第27話 死闘

 フェリスはルリの前に立ち、剣を振るう。ルリはそれを容易に躱しながら、彼女のに迫る。ルリが振るうスピアはしなりながら、フェリスを襲う。何とか致命的な一撃を防ぐものの、しなる剣先がフェリスの白い肌を傷つけていく。

 「フェリスさん!」

 真由はそんなフェリスを後から見ているしかない。下手に加勢すれば、相手に隙を与える可能性が高いからだ。

 「くそぉ」

 フェリスは必死にルリの剣撃を受けるが、反撃の隙も得られずに徐々に後退するしか無かった。

 「はははっ」

 ルリは笑いながら、フェリスの身体が傷付いていくのを眺めている。

 「ど、どうにかしないと」

 真由はどうすることも出来ずにただ、見ているしか無かった。

 「ふん・・・姫騎士の身体を手に入れて、かなり力が上がったか。やるな」

 鈴丸は金棒を振り上げる。

 「悪いが・・・そいつはやらせん」

 鈴丸はルリの背後から飛び掛かった。

 振り下ろされる金棒をルリは背後を見る事なく、見切り、避けた。

 「フェリス。一旦、後退しろ」

 鈴丸はフェリスにそう告げると、ルリと対峙した。

 「あらあら・・・同じ悪魔同士でしょ?」

 ルリは舌なめずりしながら、鈴丸に尋ねる。

 「悪魔?儂は鬼じゃ。お前みたいな、下賤の者と一緒にするな」

 「はっ・・何が鬼よ。人間に迎合して・・・悪魔の片隅にも置けないわね」

 ルリは細長い刀身の切っ先を鈴丸に向ける。

 「そんな細い剣など。儂の金棒でへし折るのみ」

 「あらあら・・・へし折るなんて・・・これだって人間よ?殺しちゃうわよ?」

 「鬼の儂が・・・そんな事を気にするとでも?」

 「はははっ。そうよね。悪魔が人の命なんて気にしないわよね」

 ルリが一気に攻める。素早い剣撃が鈴丸を襲う。鈴丸は金棒でそれを防ぎながら、時折、ルリに金棒を振るう。フェリスに比べて、その実力は遥かに上である事は解る。しかしながら、それでもルリに一撃を浴びせる事は出来なかった。

 「今ならやれる」

 真由はフェリスの時と比べて、ルリの動きに隙が出来ていると感じた。咄嗟にルリに飛び掛かる。

 鋭い刀の振りがリルの右側から襲い掛かる。

 「ちっ」

 ルリは舌打ちをしながら、無理に真由の刀を剣で弾く。だが、そこには相当の無理があった為に細い刀身が軽々と折れた。

 同時にそれは輝き、そして、派手な血と内臓をぶち撒いて、真っ二つになった男がその場に落ちた。

 「ご、ごめんなさい」

 あまりの光景に真由は一瞬、男の顔を見て、謝ってしまう。それが隙となる。

 「死ねぇ!!!」

 ルリの手刀が真由に襲い掛かる。だが、それを鈴丸の金棒が彼女を叩き飛ばす。

 「ぐふうううう!」

 数メートル程、ルリは吹き飛ばされた。

 「油断するな真由。目の前で人が一人、死んだくらいで動きを止める奴があるか?お前のお陰でやり損なったわ」

 鈴丸は金棒を振り上げ、殴り飛ばしたルリを見る。

 「くぅうううう。姫騎士は全然だが・・・さすがに同じ悪魔だけあって、厄介ね」

 ルリは傷を負いながらも立ち上がった。

 「鈴丸の一撃を受けても?」

 真由は驚く。

 「急所は外れたからな。ダメージはあるだろうが・・・あの様子じゃ、微々たる感じだな。やれやれ・・・手助けするなら、もっとしっかりしろ」

 鈴丸に言われて、真由はコクリと頷く。

 ルリは傍に居た若者の股間をまさぐる。器用にチャックを下ろし、パンツの中に手を突っ込み、荒々しく、それをしごいた。

 「勃ちが悪いわね。早く、勃起させなさいよ」

 ルリは苛立ったように若者に言うが、目の前で人一人が真っ二つになった現場を見て、唖然としていた者がどうして、簡単に勃起が出来ようか。

 「ははは。どうやら、武器は玉切れのようだね?」

 鈴丸は笑いながらルリとへと歩み寄る。同時に真由とフェリスも剣を構えながら歩み寄る。

 「きゃははは。一人じゃダメで同時に来るか?そんな器用な事がお前らに出るかな?」

 ルリはそんな彼女達を見て、大笑いをする。

 「舐めるな!」

 最初に飛び掛かったのはフェリスだった。彼女の剣がルリの首を狙って薙ぐ。だが、その時、ルリが股間を擦っていた若者がロングソードへと変化した。その剣でルリはフェリスの一撃を止める。

 「遅いんだよっ!」

 フェリスはそのまま、力任せにフェリスを押し戻そうとするが、そこに鈴丸が飛び掛かる。ルリはフェリスを弾き飛ばし、鈴丸の金棒を紙一重で躱し、同時に鈴丸の横っ腹に肘鉄を加える。

 「うぐぅ」

 鈴丸は咄嗟に飛び跳ね、ルリの次の一撃に備える。その間に真由が飛び掛かった。

 「邪魔だ。小娘っ!」

 ルリは真由の一撃も軽々と剣で受け止める。だが、その一撃はルリの剣を軽々とへし折った。同時に剣に変化していた若者の胴体が真っ二つに折れた状態で変身が解ける。飛び散る血と内臓。

 真由はその光景に再び、動きを止めそうになる。そこにルリの手刀が襲い掛かる。

 「二度も通じん!」

 真由は返す刀でルリの手刀を弾き飛ばす。ルリは腕を弾かれ、錐揉み状態でフラフラと後退した。

 「死ねぇ!」

 そこにフェリスが飛び掛かる。剣が体勢の取れていないルリの頭上に振りかかる。

 「うるさいよぉ!」

 ルリは左手で彼女の剣を掴む。

 「くぅ」

 フェリスはそれで完全に動きが止まる。

 「お前如きが私に・・・」

 ルリは掴んだ剣を一瞬にした砕いた。

 「ひっ!」

 フェリスは慌てて、飛び去った時、剣は元の姿に戻る。腹の一部が抉られ、激しい出血をする彼女の弟がその場に倒れた。

 「す、すぐに手当てをっ!」

 真由がフェリスを庇うように立つ。

 「ふんっ・・・愚か者めが・・・」

 ルリは息を切らせながら、二人を眺める。

 「ま、真由さん」

 フェリスは悲痛な表情を浮かべながら目の前に立つ真由を見上げる。

 「良いから。すぐにその人を連れて、ここから離脱してください」

 「し、しかし・・・」

 「しかしも何もありません。大事な人なんでしょ?」

 真由は一切、フェリスを見ずにそう言い切った。フェリスは無言で弟を担ぎ、その場から逃げ去る。

 「ふん・・・一人減ったか・・・確実に聖剣を殺せなかったのが惜しいな」

 ルリは軽く笑みを浮かべる。

 「ふん・・・真由の一撃に相当、効いているようじゃな」

 鈴丸は肘内を喰らった横っ腹を抑えながら、ルリに憎まれ口を掛ける。

 「ふん・・・だが、それでも力不足だ。私には勝てんよ。お前らを凌辱して、遊んでやろうと手を抜いたのが失敗だった。皆殺しだ」

 ルリは邪悪な笑顔を見せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る