第1章 魔獣討伐
第1章 1『非日常への一歩』
夢から覚める時はいつも水から浮くような感じがする。だんだん意識が覚醒していき、重い瞼をゆっくりと開ける。そこにあるのは見慣れた天井。目覚ましの音がやけにうるさい。
(耳障りだ)
そう思い目覚まし時計に手を伸ばす。しかしギリギリのところで手が届かず、バランスをくずしベットから落ちてしまった。
「痛ってぇ」
そうつぶやき上半身を起こす。さっきの振動でパっちり目を覚ました。そして、ドアの方に向かっていき、部屋を出て階段を降りていつもの様に顔を洗い、トーストを食べて、学校に行く準備をする。
今は朝の六時半とまだ早いが、硬式テニス部の朝練は七時十五分からととても早い。そのため家から三十分はかかる高校は、向こうで体操着に着替えるのも含め六時三十五分にはでないとならなかった。
そして、やっとの事で制服に着替えて、バックを持ち家を出た。六時三十三分に。
こんな普通の日常とは、いつまでも続くと思っていた。そして珍しくもない、人生を送るのだと、満員電車に揺られながら河野茂は、考えていた。
そんな今日が、非日常への始まりの一歩だとも知らずに。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
高校の最寄り駅で降りてからは、歩いて学校へ向かう。駅の改札を出たときに左からいきなり
「おはよう」
と挨拶された。左を見るとそこには同じ硬式テニス部に所属している柊 史也であった。同じ高校二年生で一年生の時から一番気があっていた友人だ。
そんな友人に「おはよう」と返し一緒に並んで歩き始める。ちなみに学力は、同じくらいで、運動は、自分の方が出来るが、テニスだと同じくらいかと茂は、自分のことを史也と比べ評価している。
そんなことを思いながらいつもの様にアニメの話やゲームの話、宿題の話などで盛り上がっていた。
しばらくしたら史也との話が一回終わり沈黙が生まれた。次の話題を考えていると史也が急に自分に
「なぁ、天使に興味あるか?」
そう笑いながら尋ねてきた。
「は?どういうことだよ」
当然の返答だ。誰だってこんなことを突然聞かれたらこう答えるだろう。しかし史也は
「興味あるか?」
とまた聞いてきた。仕方なく茂は、話に乗ってやろうと思い
「もちろん興味あるぜ。だって、天使って可愛いじゃん」
そう軽く答えてやった。
そしてこの軽口がこれからの茂の運命を大きく変えることになるなどこの時の茂は、知る由もなかった。
その返答をした途端、史也は急に真顔になってら、すぐ満足したような顔になって、
「その返答を待っていたよ」
と言ってきた。その瞬間茂は、身の前が急に白い光に包まれたような感じがした。そしてゆっくりと上へ引っ張られていくような、そんな奇妙な体験をした。そして意識は遠ざかっていった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
意識がゆっくりと覚醒していき瞼を上げるとそこには見慣れない天井があった。そしてとてもふかふかのソファーに座っていることに気づいた。
辺りを見回すと今いる場所がどうやら家のようでとても広いリビングのような場所にいることが分かった。広いリビングの上にはシャンデリアがぶら下がっていて、周りを見ると絵画などが飾っているのかと思ったらそうでもなく壁には、そこら じゅうにドアがあった。どうやらとてつもなく広い屋敷だと思った。
そして、そこまで理解したところで茂は、何故自分がここに居るかを考え始めた。
確かいつもの様に起きて朝練に向かっていき駅で史也と会った。いつもの様に他愛のない話をしながら学校に向かっていき···その後がなかなか思い出せない。
これ以上考えると頭が痛くなりそうなので、やめることにした。幸い身体は自由だ。少し待ってようと思ったそのとき、茂のちょうど真後ろに位置するドアが開いた。
そして入ってきたのは、白いスーツを見にまとい、その両手に、盆を持っているかなり顔の整った男だった。
ちなみにその盆には、カップが二つ並べられてお
り、湯気がもうもうと出ている。淹れたてのよう
だ。
「目が覚ました気配がしたからやっぱりそうか。河野 茂君、君に少し話があるんだ」
そう言って近ずいて来る。
そう、これこそ河野 茂の非日常への第一歩だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます