第20話 わたわたわたわた・・・なに、このつおいの?
手負いのフェリスの案内を受け、タクシーで真由達は姫騎士が全滅した現場の近くまで到着した。
「さすがに大量死傷事件現場。警察もマスコミもウロウロしているわね」
フェリスは集まってきている人々を見て、呆れたように告げる。
「この人混みに紛れて、逃げ出した可能性は高いか・・・だとすれば、素体はお前の仲間かもな」
鈴丸の言葉にフェリスは彼女を睨む。
「そうだな。可能性は高い。鈴丸・・・だとすれば、人と鬼の見極めは出来るか?」
「そうだな・・・低俗な悪魔なら簡単だが、我々ぐらいになると気配を消す事も余裕だからな・・・解らないかもな」
「解らない・・・なるほど・・・再び、仲間と出会っても・・・安易に信じる事は出来ないと言うわけか」
フェリスは覚悟を決めたように呟く。
「まぁ、そう気負うな。そもそも、急造とは言え、姫騎士が束になって、敵わなかった相手だろ?今のお前達では勝てない。特に真由と俊哉・・・お前らはダメだ」
突然、鈴丸にダメ出しをされて、真由が眉間に皺を寄せる。
「何がダメなんですか?私だって、しっかりと装備を整えれば、やれます」
「装備・・・違うな。お前らがやらないといけない事は姦通じゃろ?」
「なっ?」
真由が真っ赤にして驚く。それにフェリスが訝し気に真由を見た。
「まさか・・・本当にまだ、その男と性校してないのか?」
「あっ・・・そ、そんな・・・な、無くても、当家の術があれば・・・」
真っ赤にしてしどろもどろになる真由。
「アホか。まともに繋がってもいない巫女と御刀に力が宿るはずが無いだろ?まともに情交を重ねた事も無いような奴らの力で鬼が斬れるとか。舐めてるのか?」
鈴丸が不機嫌そうに言う。
「し、しかし・・・性交なんて・・・急に・・・」
「お前は黙っておれ。俊哉!真由とやりたくないのか?」
突然、鈴丸に問われて、俊哉も驚き、固まる。
「真由は派手さは無いが、器量はなかなか。男なら勃つは勃つんだろ?面倒だから、お前ら、ちょっと、やって来い」
「そ、そんな簡単に言わないでください!」
真由が怒鳴る。
「五月蠅い奴だな。いつまで膜を張っているつもりか?処女が大事なのはまともな神社の巫女だけじゃ。鬼斬りの巫女はやってナンボだろ?」
「恥ずかしい事を言わないでください。そもそも、まるで貞操観念が無いみたいなことを!」
「貞操って・・・鬼斬りの巫女が笑わせる。男を惑わせ、生命力を漲らせるのがお前らの仕事だろ。とにかく、お前ら、やって来い。とっとと、やって来い」
鈴丸に背中を押されて、真由と俊哉はその場から放りだされた。
「私はこの姫騎士の娘を回復させておくからな。それに色々と準備も居るだろうからな」
鈴丸は傷付いたフェリスと共にタクシーでどこかに行ってしまった。
残された真由達は互いに恥ずかしそうに見つめ合う。
「あの・・・真由さん・・・い、嫌なら・・・別に」
俊哉がそう言うと、真由はキッと彼を睨む。
「嫌?私が嫌だと?冗談じゃないわっ!行くわよ!」
真由は俊哉の手を引いて、ズカズカと歩き出す。その勢いに俊哉は困惑しながら、ただ、引っ張られるだけだった。
新しい身体・・・。
ボロボロになった身体を捨てた。
学生証を見る。
「これが新しい名前か・・・悪くない」
彼女は手にしたナイフで一人の女子高生を殺害していた。彼女の制服を剥ぎ取り、着る。
「ふん・・・まぁ・・・かわいらしさは無いけど、まぁ、女子高生らしいわね」
少し気に入らないスカート丈を腰で折り曲げて、膝より上にした。
「さぁて・・・かなり力を使ったから・・・補給をしないとね」
ペロリと舌を出して、唇を舐めて、彼女は路地裏から立ち去った。
バス事故として、多くの死者が出てしまった学園には関係者が集まっていた。
死んだ多くの者に身内は居ない。ほとんどが孤児として、学園に繋がる児童養護施設などで育った者達だからだ。
そこにフェリスの姿があった。
彼女は体育館に集められた死体を眺める。学園の宗教関係者が彼らの為に祈りを上げている。
「ふん・・・辛気臭いな。気分が悪くなる」
鈴丸は祈りの言葉に吐き気を覚える。
「死者に対しての不敬は許しませんよ」
フェリスはそんな鈴丸を睨む。
「解っているわ。正直、我等に死なんて概念はあまりないからな」
「悪魔は死なないと?」
「そうだ。お前らに滅せられても、それはこの世界から一時的に存在が消えるだけで、意識は霧散し、やがて、時と共に再び、元に戻る。それを幾度も繰り返してきた。それが我等だよ。お前達とは違う」
「滅亡しない・・・そんなのを長年、相手にしてきたのですか・・・」
フェリスは嫌そうに言う。
「ははは。もし、私達が滅亡する時はお前ら人が滅亡した時だ。我らはお前らの影みたいな存在だからな」
「嫌な影ですこと・・・それより、行方不明の者が何人か・・・いますね」
「やはりな。その中に・・・悪魔が選んだ新しい素体が居る。そいつらの顔写真とかはあるのか?」
「用意させてます。ただ、彼女たちは相当な手練れの姫騎士ばかりですよ」
「厄介だな。素体の強さは当然、悪魔の力になるからな」
「では・・・早めに始末しないと・・・」
「それこそ、軍隊でも動かして、街一つ、戦場にする覚悟で挑まないと・・・やれないぞ?」
鈴丸の言葉にフェリスの表情は強張る。これだけの犠牲を払っても倒せなかった相手が更に強くなるのだ。それは恐怖でしか無かった。
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