第23話 実力テスト
「空那さ、今回めっちゃ点数いいじゃん。どーしたの」
「どーしたのって、世奈だっていつもより高いじゃんか。受験生だから勉強時間増えてるの。みんなそーでしょーが」
「いやいや、いつもより高いっていってもこれ普段の空那の点数じゃん。それより更に高いってさぁ、ほんと、どーしたの」
世奈と喋っていると、後ろから誰かの手が伸びてきて空那の視界を塞いだ。
「だぁれでしょぉうかあ?」
「何そのスローモーション。ってか冷たいって!」
「だぁれでしょぉうかあ?答えるまで意地でも離さん」
「分かったって、凛佳でしょ?」
「よく分かったね」
手を離すと、空那が座っている椅子の横で膝立ちになり、組んだ腕を机に乗せてあごを置いた。
「そりゃあこんなに冷たいの凛佳くらいだもん。爪紫になってるじゃん。大丈夫か?」
「問題ない。これが通常モードですから」
冬に凛佳の爪が紫になるのは毎年のことなので大丈夫なのは分かってはいるが、あまりにも冷たいので世奈がカイロを握らせ、またテストの話を始めた。
「凛佳今回どうだった?」
「思ったより良かった!これで安心して第一受けられますって感じ」
「いぇーい」と言いながら凛佳が両手でピースをする。
「世奈はどーだった?あ、そういえば志望校決めたの?」
「点数はもうバッチリよ。空那の見たら自信なくしかけたけど。志望校はねぇ、
「月之木って私立だよね?すべり止めで受けるのもありじゃない?」
「うん。それもありかなって思ってるとこ」
「あたしもすべり止め考えとかなきゃなー。あ、ところで空那は決めれたの?」
「決めれたけど内緒〜」
「何それ、教えてよー」
気になるじゃん、と世奈が空那の肩を揺らす。
「めっっっちゃ言いたいんだけどぉ、願書出すまでは内緒〜」
あっ、と何か思い出したように凛佳が言った。
「あれでしょ。伊藤となんか約束してるんじゃない?そーいえば伊藤も教えてくんなかったし」
「え、なになに?どんな約束?」
「いや、なんかね、相手がここ行くって言ってるから私もここ、みたいなことが無いようにってことで確定するまでは絶対言わないっていう約束を、お兄ちゃんがしてたらしくて」
なるほどねー、と世奈が言う。
「空那もそれに便乗したってことか」
「便乗、、、まあそういうこと」
でもさ、と凛佳が言う。
「私たちだけ教えてよ。ね?気になるじゃん。空那ちゃんおねがーい」
顔の横で手を合わせ、ニコッと笑顔をつくる。
「空那ちゃんとか、、やめてやめて。ゾワゾワする」
あと高校は教えませんっ、と空那が凛佳のおでこをペチッとはたいた。
「まあっ!空那ちゃんったら友達になんてことするのかしら!」
とおでこをおさえながら凛佳が言うと、
「そうよそうよ!勉強がいくらできるからって、友達は大事になされないといけないわ!凛佳ちゃんのおでこがへ、へこんでしまったらどうしますの?」
と世奈がのる。
「ふっ、、へ、へこむって、、、。ごめんなさい、凛佳ちゃん。凛佳ちゃんのおでこがそんなに脆いとは知らず、、、。んふっ」
結局全員おでこがへこむというワードがツボに入り、3人で爆笑する。とくに凛佳はツボが浅いようで、「ふう、はあ、わ、わたしの、おでこっ、、へこんっ、んふっ」と呼吸ができているのか心配になるレベルで笑っている。
しばらく笑っていると、コンコン、と言う音が3人の間に割って入った。見ると、担任の奥野先生が教室のドアのところに立っていた。
「そこのお女子たち、青春してるとこ悪いけど、もう下校時刻だから受験生は帰りなさいね」
その一言により、すでに笑いすぎてもうなんでも笑える状態になってしまった凛佳はまたツボに入ったようで、なんというかもう、ヒューヒュー言っている。
そんな状態の凛佳を空那と世奈が支え、なんとか立ち上がると、先生に挨拶をし、楽しそうに笑いながら教室を出る。来年の今頃にはもうこの光景はないということが嘘のようで、空那は、時が経つのは早いなー、本当に卒業するのかなーなんてことを思いながら帰路に着くのだった。
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