第24話 クリスマス
12月25日。今年は日曜日。街はカップルや親子連れで賑わっている。
そして空那は今、キラキラしたモールや星で飾り付けられたクリスマスツリー・・・の小さいやつが出窓に置かれたリビングで1人、黙々と勉強をしている。
「ここが錯角だから36°で、ここは90°だからぁ、、、。はあ?もう172°でもいいじゃん、三角形。固定観念は捨てる方向でいきましょー、、」
「っていうかさー、問題になってるんだから合同に決まってんじゃん。なんでわざわざ聞くわけ?」
「『証明しなさい』とか、なんで上から目線なんですかー?上から目線な人嫌いだわー」
訂正。黙々とではなかった。数学の証明問題を前に、もう文句しか出てこない。
もちろん数学が嫌いなことだけがこのイライラの原因なのではない。先程も言ったように今日は12月25日、クリスマスである。全国の映画館や遊園地、水族館ect...がカップルでにぎわう日だ。受験生とはいっても、1日くらいなら遊んでもいいと思うのだが、伊藤が成績的に余裕がないらしく、今年は出かけないことになったのだ。
「あー、もう嫌。休憩休憩。私は『
そう言って二階の自室へと戻り、世笑こと『この世は笑いに満ちている』の4巻を手に取ると、布団に寝転がる。
題名通り、笑いどころ満載のギャグ漫画である。Gが出れば素手で掴み、ガスを使うなと言われれば焚き火をする。
「スナオに親友認定されてるじゃん。マナ、どんまいww」
・・・。・・・。はっ!あ、えーと、炭で全身真っ黒になったスナオは、なぜか全く乱れていない長い黄色の髪を結びなおし、マナに握手を求めた。・・・ん?あ、違った。こっちじゃない。めっちゃ好きじゃん、だって?そ、そういうわけではない。ただの暇つぶしだ。最近は空那が問題集や参考書ばかり読むので、さすがに飽きてきたのだ。
えー、気を取り直して。
漫画のギャグがツボに入ってしまったようで、空那は文字通りお腹を抱えて笑っている。いや、笑っているというより苦しんでいると言った方が正しいかもしれない。先程からヒーヒー言っていて、息が上手くできていない。
『ピコン♪』
携帯がなった。メッセージが届いたことを知らせる音だ。だが、空那はヒーヒーと苦しんでいる最中なのでそちらに構う余裕はないようだ。
まあ、そんなことはいいのだ。とりあえず、eva《私》は空那に問題集に取り組んでほしいのだ。彼氏持ちのくりぼっちにこんなことを言うのは酷かもしれないが、せっかく丸一日休みなのだから、母親に怒られる前にさっさと終わらせてはくれないだろうか。怒っている母親はもともと怖いのに、最近は空那が反抗するものだから、自ら危険なところに近づいていくホラー映画を観ているようなドキドキ感というか、そういうものに襲われる。だからどうか、eva《私》が可哀想だと思うのならば、問題集に取り組んではくれないだろうか。
「あー、笑いすぎてお腹痛い」
eva《私》の願いとは裏腹に、笑い疲れた空那は、「次、新刊出るのいつかなー」と言いながら携帯をいじり始めた。eva《私》にはもう、母親に怒られている空那の姿が鮮明にイメージできてしまっている。・・・。もういい。今笑っておけば、きっとプラスマイナスがゼロになるはずだ。きっと。うん。
・・・。
・・・ンフッwなんでスナオ《お前》髪だけ綺麗なのw
ないけどお腹痛いw
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