別れ
なんでこんなにも必死になってくれるんだろう、他人ごとなのに。
なんで離さないでいてくれるんだろう。
ナナカは探し回りながらも、璃茉を掴んだままだった。
「あんたも目でいいから探してよ。ペンダントだから小さいわよね。どんな形してたの」
草をガシガシ掻き分けていく。
璃茉は既視感を感じていた。
前にもこんな風にグイグイ引っ張ってくれた人がいた気がする。
すごく強引なのに、すごく安心した。
「……1センチ、蓋合わせても2センチくらいのガラスドーム。綿毛か花弁かわからないけど、浮いてるみたいに散らばってて……丸い、淡い青系ビーズみたいなものがフワッて。あと……」
璃茉の思い出す間と、ナナカの静止の間。
「……天使の羽みたいな蓋がついてる」
「え? 」
「『璃茉は俺の天使だから』とか? 」
意地悪く笑う。
「な、んで……」
「平気で言いそうだワ。ほら……」
ナナカの指に挟まれて、小さなガラスドームが揺れていた。
「それ……、ありがとう」
涙が溢れ出す。
手を差し出すが、引っ込まれてしまう。
「これ、ヒビ入ってる。規約違反だけどいいワ」
ナナカの両の手に抱かれて、ひかりが包み込む。
ただの天使よりキレイだと思った。
「ほら、ヒビは直ったワ。あと、チェーン切れて無くなってる」
「ホントだ」
「……い"っ」
自らの金糸の髪を引き抜き、息を吹き掛けると、キラキラと細い鎖に変わる。
素早く通すと後ろに回る。
「あんたはすぅぐ失くすから、つけときなさい。……もう失くすんじゃないわよ」
───シャラリ。
首にネックレスが戻った瞬間、璃茉の体が光に包まれ、浮き始める。
「……! ナナカさん! 」
「なぁに? 上がられるんだから、未練ないでしょ」
璃茉は目を見開いている。
ナナカがゆっくりと光の粒子に変貌していた。
「あんたさぁ? 由弥、由弥ってアイツのことばっかり。……だからバカ璃茉なんだよ」
最後は聞き取れないまま、璃茉の光は上がり、ナナカはその場で霧散した。
Fin
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