間話Ⅲ 「――とっても素敵だな、って」




「ねぇねぇ、ミーラ。アンタ、王子のこと好きでしょ」

「ふぇっ!? そ、そんな事ありませんわよっ」

「わたしに隠そうとしたって、無駄だからね。これでもミーラのことはよくわかってるつもりだから」

「うぅ……」

「それで? ミーラ、王子のことが好きだから王妃になるってことにするの? 最近結構迷ってるけどさ」


 この頃王子に思いを寄せ始めていた【私】は、けれども自分の本当に進みたい道というものを見つけられそうな時期でもありまして、故に迷いが大きくなっておりましたの。





 ☆☆☆





「……そろそろかなぁ」

「あら、どうかされましたの?」

「ん、いや、なんでもないよ。それにしても、ミーラを見てるとわたしの夢を思い出すよ」

「サクラの夢、ですの?」

「うん。わたしって小さい頃から持病を持っていてね。結局その病気で死んじゃったんだけどさ。でも病気だっからこそ、わたしは将来医者になりたいなって。本気で考えてたし、実際に勉強もしてた。医師免許まであと少しだったかな? それくらい、必死だったんだ。

 元はこんな歳まで生きれなかったわたしを救ってくれた医者に、わたしがなることで恩返ししたいってのもあったんだけど。でも、それ以上に、

 見知らぬ誰かだとしても、わたしが救えたら。

 ――とっても素敵だな、って。そう思って」


 そう微笑んだ【彼女】を、私は未だ忘れる事が出来ませんし、何よりもその言葉が【私】を【私】にしてくれたのだと思いますの。



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