エドガーは、
他人にばかり気を使い、自身の優先順位を
だが、それもこれも。エドガーが
エドガーは、
自分の心をさらけ出した、少女の
心の中から
(あの声は、どう聞いてもサクラだった。それにローザの声も聞こえた……)
「エドガー君、大丈夫?」
おでこに手を当てたエドガーが何かを考えこんでいるのか、話しかけても反応しなくなり。
メイリンは心配になってエドガーに近寄り、弟の様な存在のその少年を
「……あ、すみません。大丈夫です」
もし聞こえて来た会話が
エドガーはサクラとローザに
だがそれは、メイリンには聞かせてはならない。
記憶が
それが、エドガーやエミリアの兄、アルベールの
ローザだけは「素直に話せ」と言っていたが、ここはアルベールの意見を
「そう?ならいいんだけど。本当に大丈夫?何かあったら相談してね?私はエドガー君のお姉ちゃんみたいなものなんだからっ」
ズキリと胸が痛む。こんなにも心配してくれて、優しく接してくれている人に、エドガーは隠し事をしている。
今はそんな状況ではないが、とても心苦しい。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます、メイリンさん……」
必死に笑顔を作り、メイリンを安心させようと強がる。
「……そう、それならよかった」
悲しげに笑い、メイリンはエドガーに背を向け掃除を再開する。
(ごめんなさい……メイリンさん。今は、まだ)
◇
「ふぅ。一通り終わったわね」
「はい、そうですね……それじゃあ、サクヤの所に戻りましょうか」
「ええ――あ!エドガー君は先に行ってて……
「いや、それなら僕も……」
「ううん。大丈夫……サクヤさんの所に戻ってあげて?」
そう言い残し、エドガーの返事を待たずにメイリンは外へ出ていった。
「……しょうがない、戻るか」
食堂に戻ると、サクヤとサクラが、
「……何してるんです?」
エドガーが
サクラが首を振り向いた瞬間、ゴリッと音が鳴り。サクヤが
「ぬあぁぁぁぁっぅう!」
「な、何っ!?」
サクラはサクヤの反応を予想しておらず、大きな声に驚き、動物のように飛び
「お、お主……何という
「……あっ!――ああっ!!そうだ!ナイス【忍者】っ!」
その石頭を抱えて、サクラが何かを思い出したかのように自分の荷物の中を
「一体どうしたの……?」
ゆっくりと食堂に入ってきたエドガーが、テーブルに着いていたローザに聞く。
「……さぁ?どうしたのかしらね」
風呂上がりのミルクを飲みながら、
「ねぇ~、私には~?」
ぐでぇっとテーブルに突っ
エドガーは、エミリアも入浴していたことは知らない。しかし。
「エミリア
「えへへ~、大丈夫だよ」
エドガーに心配されたことで、にへら~と笑うエミリア。
しかし、ローザは
「……ちょっと待ちなさい、エドガー」
「はい?」
エミリアにお水を持ってこようと、
「どうして、私が大浴場にいたことを知っているのかしら?……」
「――え……いや。そ、それは、その……」
エドガーが、
しかし、それと同時にサクラの目的も
「――何これぇっ!!」
サクラは左手で前髪を全上げして、右手で持った手鏡で
そこには、サクヤが言った石頭の答えがあった。
「これ、どう見ても《石》なんですけどっ!と、取れないし!?」
大浴場で一度感じた違和感を再び思い出した。
エミリアに邪魔?されて半分以上忘れていたが、
そこに、細目に伸びた
その白い宝石は、エドガーが母から貰った“魔道具”、ホワイトサファイアの宝石【朝日の
「……仕方がないわね。話は後で――サクラの所にいきましょう」
「……分かりま――わ、分かった」
サクラの慌てる姿を、エドガーや他の三人も見て、サクラのもとに寄ってくる。
「ど、どうしたの?サクラ……」
エミリアは、恐る恐ると言った感じでサクラに声をかけるが、若干のビビり感があるのは気のせいだろうか。
「……確かに《石》ね……サファイアかしら」
ローザはミルクのカップを持ちながら、しゃがんでサクラの
「あ。【朝日の
エドガーも、
そんなエドガーを
「エドくん……あたし、何かしたかな?」
「あ、いや……その」
首を
その明らかにおかしいエドガーの
「エドガー……こっちを見なさい、こっち!」
「いや、ローザ……待ってくださ、待って――わ、ちょ!」
ローザは、
毎日掃除はしているので綺麗な状態だが、問題はそこではなくローザの座り方だ。
エドガーを座らせた後
これではエドガーでなくても、あたふたするだろう。
「ちゃんと……見なさいっ!!」
エドガーのシャツの
「ぐっ……痛いよ、ロー――っん!?」
「ど、どうしたのエドくんっ!?」
「ああ!無理無理、見れないよ!!」
エドガーの目に飛び込んできたのは、しゃがみ座りするサクラの白い三角コーナー。
完全にスカートの中が見えてしまっている、慌ててギュッ!と
「ふっ……強情ねエドガー。エミリア、こっちに来なさい!!」
「えっ……え!?」
「え?じゃない、エドガーの背中に乗って目を
「ええ!?で、でも……」
「――やりなさい」
ローザは何かスイッチが入ってしまっているようで、実は遠目で見ていたエミリアも、巻き込まれた。
サクヤだけは「かしましいのぉ」と、ミルクをズズズ~とお茶飲みしていた。
どうやら助ける気はないらしい。
「ちょ!エミリア!?」
「ええ!?」と言いつつ、じりじりとにじり寄るエミリア。
両手をワキワキさせて、エドガーを
内心楽しんでいるのがバレバレである。
トスンとエドガーの背中に座り「ごめんね!」と謝りながら、人差し指と中指で、エドガーの
「いはっ、いひゃい!!えいいあっ!!やえれ……」
(いたっ、痛い!!エミリアっ!!止めて……)
「話す気になったかしら?」
まるで悪の親玉みたいなローザが、
「ううぅっ」
今回、
「ぷはっ……分かりま――分かったよ……分かったから、座ろうよ!」
「もう、座ってるけど?」
「座ってるじゃない」
「あはは。エド、もう座ってるよ」
「――椅子にだよっ!!」
無防備すぎる女子達にとうとう頭に来たのか、エドガーらしくないツッコミが出たところで、ローザが
「
「――いっ!?」
ローザはエドガーの
サクラは、ばばっと手で隠すも
「……なっ!」
<なんで気付かないのよ、あたしのバカ!!>
「!!」
またサクラの声が聞こえる。
頭に直接、そして更に。
<いい思いをしたでしょう?エドガー……>
ローザの、エドガーに話しかけるような声まで、完全に聞こえる。
<な、なんで……何が!?>
<やっぱり、思った通りね>
笑顔を見せながら、エドガーを起こすローザ。
エドガーは、
まるで全て見通しているかのように、心の中でエドガーに声を掛ける。
<エドガー。
「《石》!?そ、そうか!」
ローザとの心の中の会話に、つい大きな声で返してしまう。
サクラは「わっ!」と驚き、エミリアはビクッ!と反応し。
<――やはりこれは
「うわっ!何よ【
「む?」
「え……?」
「……」
「これって……」
「何?どうしたの?三人して、
謎の反応をするサクヤ、サクラ、そしてローザとエドガー。
一人完全に、仲間外れ状態のエミリアの発言で、
「……これってまさか、
サクラの
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