第39話

「さてと……改めて【岩石の間】に来たわけだが……」

「ギャ」


 ひとまず俺は、現在契約している全員を召喚する。


「まず、シロたちは魔物を探してきてくれ。もし俺たちの近くで見つけたら、そのままこっちに誘導しろ。逆に遠かったら、倒してもいいし、逃げてもいいぞ」

「ウォン!」


 俺の指示を受けるや否や、シロとグラスウルフたちは一瞬で散開していった。


「そういえば確かめたことなかったけど、これ、俺がいない状態でシロたちが魔物を倒しても、俺のレベルは上がるんだろうか?」


 もしそうなら、俺は安全な位置から指示を出すだけでいいのかもしれないが……。

 恐らく、【召喚勇士】のレベルだけ上がりそうだ。

 そういう意味でも、バランスよく職業レベルを上げるなら、俺も戦闘が必要だろう。

 まあ今の俺は、職業じゃなくて種族のレベルが必要なので、そこは問題ない。


「さて……ネクロたちは、魔晶石の採掘をしてきてくれ。ただ、同じように魔物を見つけて、連れてこれそうなら頼む」

「――――」


 ネクロも他のスケルトンたちを連れていくと、魔晶石の採掘を始めた。

 あとは……。


「……うん。ソウガたちは、俺の近くで待機しててくれないか?」

「ギャ?」

「仕事がないのは申し訳ないんだが、ひとまずソウガたちは護衛ってことでさ」

「ギャ!」


 俺のお願いに対し、ソウガや岩将たちは頷いた。

 ひとまず指示を出し終えた俺は、ようやく【魔法創造】に手を出すことに。


「そうだなぁ……最初は風属性魔法がいいかな?」


 今、俺が使える魔法の中で、空間魔法を除けば、雷属性と風属性が一番強く、それぞれ『ストーム』系の魔法が使える。

 このストーム系は、今まで使ってきたボール系の魔法に比べて、広範囲に攻撃できるのが特徴的だった。


「うーん……そう考えると、この先に覚える魔法って何なんだろうか?」


 身に着けるなら、レベルを上げても身につけられないような魔法じゃないと意味がない。

 とはいえ、分からないものを考え続けても仕方がないだろう。


「今までの傾向を見ると、基本的に全属性で同系統の魔法が存在することになるよな。そう考えると、斬り裂くような魔法って出てくるのかな?」


 例えば、今まで『ファイアボール』や『ウィンドボール』など、属性こそ違えど、同系統の魔法を色々使ってきた。

 そう考えれば、ゲームとかのイメージにある、風属性魔法の斬り裂くような魔法は、どうするのだろう。

 もちろん、『ウィンドストーム』は、魔法内に敵を捕らえれば、無数の風の刃によって、切り刻まれる。それこそミキサーのように。

 だが、単純に一刀両断するような魔法はなかった。


「よし! それじゃあ最初は、相手を斬り裂くような魔法にしよう」


 ……自分で言っててなんだが、物騒だな。


「それで……どうすりゃいいんだ?」


 いつもみたいに、魔法名を唱えるのか? その場合は、俺が新たに名付けるとか?


「ひとまずやってみるか……えっと、『風刃ふうじん』――っ!?」


 そう唱えた瞬間だった。

 一応、魔法を発動させるために右腕を突き出していた俺だったが、その手のひらに風が急激に集まったかと思うと、すぐに霧散して大きな突風を巻き起こしたのだ。


「くっ! し、失敗したのか……」


 ただ、反応したということは、このやり方であっているのだろう。

 だとすると、何が原因で失敗したんだ?


「……こりゃあ簡単にはいかなそうだなぁ」


 軽い気持ちで始めた【魔法創造】だが、俺は若干後悔しつつも、再度挑戦するのだった。


***


「――――『風刃』!」


 そう唱えた瞬間、俺のイメージ通り、風の刃が右手から放たれ、的として設定していた岩の表面を大きく斬り裂いた。


「や、やっと完成した……」


 あれから二時間後。

 色々試行錯誤したことで、【魔法創造】の仕様が見えてきた。

 まず、【魔力支配】のスキルをフル活用し、精密な魔力操作を行う必要があること。そして、その魔力操作をしつつ、明確なイメージを持って、魔法を発動させる必要があること。

 この二点が重要だったのだ。

 最初に失敗したのは、魔力操作なんてものを全く意識していなかったことと、イメージが中途半端だったことが大きな原因である。

 ……確かに、よくよく考えれば、【魔法創造】も【魔力支配】も、同じ称号から手に入れたスキルなんだよな……。

 つまり、この二つが手に入ったのには理由があったというわけだ。

 今まで【魔力支配】を単なる魔力回復速度が速くなるスキル程度にしか考えていなかったのが大きな間違いだな。

 元々、スキルの説明にはいろいろできるようなことが書かれていたが、現状よく分からずに放置していたのが悪い。

 ……とはいえ、未だに分からないんだが。


「他者の魔力を支配は何となく意味が分かるとして、空間に漂う魔力を支配すると、何かあるのか?」


 他者の魔力を支配できれば、相手の魔法を封じたりできるだろうが、空間の魔力だけはよく分からなかった。

 ともかく、念願のオリジナル魔法である。

 もしかしたら、この先のレベルアップで習得可能な魔法なのかもしれないが、今の段階で俺が生み出したことに間違いはない。


「最初は消去法みたいな形で作ったけど、かなり使い勝手がいいぞ」


 なんせ風の刃なので、まず見えない。

 それに、『ウィンドボール』と違って裂傷という大きな傷を与えることができるのだ。

 しかも、消費魔力は『ウィンドボール』と同じ。

 ただし、『ウィンドボール』にもいい面が存在する。

 それは面での攻撃ができるという点だ。

 正直、今のところ特定の攻撃が通じないという相手はいないが、この先には斬撃無効といった敵が出てくるかもしれない。

 その時は『風刃』ではなく、『ウィンドボール』の攻撃が有効のはずだ。

 そんなこを考えていると、不意にメッセージが出現する。


『称号【魔法の創造者】を獲得しました』


「またか……」


 たぶん、オリジナル魔法を創ったことが、トリガーだったんだろうな。

 そう思いつつ、俺は称号を確認する。


【魔法の創造者】……世界で初めて魔法を創造した者。

効果:職業『オリジン・スペラー』の解放。オリジナル魔法の威力が上昇する。魔法系スキルの習得に必要なSP軽減。


「マジか!?」


 またもや職業と有用な能力を手に入れてしまった。

 特に、魔法系限定とはいえ、SPが軽減するのはとても大きい。

 その場で【スキルコンシェルジュ】を開き、【魔の神髄】を確認したところ、なんと元々50だったSPが、40にも減っていたのだ。レベルに換算して二レベルぶんの軽減である。

 他にも、まだ習得していない魔法系スキルは、すべてSP1で獲得できるようになっていた。

 ……これ、前も思ったが、称号をどんどん独占してる気がするんだけど、本当に大丈夫なんだろうか? もしこれがゲームなら、大顰蹙を買いそうだな……。

 どこか現実逃避気味なことを考えつつ、俺はふとシロたちがどうしてるのか気になり、『感覚共有』を発動した。


「シロたちは……って、あれ?」


 なんと、『感覚共有』で見たところ、シロたちはリザードマンの群れを相手に、普通に戦っていた。

 しかも、ネクロたちと合流しており、スケルトンたちがドロップアイテムを回収してる。

 その手に見えるドロップアイテムの数からみても、かなり倒してるようだ。


「……これ、俺の近くにたまたま魔物がいなかったのか? ってか、こうなると俺のレベルどうなってんだ?」


 俺はふと気になり、ステータスを確認すると……。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:29→31

職業:召喚勇士Lv:23→25、トレジャー・マスターLv:15、ネクロ・ロードLv:15、武闘戦士Lv:15、オリジン・スペラーLv:1

MP:355→360(+620)

筋力:171

耐久:171

敏捷:172

器用:170

精神:166→171

BP:0→40

SP:48→58

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:6→7≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:1≫≪高性能マップ≫≪時属性魔法Lv:3≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:7≫≪気配遮断Lv:7≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:7≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:4≫≪魔物図鑑≫≪強制起床≫≪即時戦闘態勢≫

【武器】

≪棒術Lv:7≫≪投擲Lv:2≫

【魔法】

≪火属性魔法Lv:3≫≪水属性魔法Lv:3≫≪風属性魔法Lv:4→5≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:4≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:5≫≪生活魔法≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫≪魔法の創造者≫

【装備】

身代わりのペンダント、白狼の外套

【所持G《ゴールド》】

4G

【契約】

ブルーゴブリン×1、レッドゴブリン×1、ゴブリン×6、スケルトン・ソルジャー×1、スケルトン×8、メタルスライム×1、ダーク・バット×1、白狼×1、グラスウルフ×10、ゴーレム×3、キックバード×2、ハイ・リザードマン×1、リザードマン×5


「や、やっぱりレベル上がってる……しかも二つも……」


 想定通りというか、シロたちだけで魔物を倒した場合も俺のレベルは上がるようだったが、俺の種族レベルと召喚勇士のレベルしか上昇していない。

 これはおそらく、シロたちという契約した魔物は、召喚勇士による能力だからで、その力を使っているようなものだから、召喚勇士だけのレベルがあがったのだろう。

 ここにネクロたちも戦闘に加わっていれば、ネクロ・ロードのレベルも上がっていた可能性がある。

 つまり、職業のレベルを上げるには、その職業に関する行動を行う必要があるのだろう。それ以外でレベルが上がるのは、俺自身が戦闘に参加した場合だ。じゃないと、戦闘の度にトレジャー・マスターのレベルが上がってるのもおかしいもんな。

 ステータスを確認していると、新たなメッセージが出現する。


『【召喚勇士】のレベルが20になったため、【招集】が解放されました』


「招集……」


 その効果を確認すると、どうやら遠く離れた契約している魔物を、一瞬で呼び寄せることができる技能らしい。

 ただ、一度に招集できるのは一体のみだ。


「せっかくの新技能だし、使ってみたかったが……いちいち一体ずつ呼び戻すのも面倒だし、普通に帰ってきてもらうか」


 一応、再使用間隔みたいなものは特にないようなので、連続で発動させれば、シロたちを一瞬で呼び戻せる。

 それでも面倒なのは変わらないので、俺はひとまず『感覚共有』で戻って来るように伝えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る