第23話 禍々しい空気

 イオナは黒を基調とした修道服姿で街中を歩く。その隣には金髪碧眼の白人の少年が歩いている。まだ、あどけない顔立ちの彼はオドオドしながら、イオナに隠れるように歩く。

 「マリオ。そんなにオドオドしない」

 イオナは呆れたようにイタリア語で少年に言う。

 「だ、だって、イオナ・・・初めての日本だよ?」

 マリオは怯えたように同じくイタリア語で答える。

 「だから何だって言うのです?」

 「イオナは初めての外国で怖くないの?」

 「怖くなどありません。むしろ、この街全体に漂う悪魔の気配に吐き気を感じますわ。とても気持ち悪い」

 「う、うん・・・」

 「あなた・・・悪魔の気配が解ってないでしょ?」

 「そ、そんな事は無いよ」

 イオナに見抜かれて、マリオは慌てて否定する。

 「まぁ、良いわ。聖剣にそんな力は無いのだから」

 イオナは案内役として、一緒に歩くフェリスとその弟を見る。

 「フェリスさん。あなたは弟を聖剣にしているのでしたね?」

 そう問い掛けられ、フェリスは顔を赤らめる。血の繋がった弟を聖剣にしている事はあまり言われたない事だった。ただし、歴史的に見ても、別に異常な事では無く、よくあることだとは言われている。

 「血の繋がった者を聖剣にしている人はどうしてもそうして、後ろめたさを出すけど、強い力を持っている事は間違いが無いはずよ。もっと聖剣を信じなさい。私は幼馴染を聖剣にしてますけど・・・この子は昔から手を焼いているのよ」

 「イオナ、他人にそんな事を言わないでよ」

 「だったら、もっとしっかりしなさい。男の子でしょ」

 イオナに言われてマリオは落ち込む。

 「それにしても・・・禍々しい気配が街全体を覆うようね」

 イオナの一言にフェリスも頷く。

 街の彼方此方では喧嘩やトラブルが頻発しているようにも思える。これらは全て、悪魔が放つ悪しき気配に人々が当てられているからだ。

 悪魔の放つ気配は人々が抑え込んでいるはずの欲求や感情を刺激する。

 「さて・・・気配の真っただ中に居ては、悪魔がどこに居るかも解らないわね」

 イオナは困ったように周囲を見る。

 「フェリス。あなただけが頼みよ。元部下の顔をしっかりと見付けなさい」

 「はい」

 フェリスは必死に周囲を目をやり、知った顔を探した。

 「おっと、すげぇかわいいパッキンの子みっぃけ!」

 突然、若い男達がイオナ達を囲むように現れた。

 「なに?あんた達」

 イオナは怯える事なく、声を掛けて来た若者に応じる。

 「俺らと遊ぼうぜ。そんななよっちそうな奴らより楽しませてやるよ」

 「悪いけど、忙しいから他にいきなさい」

 イオナは軽くあしらう。

 「ああん?舐めるなよ。嬢ちゃん」

 若者はイオナの腕を掴む。他の若者もフェリスの腕を掴んだ。

 「へへへ。おれ、外国人女は初めてだから、どんな声で啼くんだろうな」

 涎を垂らしながら男はイオナの胸を無造作に揉む。

 「や、やめろ!」

 マリオが若者に掴み掛るが腹に蹴りを喰らい、その場に倒れ込む。

 「黙ってろや。なよっちいヤツが」

 他の若者がマリオやフェリスの弟をボコボコに殴り始める。

 「やめなさい!」

 イオナやフェリスは抵抗しようとするが、若者達に掴まり、身動きが出来ない。

 「おい、車を呼べ!女を連れて行くぞ!」

 若者がそう言うと、誰かが携帯電話で操作し、すぐにワゴン車がやって来た。

 「やめてぇ!」

 白昼堂々と二人の少女はワゴン車に押し込められ、拉致された。残されたのはボロボロになった二人の外国人少年だけであった。

 これだけの事があったにも関わらず、街は誰一人として、彼らに無関心であった。それらは全て、悪魔の気配に当てられ、人々の心が狂っていたからである。

 

 「ははは!すげぇ、胸がでけぇ!肌が白いぜぇ!」

 二人の少女を捕まえながら、若者たちは彼女達の身体を触りまくる。

 「放せ!放せ!このっ」

 二人は暴れ、若者の顔面を殴ったり、腹を蹴ったりする。

 「てめぇ、このガキがぁ!」

 若者は怒り、イオナの顔面を殴る。男の強い力で殴られ、イオナが吹き飛んだ。

 「おいおいゲンちゃん。顔は止めてくれや。せっかくの美人なんだからよ。歪んでたら、勃つのも勃たなくなっちゃうよ」

 「嘘つけ。どんなゲテモノでも勃つくせに」

 笑いが起きる。フェリスはすでに上着を剥ぎ取られ、スカートはまくし上げられ、パンツの中に手を突っ込まれていた。

 「いやいやいやぁあ!」

 フェリスは抵抗するも背後から羽交い絞めにされ、身動きは出来ず、男達の手は胸や股間に集中して弄っていた。

 イオナは一瞬、意識を失っていた。すぐに目覚めたが、その時には荒々しく、ブラウスが引き裂かれ、ブラジャーはズラされ、白い乳房と淡いピンクの乳首が見えていた。

 「おっほー!すげぇ、ピンクだぜ。ピンク!俺らが吸いまくって、真っ赤にしてやっからな」

 そう言った若者が乳房に吸い付く。あまりに強い吸い込みにイオナは痛みを覚える。

 「やめなさい!犯罪よ!」

 「黙れって」

 若者は乳房を噛んだ。それが激痛となりイオナは悲鳴を上げる。

 「てめぇは俺らの性欲処理をしていればいいだよ」

 若者は空いている右の乳房を鷲掴みにして、力いっぱい揉み上げる。

 それらはイオナに激痛しか与えない。彼女が悲鳴を上げ続ける中、別の若者がイオナのパンツを引き下げ。強引に彼女の秘唇に指を突っ込み、荒々しく、掻き回す。それもやはり激痛しか伴わなかった。しかしながら、その激痛を少しでも和らげる為か、愛液だけは染み出していく。

 「はははっ、こいつ、濡れてきたぜっ!」

 若者は濡れた指先を掲げ、笑いながら叫ぶ。

 イオナは屈辱だった。これだけ酷い事をされているのに自分の身体は男を受け入れようとしていると。

 「誰が最初だ!中出し禁止だぞ!」

 「マジかよ。中出ししてぇだろ?」

 「バカ野郎。一巡目はキレイなあそこに突っ込みたいだろ?」

 「ははは。ちげぇねぇ!動画を撮れよ。動画!」

 若者たちは口々に彼女達を犯す事を言い合う。

 二人の少女は絶望した。相手が普通の人間では姫騎士としての特別な力も出せないし、鍛え抜いた身体とは言え、このような状況では力のある男達に勝てる見込みなどなかった。

 「助けて!助けて!」

 幾ら姫騎士で性経験は多いとは言っても、心は普通の少女だ。このような形で犯されれば、その心は大きく傷つく。

 若者達は股間のチャックを開いたり、ズボンを下したりして、大きく隆起したイチモツを露わにして、今にも二人を犯さんとしていた。

 

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