第18話 総攻撃

 体育館の中、300人の男女が集められた。

 13歳から18歳までの男女。女は露出の多い甲冑を身に纏っている。

 「諸君・・・我らの使命が果たされる時が来た。我等は悪魔を討つ為に今宵・・・全ての戦力を投じる。姫騎士53名。聖剣50本。姫騎士見習いが59名と聖職者達。今度の悪魔はかなり手強い。心して掛かって欲しい。この機を逃せば、勝機は無いと思え」

 壇上に立ったフェリスも煽情的な露出の多い甲冑姿で雄々しく皆に言い放った。

 彼女達はそのまま、用意されていたバスに乗り込む。

 

 はぁはぁはぁ

 ベッドを軋ませ、肢体を弾ませる真知子。

 彼女に馬乗りをされている男はすでに限界を超えているのか、目を血走らせ、嗚咽を漏らしていた。だが、それでも股間は悪魔の力によって、堅くなり続け、限界まで、精液を吐き出し続けている。

 「はぁ・・・はぁ・・・なんだぁ。こいつも死んじゃったか」

 真知子は飽きたように男から降りる。衰弱し切った男はすでに絶命をしていた。

 「やはり聖剣の生命力を味わうと・・・癖になるわぁ」

 真知子はシャワーを浴びて、制服に着替えた。

 「じゃあ・・・力も増しているところで・・・あの鬼を探して潰してやろうかしら」

 笑みを浮かべながら真知子はマンションの扉を開いた。


 フェリスは連絡を待っていた。

 すでに真知子の住処の調べはついていた。すでに彼女を監視する体制は整っていた。

 「フェリス様、監視から報告。目標が家を出たそうです」

 「そうですか・・・」

 フェリスは深く考え込む。

 「総員、戦闘準備。結界を張りなさい」

 数人の術者によって、結界が張られた。それは強い力が漂い、その中に閉じ込められた真知子も圧力を感じる。

 「ちっ・・・こいつは・・・本気だね」

 真知子は相手の力を察したようにスカートの中に手を入れ、ピンク色のそれを抜き出した。それは黒く細い刃を伸ばした。

 「総員!攻撃せよ!」

 突如として、鎧姿の少女達が彼方此方から姿を現す。

 「なるほど・・・姫騎士をこれだけ集めたな」

 真知子は彼女達を一瞥すると刃を舐める。

 飛び掛かる片手剣の姫騎士。だが、真知子はその刃を軽々と黒い刃で受け止め、跳ね返す。押し返された姫騎士の首を狙って、黒い刃が突き出されるが姫騎士は左手の盾で何とかそれを防ぐ。

 「ふんっ!鎧を着た姫騎士は厄介だね」

 真知子は続けて襲い掛かって来る少女のスピアを紙一重で躱しつつ、下から掬い上げるように彼女を斬る。その刃は姫騎士の白い胸当てを裂く。姫騎士はそのまま、地面へと転がる。だが、それを無視して、次々と姫騎士が真知子に刃を向ける。

 「ちっ!しつこい!」

 真知子はそれらを全て、防ぎながらも、あまりに手数が多い為に攻撃に転じる事が出来なかった。

 「押せ!押せ!」

 フェリスは自らも剣を持ち、姫騎士達の攻勢に混じる。その周りにも術を唱える者や槍やアーチェリーを構える者も居る。

 「邪魔だぁあ!!!皆殺しにしてやるぞっ!」

 真知子は怒り狂い、姫騎士の1人を殴り飛ばす。

 ドン

 刹那、彼女の右肩を一発の銃弾が貫く。

 「うっ」

 真知子は穴の開いた右肩に左手を当てる。

 「貰ったぁあああ!」

 フェリスはサーベルを突き出す。その鋭い一撃は傷付いた真知子は躱す事が出来ず、その腹を貫く。

 「うぁああああ!」

 貫かれた真知子は悲鳴を上げながら貫いた刃を掴む。

 「くぅ・・・銃だと?」

 真知子は焦点の合わぬ目で拳銃を構えた一人の姫騎士を見た。

 「ふふふ。日本だから、銃が無いと思った?悪いけど・・・悪魔を倒す為ならどんな道具でも用いるわ。銀の弾の威力は思い知ったかしら?」

 フェリスは苦しむ真知子を間近で見ながら笑う。

 「ふん・・・姫騎士風情が・・・この程度で勝ったと思うのが甘いわぁ」

 刹那、真知子は額に汗の粒を浮かべながら、フェリスを振り払うように投げ飛ばす。サーベルが腹から抜け、フェリスは数メートル、吹き飛ばされる。

 「くぅ」

 フェリスが痛みに堪える間に、銃声が聞こえた。

 「ここで終わらせるっ」

 フェリスは立ち上がった時、真知子は銃を構えた姫騎士の頭を左手で潰していた。飛び散る血。怒りに満ちた真知子の姿はまさに悪魔だった。

 姫騎士達が次々と飛び掛かる。刃は確かに真知子の身体を傷付けるが、その度に姫騎士が倒される。真知子の刃は軽々と姫騎士の身体を裂き、聖剣を折った。

 「皆殺しだぁアああああ!」

 真知子は怒りに満ちていた。自らの身体もボロボロで右腕はもげたにも関わらず、痛みを感じないように暴れる。姫騎士達も死を恐れずに飛び掛かる。聖剣を持たぬ者も槍や弓で襲い掛かる。


 1時間程度の戦闘の中で真知子はまだ、立っていた。残った姫騎士はフェリスを含め、5人。その他の者も14人であった。そして、皆、ボロボロだった。フェリスの身体を守る為の銀色の鎧も壊れ、落ちかけていた。

 「はぁはぁはぁ・・・化け物め」

 フェリスは刃こぼれしたサーベルを尚も構え、真知子を狙った。

 真知子は右腕を失い、左手に折り畳みナイフを構えるの精一杯になっている。

 「小娘共が・・・ここまでやられたのはどれぐらいぶりだろうねぇ・・・誰も生きては帰さない」

 真知子は怒りで表情が崩れていた。

 「フェリス様・・・奴はまだ、力を残しています」

 ルリがフェリスを庇うように前に出る。

 「お逃げください。そして、本国に応援を呼び、戦力を整えてください」

 ルリの言葉にフェリスが驚く。

 「何を言っているの・・・」

 「フェリス様は由緒正しい姫騎士の末裔。悪魔とまともに戦えているのもここではフェリス様だけです。もし、あいつを倒せるとするならば、フェリス様の力は必要です。ここは私達が足止めをしますから・・・」

 ルリはニヤリと笑みを浮かべながら、真知子を見詰める。

 「おいおい・・・私をこれだけ怒らせておいて・・・逃げれると思っているのか?」

 真知子は怒りを露わにしながら、ルリに近付く。

 「ルリ。私がやる!」

 フェリスが前に出ようとした時、突然、背後から身体を掴まれる。

 「フェリス様・・・申し訳ありません。ここから離脱します」

 「なっ!」

 フェリスは姫騎士に捕まれたまま、その場から離脱する。

 「フェリス様・・・ご無事で・・・お前の相手は・・・私だよ」

 ルリは向かって来る真知子に刃を向ける。

 「小娘がぁああああ!一丁前にぃいいいい!生意気なんだよぉおおお!」

 怒り狂った真知子は荒々しく左手の刃を振るった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る