それでも彼は、一次創作を書く

アーカーシャチャンネル

本編

 彼は一次創作を投稿しているユーザーの一人、特に大きな目的がある訳ではないが小説コンテストには定期的に投稿していた。

時代はWEB小説サイト時代、個人でホームページ作成の勉強をして作品を公開する時代は終わりを迎えたのかもしれない。

その中で、ある作品が話題になっているとまとめサイトがこぞって取り上げている。それは――。

【予想外の展開だな】

【ここ最近は一次創作メインの展開だったのに、ここで逆戻りとか――】

 こうした声が聞かれるほどには、今回の現象をUターンと言及する者が多い。

その理由は、一次創作と言う様々な下準備が面倒な創作よりも既に作られた物から創作する二次創作が予想外のヒットとなったのだ。

この状況は様々なまとめサイトでも取り上げられ、次第にマスコミも注目し始める。

【一次創作で出版を狙うと言うのが、そもそも無理な話だったという作家が、次々と二次創作に乗り換えているようだ】

【一体、どういう事なんだ?】

【これがUターンと言う物か。個人で小説家を目指すよりも、二次創作でバズり狙いとか】

 しかし、マスコミが注目するのは実在する歌い手、実況者と言った人物を題材にした二次創作で、他の作品はスルーしていた。

その理由は不明だが、特定作品ばかりをピックアップするのが出版社を敵に回してしまうと考えた、という説がある。

いわゆる週刊誌をネタにワイドショーやニュース等でネタを作るという行為も、また二次創作な訳だが――というブーメランが飛びかねない事情もあった。



 こうした話題をSNS上で確認したある人物は、自分も二次創作に乗り換えようか考え始めた。

誰にも見てもらえない一次創作を書き続けるよりも、二次創作で見てもらえる方が自分にとっては得と考えたからである。

実際、彼がパソコン上で見ているイラストサイトでも小説のカテゴリーはい次元と言えるもので、一次創作ランキング以外では一次創作を見かけないのだ。

ランキング上にあるのは、有名作品の二次創作ばかりである。そこで、その有名作品の二次創作を書いた方が見てもらえるのか、そう考え始めるのだが――。

(しかし、二次創作を書くにしても――)

 彼が不安視していたのは著作権の問題である。一次創作であれば、その点を考える必要性がないからだ。

盗作とか盗用のようなケースは論外だが、それでも一次創作の方が炎上リスクは減るだろう。

そして、SNS上で見かけるような自作であると偽るような行為があっても一次創作であれば、二次創作と違って堂々と指摘することだって可能だ。

二次創作の場合は、それだけ迂闊な指摘が著作権侵害等と言及され、二次創作自体が許諾必須と言う時代になりかねない。

彼が一次創作にこだわる理由は、いわゆるバズり目的の『エア二次創作』や炎上目当ての『厳しめ』等の問題を回避する為だった。

「やはり、時代は一次創作を求めている。だからこそ、新人賞などのコンテストも定期的に行われているのだ――」

 今こそ、一次創作への転換が求められる。それに加えて、一次創作作者に対する利益などの問題も考えるべきだろうか。

こうして彼は二次創作で安易にバズるという小説家デビュー時に炎上のタネになりそうな案件を避けるため、一次創作を書き続ける事にした。

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