見切り発車で始めた話が方向性が決まって区切りがつくまで
第2話ロリ魔法使い
激痛で目を覚ました。体中の関節、骨、筋肉が焼けるように熱く、インフルエンザにかかった時のようなダルさがあった。呼吸もまともにできない。汗で体中がベタついている。体を動かすことも声も出すこともできず、虫のように蠢き呻き声しか出すことができない。
一体、俺の体はどうなってしまったのだ?
真っ先に浮かんだのがインフルエンザだ。今は6月で季節外れだが流行はいつ来るかわからない。新種で夏場に流行するタイプが現れたかもしれない。だが、昨夜のニュースではインフルエンザの話は無かった。もしかしたら俺が第一感染者で流行の先駆けなのか?
『流行だって最初は1人だけですから』
ついでに近くのの洋服屋のポスターを思い出した。
取り敢えず家族に動けないことを伝えようと枕元のスマホに手を伸ばしした時に気がつく。インフルエンザの割には思考がはっきりとしていること、そして先程までの激痛がなくなっていることに。起きるのも辛かった倦怠感も無くなっていて先程の感覚が幻だったのでは疑ってしまう。
試しに起き上がってみた。痛みもなく立ち上がることもでき、肩を回してみたりしても問題なかった。
視界の高さ以外は
普段よりも20cmぐらい違う。
背中が曲がっているのかと思って背筋を伸ばすが変わらなかった。不思議に思いながらも取り敢えず枕元に置いてあったスマホを手に取り時間を見る。そして、電源がつく前の黒い画面に一瞬にありえないものが見えて内カメラを使って確認してみた。
そこに写っていたのは、
しばらく観察してからようやく気づく。俺が中二病時代に書いていた黒歴史ノートに登場する主人公の弟子、ロリ魔法使いのルナフにそっくりなことに。
「一体何が……?!」
声もルナフを想像したものへと変化していた。
スマホに写っている自分はどう見ても自分が作り出したルナフだ。12歳で身長にコンプレックスを持ち、師匠の胸を妬ましく思い、作中では大したことのない氷の魔法使いだ。服は彼女が魔法使いになる前に着ていたお気に入りの水色のワンピース。師匠に初めて買ってもらった服だ。ワンピースをたくし上げると女性用の下着が現れる。
ここまで勢いできたが流石にこの先を確認するのは躊躇った。これより先を確認しても結果は悲劇的なことになるだろう。もしも付いていたとしたら幼女の顔をした幼児になるということだ。付いていないとしたら
確認してみた。
ない。
よし、これは夢だ。
もう一回寝よう、お休み。
************
夢じゃないと認識したのは眠れなくてまさかと思いながら頰をつねったり頬を両手で叩いたあとだ。
とりあえずベッドから出た。足も細く爪も綺麗に磨かれている。
立つとやはり身長が縮んでいた。
元の身長が158だった。
設定通りなら身長は140cmのはずだ。視線の高さが20cm縮んでいるから設定どおりの高さになっているのだろう。
ジリリリリン
着信音を黒電話に設定しているスマホが鳴る
画面には悪友の名前があった。
「もしもし」
先ほど確認したが自分の喉から出ているとは思えないロリボイスだ。
『ブールータス、お前もか!』
電話越しに悪友が突っ込んでくる。このネタを知っている同年代はどのくらいいるのか?
「お前もかって声が変わっていることか?」
『声が変わっているどころか姿変わっているだろ』
「なぜ分かった?」
『ニュース見てねえのか?』
「まだ起きたばかりだボケェ」
『……姿変わっている割には意外と落ち着いているな』
「寝起き&状況が読み込めないからだ」
『とにかくニュース見ろ』
電話を切るとネットニュースをみた
Yasoo!のニュース欄は異様だった
『世界滅亡の日か!?』
『友人が魔法使いに!?』
『シャ◯シャ◯木に登る』
『街中に燃える人出現』
パンダ以外まともなのがない
俺はその中の1つ
『友人が魔法使いに!?』をクリックする。自分の状況に似ているからだ。
『今日零時に世界が変わったのはご存知だろうか? 一部の人が一斉に体の自由がきかなくなり激痛を訴え始めたのだ。私の友人もその1人だ。昨晩友人と飲んでいた時、突然友人が倒れ、呻き声を発した。尋常じゃない苦しみ方ですぐに119に通報したが驚くことにセンターに通じなかったのだ。回線が混んでいることは後にわかったがその時は混乱した。電話をしまい、もう一度友人を見ると体が変わっていく途中だった。背が伸び、顔の形が変わっていく。十分ほどでその変化は終わった。そして友人だったのが起き上がると『何があった?』と聞いてきた。起きたことを正直に話すと何か納得したように頷くと右手を開いた。その上に緑色に輝く魔法陣が浮かんでいた』
そこまで読んで俺は自分の左手を開いた。設定上魔法使いだから魔法が使えるはずだ。見習いとはいえ簡単な魔法使いなら主人公である師匠から教わっている。
《まず魔力を感じるところから始めよう》
うん、師匠が言っていたようにまず魔力を感じよう。
《私たち魔法使いは魔力核と呼ばれるものが体内にある。魔力核とは魔力を生み出すものであり、人によって違い目だったり心臓だったり、なんもないところにもある。》
《魔力を感じたかい? 次はそれを動かしてみよう。意識すればすぐに動かせるはずだ》
師匠が言っていたように意識するとすぐに冷たいものが一部が動き出す。脊椎から腕へと移動させて、引き返してお腹を通って足を通って。
《うん、動かせているようだね。そしたらそれを手に持ってきて。どちらの手でもいい。両手は難しいから片手にしなさい》
左手に魔力を持ってくる
《前に教えた魔法法則に沿って使いたい現象を作り出しなさい。呪文詠唱?そんなの初級どころか上級までいらないよ。魔法のイメージを高めるために昔の魔法使いが始めたけど今の魔法使いは発動するためにかかる時間を誤魔化すために使っているからね。詠唱したから魔法が発動するなんてないからね。初級魔法で詠唱しているのは三流魔法使いだから》
教えてもらった魔法法則を思い出す。安全のために防御魔法にしよう。攻撃魔法を使ったら壁に穴が開く。
魔法法則に沿って魔力を練ると左手の上に魔法陣が浮かぶ。魔法陣の色は青銀色に輝いていてゆっくりと回転している。
《うんうん、初めてにしては上出来だ。そしたらその意識を解放しなさい。防御……障壁だから持続できるように魔力を供給し続けることも忘れずにね。供給の仕方は障壁を意識するだけで大丈夫だから》
魔力を手から外に出すように意識すると解放され、目の前に1m四方の氷の膜ができる。
《薄いけど魔力を込める量によって硬さが変わるからね、今の強度ならパンチ一発、もしくは初級の弾丸系一発耐えられるくらいね。
魔法の発動は動、練、解だよ。初級魔法なら0.2秒以内に発動しなさい。私の一番弟子なんだから。わかった? ルナフ》
魔力の供給をやめると障壁は消え去った
我に返った。
思い出していたのはルナフが始めて魔法を使った時の師匠との会話だった。ルナフ視点のもので
俺の記憶とは別に記憶がある。
おそらく、ルナフの記憶が。
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