第42話

 ゆっくり目を開けると、そこは深い闇に覆われた水の中。

 やはり水面は見つけることができず、ただただ水の世界が広がっている。


「……動ける」


 俺は自分の体の状態を確かめるように、水中で色々と動いてみた。

 すると、俺とネクロとアッシュもぎこちなさを感じつつも、水中で動いている。

 ――――あれから二週間。

 【危機脱出】の再使用可能まで大人しく過ごし、そこから目標のレベルまでレベリングして準備を終えた俺たちは、改めて第七階層へと挑戦しているのだ。


「すごいな……一応、ウチの山の池とかで確認はしてたけど、問題なく動けるぞ……」


 ショップで手に入れた【流水棍棒】を倉庫から取り出すと、その場で軽く振ってみた。

 本来、水中で棍棒など振っても、水の抵抗でまともに振ることはできない。

 しかし、この【流水棍棒】は水中でも地上と同じように扱うことができる効果を持っていたのだ。

 第七階層の環境に問題なく対応できていることを確認した俺は、改めてステータスを見た。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:31→36

職業:召喚勇士Lv:25→30、トレジャー・マスターLv:15→20、ネクロ・ロードLv:15→20、武闘戦士Lv:15→20、オリジン・スペラーLv:1→5

MP:366→466(+620)

筋力:177→227

耐久:177→227

敏捷:180→230

器用:178→228

精神:177→227

BP:100→0

SP:8→33→3

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:7→MAX≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:2≫≪高性能マップ≫≪時属性魔法Lv:3→4≫≪経験値獲得量増大≫≪適応体≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:7→解析≫≪気配遮断Lv:7→同化Lv:1≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:7→偽装≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:4→8≫≪魔物図鑑≫≪強制起床≫≪即時戦闘態勢≫≪脱皮≫≪無詠唱≫≪完全詠唱≫

【武器】

≪棒術Lv:7→中級棒術Lv:1≫≪投擲Lv:2≫

【魔法】

≪火属性魔法Lv:3≫≪水属性魔法Lv:3→5≫≪風属性魔法Lv:5≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:4≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:5≫≪生活魔法≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫≪魔法の創造者≫≪死に挑みし者≫

【装備】

身代わりのペンダント、流水棍棒

【所持G《ゴールド》】

4G→1004G→4G

【契約】

ブルーゴブリン×1、レッドゴブリン×1、ゴブリン×6、スケルトン・ソルジャー×1、スケルトン×8、メタルスライム×1、ダーク・バット×1、白狼×1、グラスウルフ×10、ゴーレム×3、キックバード×2、ハイ・リザードマン×1、リザードマン×5


 これが今の俺のステータスである。

 七階層に向けて準備する中で、色々と変化していた。

 まず、オリジン・スペラーに関してだが、レベルアップすると召喚勇士と同じく精神とMPが増えた。

 そこでBPの振り分けに関しては、精神とMPを除くすべての項目にBPは均等に振り分けることに。そうしないとMPと精神だけ突出しちゃうしな。

 あと、トレジャー・マスター、ネクロ・ロード、武闘戦士に関してだが、レベルが20になったことで、初めて技能を獲得したのだ。

 それがこれである。


『ドロップアップ』……一定時間、ドロップアイテムの獲得率が上昇する。


『闇夜の祝福』……一定時間、アンデッド系の魔物のステータスを二倍にする。ただし、光属性魔法、または神聖魔法による被ダメージ量が二倍になる。


『闘気』……一定時間、ステータスの筋力、耐久が上昇する。


 どれも任意で発動するタイプの技能であり、それぞれ再使用間隔は五分だった。

 唯一、『闇夜の祝福』のみデメリットが存在するが、光属性魔法も神聖魔法も使ってこない敵が相手であれば、とんでもなく強力だろう。

 次にスキルについてだが、まずスキルがレベル上限に達した。

 元々ヘルプでスキル上限が10であることは知っていたが、今回実際にレベル上限に達したことで、ヘルプが正しいことが分かった。

 それよりも、レベル上限に達したいくつかのスキルが、進化したのだ。


【解析】……『鑑定』の上位スキル。『鑑定』より詳細な情報を獲得可能。


【同化】……『気配遮断』の上位スキル。気配を遮断するのではなく、周囲の気配と同化させることでより隠密性が高まる。


【偽装】……『隠匿』の上位スキル。より詳細なステータスの偽装が可能。また、このスキル保有者が『解析』スキルを受けた場合、スキル保有者のステータスが見えないという形で情報を保護できるものの、スキルで隠していることは伝わる。


【中級棒術】……『棒術』の上位スキル。より棒系武器の扱いに長ける。


 それぞれが非常に使い勝手がよくなり、特に【偽装】は有難い。

 今までの【隠匿】スキルでは、ステータスを隠すことがメインで、レベルくらいしか偽装することができなかったのだ。

 まあその効果だけでも冒険者の登録時には問題ないが、この先俺と同じように【解析】を持ってる人間が現れれば、【隠匿】では隠しきれなかっただろう。

 称号面で見られたらヤバそうなものが色々あるからな。

 ただ、【中級棒術】に関しては実感がない。

 確かに骸骨兵の骨など、思った通りに、流れるように扱えるようになった。

 でも、元々俺は一人で戦うのではなく、ソウガたちのような従魔と一緒に戦うのが基本なので、俺自身が達人になったような感覚は全然なかった。

 こんな感じで既存のスキルは順調に強化された。

 新しく習得したスキルに関してだが、こちらも大きな変化があった。

 まずせっかく手に入れた無効化スキルたちは、入手した瞬間【無詠唱】と【完全詠唱】だけ残して、あとはすべて合体し、【適応体】というユニークスキルに変化したのだ。

 一応、効果はこんな感じで……。


【適応体】……どんな環境でも適した体へと変化する。火属性魔法や氷属性魔法による影響も無効化。ただし、基本的に環境への適応であるため、物理攻撃などを適応化することはできない。


 その説明通り、水中に適応した俺は、こうして水中という環境でありながら、問題なく呼吸も移動もすることができた。

 しかし、このスキルを手にしたおかげで、【無詠唱】の緊急性が少し減った。

 いや、習得するに越したことはないが、結果的に【適応体】のスキルを得たことで、水中でも言葉を発することができるようになったので、無詠唱である必要がないのだ。

 とはいえ、詠唱しないというだけで相手に自分の魔法の発動タイミングや種類を悟らせずに攻撃できるので、強力なのは間違いないだろう。

 スキルに関してはこんなところで、次は装備だ。

 まずいつも着ている白狼の外套だが、舞台が水中ということもあり、今は脱いでいる。

 ……正直、防御面がとんでもなく心配だが、服には俺の新たなスキル【適応体】が作用しないので、純粋に服が水分を含み、とんでもなく動きにくくなるのだ。

 なので、実は今の俺は水着姿だったりする。

 何ならネクロの足には足ひれを装着してるしな。これがないと、ネクロは水中で動けない。なんせ皮膚がないので、骨の足を動かしてもまともに動けない。

 見た目だけで見れば、完全に海に遊びに来たような恰好だが、俺たちはいたって真剣だ。

 それと、新しくショップで手に入れた【流水棍棒】だが……。


【流水棍棒】……C級。滝の下にのみ生育する『流水木りゅうすいぼく』と呼ばれる、激流の中でも決して倒れない樹木から作られた棍棒。水中であっても、水の抵抗を受けることなく地上と同じように取り扱うことが可能。推奨スキル:『棒術』、『槍術』


 まさにこのステージに相応しい武器だ。

 しかも、さっそく【解析】の効果が表れており、武器のランクと武器を扱ううえで推奨されるスキルまで表示されている。

 この武器は、ショップで1000Gもしたものの、いい買い物だったと思う。

 しかも、ちょうどレベル上げをしたいタイミングだったので、魔石集めのために魔物とひたすら戦えたのもよかった。

 ……百体以上の魔物と戦闘したけどな。俺がいても魔石中々落ちないし。

 正直、防具も揃えておきたかったが、どうやら水中用の防具ってのはないらしい。ショップにもDMでも見かけなかったので、これは諦めた。

 とにかく、そういう経緯もあって、多くの戦闘を経験したソウガたちも強くなっている。


【ソウガLv:12→17】

≪棒術Lv:7→中級棒術Lv:1≫≪受けLv:7→流転≫≪模倣≫≪軽業≫


【コウガLv:12→17】

≪棒術Lv:7→中級棒術Lv:1≫≪二刀流≫≪怪力≫


【ゴブリン(リョーガ)Lv:7→9】

≪棒術Lv:6→8≫


【ネクロLv:10→15】

≪剣術Lv:7→中級剣術Lv:1≫≪盾術Lv:7→中級盾術Lv:1≫≪頑強≫


【アッシュLv:8→13】

≪液状化≫≪金属化≫≪溶解≫≪形状記憶≫


【スケルトンLv:5→7】

≪採掘≫≪格闘Lv:3≫


【ゴブリンLv:5→7】

≪棒術Lv:4→6≫≪採掘≫


【シロLv:4→9】

≪霊能力≫≪索敵Lv:3→8≫≪気配遮断Lv:3→8≫≪近接戦闘術Lv:4→9≫


【グラスウルフLv:3→8】

≪連携≫≪索敵Lv:3→8≫≪気配遮断Lv:3→8≫≪探知Lv:3→8≫


【岩一(ゴーレム)Lv:1→6】

≪硬化≫≪自己修復≫


【キッド(キックバード)Lv:1→6】

≪強襲≫≪嘴撃しげき≫≪偵察≫


【リザードマンLv:1→3】

≪槍術Lv:1→3≫≪連携≫


【岩将(ハイ・リザードマン)Lv:1→6】

≪統率≫≪槍術Lv:1→6≫≪鼓舞≫


【経験値獲得量増大】の効果がよく出ているのか、リョーガたち簡易契約組もレベルが上がっていた。

 ……いや、【経験値獲得量増大】を習得した状態で百体以上の魔物と戦闘したのに、たったこれだけしか上がらないなんて、簡易契約のデメリットって予想以上に大きくないか? 逆にスキル習得前だとレベルが上がってない可能性すら出てきたな……。

 ま、まあ簡易契約すれば俺のMPが増えるので、完全なデメリットはないが、戦力の追加としては非常に弱い。

 とにかく、これまでのことを改めて振り返った俺は、体の調子を確かめていたネクロたちに向き直る。


「さて……見渡す限り何もないが、ひとまず移動するか」

「――――」

「……」


 ネクロは足ひれをうまく使い、俺についてくる。

 アッシュは、俺の体に纏わりつくことで、防具の役割も果たしてもらいつつ、一緒に移動していた。

 しばらくの間、静かな水の中を移動していると、このエリアに来て初めて【高性能マップ】に反応があった。

 ただ……。


「んん?」


 ――――その反応は敵性を示す赤ではなく、黄色だった。

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