間話Ⅳ 「この意志は、私が私自身で定めたものですわ」



「あのね、ミーラ。わたし、もうそんなに長くないかもしれないんだ」

「……どういうことですの?」

「そのままの意味だよ。きっとわたしは、もう、消えてしまう。どう消えちゃうのかはわかんないんだけどさ。

 だから、ミーラの人生のことはミーラが決めて」

「…………私が、決める……」

「そ。わたしのじゃなくて、ミーラの進みたい未来を、ミーラ自身が決めてほしいんだ」


 その時は突然の告白に混乱してしまって、けれども【彼女】の告白によって、【私】の背中は押されたのだと思いますの。





 ☆☆☆





「ねぇ、ミーラ。ホントにそれでいいの?」

「えぇ、構いませんわ」

「ホンとの本当に? 一歩進み始めたら、もう、後戻りなんてできないんだよ??」

「本当に、良いのです。

 前にサクラは、見知らぬ誰かだとしても、わたしが救えたら、とても素敵であると。そう言ってましたよね?

 それから私は、私について。考えるようになりました。

 私の本当にやりたいことについて、考えるようになったのです。国によって決められた『王妃』という立場を一度忘れて、ですわ。

 そして、ようやく結論を出すことが出来ましたの。


 私は、見知らぬ誰か誰かだとしても。愛を失い、また、愛を失う機会を失うことを止めたい。


 これが私のやりたいことですの。

 愛の尊さは、サクラから教えて頂きました。美しく、また、暖かいものであると。

 それを私は、失いさせたくないのです。

 そのために私は、医者になると決めた。

 いしくもサクラと同じ進路となりましたが。

 この意志は、私が私自身で定めたものですわ」

「……そっか。なら、いいんだ。

 わたし、応援するよ。ミーラの夢。

 絶対に、叶えようねっ」


 そう微笑んだ【彼女】の表情と、それから他人に初めて【私】自身を認めてもらったことによる『心』を、私はきっと、一生忘れることは出来やしませんの。


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