第22話 鬼斬丸

 聖ルナリアル女学院

 生徒会室ではフェリスとその弟が深刻な表情で居た。

 「あの悪魔によって・・・騎士団は壊滅状態・・・我等はどうしたら」

 フェリスは絶望的になっていた。これまで最悪の事態を想定して、多くの騎士を目覚めさせ、育てて来たはずだった。だが、たった一人の悪魔がそれらを軽々と屠ったのだ。

 「姉さん・・・神に祈るだけでは事態は解決しないよ」

 弟は冷静にそう告げる。

 「ならば・・・どうしろと?あの悪魔に私達だけで勝てると言うの?無論、悪魔を討つ為にこの命が果てる事に異論は無いわ。しかし、我等の命を失っても尚、あの悪魔がこの地上に残るのだけは許せない」

 フェリスは怒りに震える拳を力強く握り直す。

 コンコン

 突如、ドアが叩かれる。

 「はい・・・どちら様ですか?」

 フェリスは冷静さを取り戻し、返事をする。

 「バチカンからの使いです」

 そう言われた時、フェリスの顔は真っ青になる。

 「バチカンから・・・何故?」

 フェリスがそう呟くと同時に扉が開かれる。そこには金髪碧眼で黒い修道服を着た少女が立っていた。

 「はじめまして。イオナと申します」

 彼女は優雅に挨拶をする。

 「何の用かしら?」

 フェリスは青褪めていた顔色をすぐに直し、強気な姿勢で尋ねる。

 「バチカンの星読みから・・・日本で強い悪魔が生まれたと」

 「星読みが・・・」

 「はい・・・それで、状況を確認する為に参りました。それで・・・」

 イオナは周囲を見渡す。

 「こちらに到着して、少し、街の状況なども確認しましたが・・・かなりの数の姫騎士が倒されたようですね」

 「すでにご存知でしたか」

 フェリスは隠し立てが出来ないと諦めた。

 「ここは壊滅した・・・そうですね?」

 イオナに詰め寄られて、フェリスは頷く。

 「解りました。バチカンに報告します。しかしながら、それほどに強力な悪魔が居るとすれば・・・一刻を争います。下手をすれば・・・日本は地獄と化します」

 イオナの言葉にフェリスは微かに震える。

 「今回、私も聖剣を持って参りました。バチカンが動くまでの時間稼ぎと悪魔の捜索を行います。フェリス・・・あなたは私の指揮下に入ります。よろしいですね?」

 「は、はい」

 フェリスは困惑した表情で受け入れた。


 その頃、寝室で二人にされた俊樹と真由。

 肌と肌が触れ合い、互いの初めてを分け合った。

 全てが終わり、興奮と脱力感。

 真っ白なシーツに着いた血と白濁液。

 互いに見つめ合う。

 「あ、あの・・・」

 俊樹は何かを言いたそうにする。

 「解っています・・・から」

 真由は恥ずかしそうにそう呟く。

 その時、俊樹の身体の中に何か熱い物がこみ上げる。

 刹那、俊樹の股間が輝き出す。

 「な、なんだ・・・」

 驚く二人。

 「な、何が・・・」

 真由は驚きつつも招かれるように俊樹の輝く男根に手を伸ばす。

 指先が触れた時、俊樹の男根はピンと反り返った。

 「こ、これは」

 真由はそれに驚きながらも更に手を伸ばし、男根を掴んだ。

 その時、俊樹の身体がまるで松明のように燃え上がり、一瞬にして姿が変化した。

 それは金色に輝く、一本の日本刀へと生まれ変わったのだ。

 「こ、これは・・・」

 その時、障子が開かれる。

 「それこそ・・・我が家に伝わる宝刀・・・鬼斬丸」

 真由の母はそう言い放つ。

 「お、鬼斬丸?」

 真由は驚きながら母を見上げる。

 「そうです。巫女の処女血を受けた者だけが変化する事が出来るとされる伝説の刀。鬼斬丸。この世の全ての鬼を斬る事が出来るとされる伝説の刀。その金色の刃こそ、その証・・・真由・・・あなたは伝説を手に入れたのです」

 「で、伝説」

 真由は手にした刀を見上げる。

 金色の刃は長く、そして、薄い。だが、決して、それは折れそうな雰囲気など微塵も感じさせぬほどに鍛え抜かれた感じだ。

 「これなら・・・勝てる気がする」

 真由は心の底から自信が溢れるのを感じる。

 「ふふふ。その自信は何も鬼斬丸を手に入れたからではありません。あなたがすでに処女では無いという事の現れです」

 「しょ・・・」

 母の言葉に真っ赤になる真由。

 「そうです。巫女は処女が当たり前。それは神の前においての話。我等は色欲の化け物。鬼を退治する一族。純潔など、人間の根源とする欲求の前において、無駄。理性の先にある生への渇望こそが我等の真の力となるのです。その為にはあなたはまだまだ、俊樹さんと愛を育まなくてなりません。愛欲を満たせば、満たす程にあなたと俊樹さんは強くなる。戦うために愛し合うのです」

 母は強く、叫んだ。

 (愛し合うって・・・セックスするって意味なのかな?)

 真由は恥ずかしくて、それを問う事が出来なかった。

 

 「鬼斬丸か・・・久しぶりに実物を見た。なるほど・・・そうして出来ていたのか」

 そこに鈴丸がやって来た。彼女は金色の刃を眺めながら興味深げにしている。

 「真由、とりあえず、この鬼を討ちなさい」

 母は即座にそう告げる。

 「おいおい!私はお前等の仲間じゃろ?」

 鈴丸は慌てて、飛び退く。

 「鬼は鬼!」

 母は強く言い放つ。

 「お、お前、鬼じゃな?」

 鈴丸は驚きながら、母に向かって叫ぶ。

 「お母さま、鈴丸は仲間です。まずは凶悪な鬼を討たねばなりません」

 真由は刃を愛おしく舐め、俊樹を刀から解放する。

 「そうですか・・・油断はなりませんよ」

 母はそう告げると踵を返し、去って行く。

 「助かった。お前の母は怖いな」

 鈴丸は驚きながら胸を撫でおろす。

 「母も若い頃はかなりの手練れだったと聞いてます」

 真由は静かに服を着る。俊樹も慌てて、パンツを履いた。

 「よし・・・準備が出来たら、向かうぞ。さっきから嫌な胸騒ぎしかしない」

 鈴丸は少し顔色を悪くしながら告げた。

 

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