第26話 ルリ

 ヤンキーのリーダーをとりあえず、ボコボコにするフェリスとイオナ。

 拷問とはこうやるもんだと言わんばかりに彼の身体を痛めつける。

 それを見ていた真由は少し彼に同情した。

 「あの・・・私が聞きましょうか?」

 それを聞いた二人が明らかに疲れたような顔をして、彼を手放した。

 「あの・・・あなた達を動かしている女性が居るはずですが、その人の場所を教えてくれませんか?」

 真由が優しく声を掛けると、ボロボロになったヤンキーのリーダーが涙を流しながら、土下座をして、答える。

 「ひぃいい。すいません。すいません。お、女なら・・・あの女なら、この先のフェアリーって言うクラブに居ます。そこに行けば、誰でもやらせてくれるって言うんで」

 「たかだか、セックスをしたぐらいで、こんな事をしでかしたのですか?」

 フェリスが呆れたように言う。

 「い、いや、なんか・・・あんたらに殴られるまでの記憶が曖昧で・・・」

 「そいつは操られているだけだ。自我など、奪われているよ」

 鈴丸が笑いながら答える。

 「鬼に心を支配されるっていうことはそういう事だ」

 鈴丸は適当に暴れている奴らを殴りながら、男が指さしたクラブに向かう。

 

 「聖剣のままにしておくには時間が掛り過ぎね」

 イオナは手にした聖剣を気にする。

 聖剣と言っても人間であり、勃起状態でしか聖剣でいられない為、刺激を適度に与えつつも流石にいつまでもこの形を維持するのは難しかった。

 「一度、戻して、休憩にしますか?」

 フェリスも聖剣を気にした。

 「ふむ・・・間に合わなないみたいだぞ?」

 鈴丸がクラブを見据えた。

 「あら・・・気配を感じたから・・・出て見たら」

 姿を現したSM嬢のようなボンテ―ジファッションの女が現れた。その顔を見て、フェリスと真由が驚いた。

 「あ、あなたは・・」

 その言葉にイオナが「知り合いか?」と尋ねる。

 「えぇ・・・我が学院の姫騎士であった者です。名前をルリ」

 フェリスは怒りに満ちた表情でルリを見た。

 「ルリ・・・手練れの姫騎士か?」

 イオナは聖剣を構えながらフェリスに尋ねる。

 「私の次ぐらいに・・・腕があると判断してもいいです」

 「そうか・・・厄介だな」

 イオナは冷静にフェリスから離れた。

 「真由、散開しろ。固まっていてはやり辛い」

 鈴丸は真由にそう告げる。4人の少女は互いに間を開けて、目の前のルリに刃を向ける。

 「ははは。肝心の聖剣が・・・少し、垂れ気味じゃないですか?お姉さま方のテクじゃ・・・堅くさせ続けるのは困難ですかねぇ」

 ルリはヒールの高い革ブーツを鳴らしながら、モデル歩きで前に出て来た。あまりに自信に満ち溢れた感じに4人は警戒を高める。

 「鬼の癖に・・・自信たっぷりね」

 フェリスはルリに声を掛けた。

 「あぁ・・・負け犬が吠えるな。お前らのせいで、前の身体を失ったが・・・おかげで、もっと良い体を手に入れた。こいつは良い。前の身体なんか目じゃないぐらいに動く。それに・・・」

 ルリは周囲に立って居た男の股間を突然、掴んだ。その指は素早く動き、一瞬にして、若者を勃起へと誘う。

 刹那、若者は剣へと変化した。使いやすい大きさの両刃のミドルソード。

 「聖剣って奴な。まさか・・・悪魔が聖剣をと思うだろう?」

 突如、若者を聖剣に変えたのを見て、四人が驚いた。

 「ちょ、ちょっと鈴丸。鬼が人を刀に変えるなんて聞いてないわよ?」

 真由が鈴丸に喰って掛かる。

 「私だって、初めて見た。まさか、姫騎士の力を手に入れたと言うのか?身体を乗っ取ったぐらいでそんな・・・まさか」

 同じ悪魔でもある鈴丸さえも驚くしかなかった。それはこれまでにはあり得ない現象である事は間違いが無かった。

 「厄介よ。素手でも強いのに・・・聖剣なんて・・・」

 イオナは相手の強さを感じ取りつつも、静かに間を詰める。

 「ほぉ・・・見たところ・・・お前が一番の手練れか・・・お前を始末すれば、後は玩具みたいなもんだな・・・いや・・・悪魔が一匹、居たな。お前、私と共に好き勝手やらんか?」

 ルリはイオナは見ながら鈴丸に声を掛ける。

 「悪いな。私はお前みたいに鬼畜は好かんでな」

 鈴丸は軽く断り、仁王立ちでルリとイオナを見る。

 「フェリスさん。加勢をしなくても?」

 真由はフェリスに尋ねる。

 「まずは様子を・・・下手に加勢すれば、イオナ様が動きづらくなる可能性もあります」

 「な、なるほど」

 イオナはそれ聞きながら、柄を摩りながら、剣を更に硬直させた。

 「ははは。あまり摩ると、イってしまうぞ?」

 ルリは大笑いをする。それを隙だと見極めたイオナが飛び掛かる。

 剣が一閃する。その一撃は誰の目にも決まったと思った。

 「ははは。素晴らしい太刀筋だ」

 だが、それを喰らったはずのルリは笑った。

 そして、何かが空中から落ちて来た。それはイオナの聖剣の切っ先であった。彼女の聖剣は真っ二つに折れたのだ。そして、イオナの手から離れた聖剣は元の姿に戻る。身体を真っ二つに斬られた少年の姿に激しく飛び散る血がイオナを真っ赤に染める。

 「な、なんて・・・」

 フェリスと真由はあまりの光景に動けなかった。

 「軟弱なんだよ」

 ルリはそう言うと、固まったままのイオナを蹴り飛ばした。イオナは数メートル程、吹き飛ばされ、アスファルトに転がる。

 「ヘニャヘニャチ〇ポじゃ・・・私は斬れないよ」

 ルリは手にした聖剣を投げ捨てる。聖剣は元の姿に戻るが、大けがをしているのか、彼は悲鳴を上げながら転げ回った。

 「フェリスさん・・・今のは?」

 「イオナ様の一撃を聖剣で受け止めたんだ。受け止めた聖剣の方もかなりのダメージを受けたんだろう」

 フェリスは冷静にだが、緊張で微かに手を震わせながら、ルリに刃を向ける。

 「おいおい、ガチガチじゃないか?それじゃ・・・聖剣が形を維持できなくなるんじゃないか?」

 ルリは別の若者に抱き着きながら、その唇にキスをして、尚且つ、股間に這わせた手で更に股間を摩り上げる。すると今度は細長い刀身のスピアに変化した。

 「さぁ・・・姫騎士がここに集まっている若者に凌辱される様ってのも見物だねぇ」

 ルリは恐れる事なく、フェリス達に向かってきた。

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