第3話 鑑定

「圭太で……いいんだよね?」


魔法を消して呆然としているとドアから母親が顔を出していた。

母親は変わっていない。相変わらず座敷童子みたいな雰囲気だ。


「そう……だけど」


一瞬間があったのはルナフの記憶があったからだ。でも今は間違いなく自分だ。記憶があるだけで人格に変わりはない。


「スマホでニュース見たの?」

「ついさっき」

「大丈夫?」


大丈夫って聞かれたら大丈夫じゃないだろtsしてるし15歳から12歳に若返っているし魔法使いになっているしコスプレみたいな格好しているし声変わっているし母親が意外と落ち着いているのが怖いよ!


せめて


「あんた誰!」


とか言ってくれよ!なんで落ち着いているんだ!


さっきまで状況が読み込めていなかった奴が言うのもおかしいかもしれないけど


「夜中にね、圭太の部屋から尋常じゃない声が聞こえてお父さんとお母さんで入ってみたら体が女の子になっていく途中で。だからその体が圭太だっていうのはわかっていたの」


でも、中身がどうなのかは分からなかったというわけか


にしても、どんだけデカイ声出していたんだ?


「救急車呼ぼうとしたけど繋がらなくて、おかしいと思ったけど。服も変わったら普通に寝ているようになったから良かったけど」


母親が俺の体……つまりロリ魔法使いルナフの体をペタペタ触ってくる。腕を上げられたり口を開けられたりされた。


「痛いところない?」

「うん……起きる時痛かったけどもう大丈夫」

「じゃあ行こっか」

「どこに?」


じゃあってなんだよ。今の流れで出かけることになるか? 


行くとしたら医者か?

医者に行ってもお手上げだし同様にオリキャラとなった覚醒者達で溢れていそうなんだが。


「え?ニュース見たんじゃないの?」

「見たけど途中までしか」


今気づいたけど母親よりも小さい。ひょっとしたら12歳の妹よりも小さいかも


「世界が変わったと同時にね、市役所とかに鑑定装置っていうのができたらしいの、変わった人は全員行くようにって政府が記者会見で言っていたよ」


なんか異世界にありそうなものがこの世界に出現している。


なろう異世界転生あるある


鑑定装置やったら

今までにないほどのステータス持ち

装置が壊れるほどのステータス持ち

鑑定では測定できないイレギュラーなステータス


さしずめ、市役所は冒険者ギルドか


「鑑定って何が出るんだ?」

「ニュースの通りならその体の名前と元の名前、年齢も同じ、職業、シンクロ率」


シンクロ率? エ◯ァか?


「にしてもよくスラスラ答えられるね」

「圭太が起きてから大丈夫なように情報収集はしっかりしているから」


カーチャンありがとう!


************

居間には家族が集合していた

今日は土曜日だったから親父もいた。妹も姉も


「えっと……圭太でいいんだよね」


初めに姉が聞いてきた。さりげなく写真も撮っている。


「うん」


「むっちゃ受けるんだけどwジジイが女の子になっているんだけどw」


反抗期真っ盛りの妹は馬鹿にしてくる。昔はお兄ちゃん! って可愛かったのに。今じゃお姉ちゃんか。背丈だと今ではこちらの方が小さいから今日から俺が妹か?


「綾香!やめろ!圭太だって困っているんだぞ!」


それを止める父親


俺以外いつも通りだった


************


近くの鑑定場は市役所だった。

そしてその辺り一帯が異世界だった


魔法使いたくさん、剣士たくさん、美少女たくさん、イケメンたくさん


エルフとか背中に翼が生えた人もいる


「最後尾はこちらです。免許証などを用意してお並びください、小さなお子様をお連れの方以外は列から外れてください」


職員さんが拡声器を持って空を飛びながら呼びかけている。


ブルータス、お前もか!


職員さんは箒にまたがってトンガリ帽子という古くからのイメージである魔女の姿だった


「小さなお子様だって、どうする?」

「一人でいいよ」


たしかに見た目はお子様だよ! 中身は15歳だぞ!


************


二時間待った


鑑定装置は1つしかなかった。一つしかないのに2時間で済んで良かったと思うべきなのだろうか?


俺の前にはあと5人並んでいる。


「やっぱりオリキャラだ」


今鑑定している奴がそう呟いたのが聞こえた。そいつは異世界の冒険者風の格好していた。


「俺が……最強か」


うわぁ、痛い奴がいる。


まさか現実にいるとは思わなかった。変に力を持つと人が精神的に変わってしまうこともあるから


「チートで倒してハーレム作って……」


ブツブツ言いながら帰っていく。背中を丸めて下を見ながら歩いていく。そいつが俺のことをジロジロと見てくる。その目は何というか獲物を見る目というのか? 

前の覚醒者に隠れるように立ったら舌打ちして去っていく。


「キモ」


寒気がした。吐き気がした。そして自己嫌悪になりそうになった。昨日までもしかしたらあんな目で女子を見ていたかもしれないという恐怖に襲われそうになる。ハーレム願望があったわけではないがこれでも野郎だった。気になる女子とかいて目で追いかけたりしたこともあった。流石にあそこまで酷くはないと思いたい。


それと、現実的に日本でハーレム作れないでしょ。ハーレムの中でお気に入りが出来て差別が始まりそうだしハーレム内で虐めとか起きそうで怖いし。一夫多妻を見たことも経験もしたこともないから完全に偏見だけど。


それに最強とか言っていたけど『なろう』とかの影響でチートキャラ大量にいそうだな。

俺もひょっとしたらその一人になっていたかもしれないけど


オリキャラの中で一番のお気に入りはお気に入りだから強くしすぎたんだよな

ルナフの師匠で魔女


師匠は誰にも負けない……、世界で一番強いんだから


ってまたルナフになっていた


************


鑑定装置は水晶のような形だった

直径20cmといったところだ


「では手をかざしてください」


職員が指示する

言われた通り手をかざすと


名前: 松村 圭太 / ルナフ・オーロラ

年齢: 15歳 / 12歳 不老

職業: 学生 / 氷の魔法使い

シンクロ率: 46%


このように水晶内に浮かび上がった。市役所が更にファンタジー感増し増しになった。


鑑定結果は設定どおりだった。

そういえばルナフって不老にしたんだった


「はい確認できました」


渡しておいた保険証を返してもらい帰る


《歩いて帰るつもりか! 魔法使いなら箒で飛びなさい!》


でたバーサーカー……じゃなくて

師匠、私に何か用ですか?


《用があるから呼んだに決まっているでしょ! とりあえず竹箒とランタンを買ってきなさい!》


箒はわかりますけどランタンは何に使うんですか?


《箒につけるのよ、夜中にランタン無しで飛んだら危険でしょ》


たしかに


まあ帰ってからにしますね。

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