ナナカの真意

「……ナナカさん」

「何よ? 」

「肝心なこと、聞けてません。なんでんですか? 」


それは、出会い頭にも聞いたが、はぐらかされてしまった。


「私のために言わないんですか? それとも言えない理由があるんですか? 」


ナナカは璃茉を見つめる。


「あんたのためぇ? よ」

「そうやってすぐはぐらかすんですね」

「ポイントでかそうだからって流れでわかんない? 」

「じゃぁ、ノルマってなんですか? 」


沈黙が流れる。ややあって……。


「……だから頭いいやつって嫌いよ。何聞いてもいい覚悟はあるの? 」


真顔でこちらを向く。


「……はい」


少し声が震える。


「わかった、おしえてあげる。あんた全く気がついてないみたいだけど、……のよ」

「え? だって私は……あ」


何も思い出せなかった。

由弥との思い出以外、何も。


「天使ってのは死神と真逆の、天国に行く迷子の魂を導くためにいんの。未練があるから天使の世話になってんのよ、あんた」

「未練……」

「あんたのを叶えて、天国に連れてくのが仕事なの。何かデカい匂いしたってのに、ほとんど記憶ないとか困るんですけどぉ? 」


死んだことにも理解が追いつかない璃茉には、難しい話だった。


「だから、取り敢えず次行くわよ」

「───次? 」

「次の過去にプレイバック! 」


眩しい光に目を瞑る。

何度やっても慣れず、目を固く閉じてしまう。

何十回と繰り返された遡り。

どの思い出にもがいた。

病気で亡くなった彼は、最後の最期まで璃茉といようとしてくれた。

ベッドにいた方が長く生きられたのに、璃茉との一瞬一瞬を優先した。

享年17歳。短命になってしまった。




「……璃茉」

「なぁに? 由弥」

「後ろ向いて」


言われるがまま、後ろをむく。


───ジジッ。


シャラリと微かな音を立てて首の後ろに手を回される。

画面がブレ、それが何なのかわからない。

ネックレスだろうことはわかるけれど、そこだけ砂嵐が見えた。


───ピタ。


思い出が急停止する。


───バリバリバリバリ!


またも空間が破られ、ナナカが顔を出す。


「……それね。ちょっといくわよ」


腕を掴まれ、空間を跳躍した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る