現場
次に連れてこられた場所は、璃茉の通学路の途中にある大きな横断歩道。
違和感があった。
道行く人が素通りしていく。
隣に璃茉の腕を掴んだままのナナカがいる。
「あんたはここがどこだかわかる?
」
「え? 学校に行く途中の一番大きな道……」
「分かってないようね」
璃茉の言葉を遮る。
ややあって。
「……あんたが事故死した場所よ」
「───あ、ああ! 」
忘れていた記憶がフラッシュバックする。
……そうあの日は、璃茉は由弥のお葬式の帰りだった。
虚ろな状態で、思い出の最後に見たネックレスを握りしめ、フラフラと帰宅しようとしていた。
───ブーブーブーブー!!!
車のクラクションが大音量で耳に入るも、認識したころには、振り向く余裕もなく、はねられた。
声を発することなく空中に浮き、地面に叩きつけられた。
まるでスローモーションのように景色が変わっていく様が鮮明に蘇る。
……ペンダントがちぎれ飛んでいくのを絶望の眼差しで見つめていたから。
あれは、付き合って2年記念のプレゼント。最期のプレゼント。
そして、暗転した。
「ああ、ああああ……」
「思い出して悲観してるとこわるいけど、どんなものか思い出して」
「あ、う……」
「あんたがダブルショックで忘れていたことはわかった。だったら、絶望プレイバックする時間があったら、探すわよ」
「さ、がす? 」
「あんたが覚えてないのも無理ないワ。あんたには真っ白な空間にいたようにみえるけど、ここで地縛霊みたいに突っ立ってたのよ。抜かったワ。死んだ場所に居座るパターンテンプレ過ぎて。話す気力ないなら、飛んでった方指すだけでもして」
璃茉は混乱しながら、震える指を向けた。
曖昧でしかない。
しかし、ナナカは不確かな方向を探し始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます