第6話 修学旅行3

 〜♪〜♪〜♪〜♪

 バシッ


「ん、ここどこ」


 空那は寝ぼけている!


「沖縄ですよ、空那ちゃん」


「あれ、結芽乃ちゃん?沖縄…」


 空那は寝ぼけている!


「起きろ空那!」


「いだだだだ」


 凜佳は空那のほっぺたを引っ張った!

 空那は目を覚ました!


「あ、凜佳か、おはよぉ」


「小学校の修学旅行のときも思ったけど、空那って朝弱いよね」


「んー?そーかなぁ」


「そーだよ!ほら、顔洗ってこい!」


 凜佳の言った通り、空那はすこぶる朝に弱い。夜更かしはしないし、適度に運動もする。なのに朝は起きられない。コーヒーも飲まないのに。というか飲めないのに。空那は苦いのが苦手なのだ。同じ理由で紅茶も飲めなかったが、最近フルーツティーなら飲めるようになった。

 ちなみに、お寿司はいつもサビ抜きである。納豆についてくるカラシも使わない。最近小3の従弟がお寿司をサビ入りで食べられるようになったためならば自分もとサビ入りを食べたところ、吐いてしまった。それからというもの、さらにワサビへの警戒心が強くなったようだ。

 顔を洗った空那が、なにやらキョロキョロしている。どうやらタオルを探しているようだ。


あきさん、空さん。タオル、落としてたよ」


 桃子がどんぐりの刺繍が入った薄い黄色のタオルを持ってきた。


「あ、桃ちゃん、ありがと」


 顔を拭き終わり2人で居間へと戻ると、世奈と莉央は布団をたたんでおり、結芽乃と凜佳はなにやら相談をしているようだった。


「あたしらも布団たたんだらいい?」


「うん、お願い。眠り姫は2人がなんとかしてくれるから」


「あれ、咲希さき、さっき起きてなかった?顔洗ってたような気がするんだけど」


「そのあと布団の上に座ってまた寝たみたい。昨日、夜遅かったから余計眠いんじゃない?」


「途中何回も寝てたはずなんだけどね。ほんっと良く寝るなぁ。まだ成長する気かよ」


 咲希は学校でもすぐに寝る子で、授業中は起きているのだが、休み時間に入るとあっという間に寝てしまう。中学に入ってからそうなったというので、成長期だろうかという認識になっているが、それにしても異常なほどにいつでもどこでもすぐに寝る。

 今だって座ったまま寝ている。1年生の頃はもっとひどく、授業中にも寝てしまっていたそうで1度病院に行ったらしいが、いたって健康なんだそうだ。みんなに隠れて夜更かしでもしているのだろうか。ちなみに、こんなに寝ているだけあって背は高い。176㎝あるそうだ。しかも、まだ伸びている。それに加えて、なにか運動をしているわけでもないのにスタイルが抜群に良い。顔も小さくてシュッとしている。ショートカットが似合うタイプの子だ。憎めない性格も相まって、女子たちのあこがれの的である。


「咲希ー起きろー。おーい。朝ですよー」


 結芽乃が咲希の肩をたたき、凜佳が脇の下に手を通してスタンバイする。咲希はよく寝るが寝起きは良い。問題はそのあと、いかにして立ち上がらせるかだ。


「ん、ありゃ寝てた?おはよぁっ!?」


「よし、これでオッケー」


「なになに?どしたの?凜ちゃん」


「咲希、座ったままだとまた寝るかもでしょ?だからたたせようと思って」


「ああ、たしかに。ありがとー」


「どーいたしまして。じゃ、咲希の布団たたんだら着替えて朝ごはん行こ」


「了解しました、班長」


 着替え終わると、お茶の補給のために各々の水筒を持って、のんびりとお喋りしながら部屋を出て行った。

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