第38話
「つ、疲れた……」
「ギャ」
第六階層である【岩石の間】をクリアした俺たちは、そのまま倒した魔物たちのドロップアイテムを回収すると、一度家に帰ることにした。
今回は第六階層で泊まり込みといったことはしていないが、それにしても最後の魔物の群れとの戦闘はなかなか……。
「今までは強力なボスが一体だけって感じだったけど、今回みたいなパターンもあるんだなぁ」
アイテムやレベルアップといった様々な恩恵はあったが、俺としてはダンジョンの新しい知識を得られたことが大きい。
今回は倒すことができたが、これがもっと強い魔物がいる階層で、たくさんの魔物と連戦しなきゃダメなボス戦だったら、どうなってたか分からない。というより、確実に【危機脱出】のスキルが作動するだろうな。
そんなことを考えていると、ソウガが妙にソワソワしていることに気づく。
「どうした……ってああ、風呂か。風呂掃除してくれたら、そのまま入っていいよ」
「ギャ!」
俺の言葉にソウガは嬉しそうに頷くと、コウガとリョーガを連れてお風呂場へと向かっていった。
「あいつら仲いいなぁ……」
そんなことを思いながら、俺は他のゴブリンやスケルトン、アッシュ、ネクロ、グラスウルフたちを帰還させていく。
「シロも、今日はありがとうな」
「ウォン」
シロは顔を摺り寄せてきた後、そのまま同じように俺の中へ帰還した。
俺の家はある程度広い自信はあるが、さすがにシロのサイズが普段から家の中で生活するほど広くはない。本当はソウガたちと同じく、家の中で過ごせたらいいんだけどな。外はさすがに誰かに見られたら困るし。
「さて、それじゃあ……ドロップアイテムの確認をしますかね」
俺は家の中を汚さないために、外でドロップアイテムの確認をすることにした。
ひとまず今回手に入れた魔石はこんな感じだ。
【魔石(ゴーレム)】……ランクCの魔石。魔力の結晶。この魔石にはゴーレムの情報が刻まれている。
【魔石(キックバード)】……ランクCの魔石。魔力の結晶。この魔石にはキックバードの情報が刻まれている。
【魔石(リザードマン)】……ランクDの魔石。魔力の結晶。この魔石にはリザードマンの情報が刻まれている。
【魔石(ハイ・リザードマン)】……ランクCの魔石。魔力の結晶。この魔石にはハイ・リザードマンの情報が刻まれている。
まず魔石だが、内訳としてはゴーレムの魔石が三つ、キックバードは二つ、リザードマンは五つ、そしてハイ・リザードマンが一つだ。
「結構な量だな。とはいえ、確実に契約が成功するかは分からないが……」
今までの傾向というか、俺の【鬼運】の効果だと、おそらくハイ・リザードマンは普通の契約が成功するだろう。
ただ、他の魔物は成功するかどうかは正直分からない。
ゴーレムもキックバードもランクがCだし、即戦力としては申し分ないが、レベルが上がるのが遅くなるからなぁ……。
「あと少しで【経験値獲得量増大】が手に入るが……うーむ……」
正直、この【経験値獲得量増大】に関しても、手に入れたからといってどこまで簡易契約した魔物たちのレベルが上がるのかは分からないのだ。何だったら効果範囲は俺だけとか、普通に契約した魔物だけ、という可能性もある。
とはいえ、簡易契約をすれば戦力も魔力も確実に増えるのだ。
ただ、何だろう……簡易契約をしようと思うと、嫌な予感がするのだ。
「【不幸感知】が働いてるのか? だとしても、なんでリスクがほとんどない簡易契約で嫌な予感がするんだか……」
嫌な予感の強さはそこまでではないので、おそらく無視したとしてもちょっと損したな、という程度ですむはずだ。これは経験上分かる。
だが、普通に契約する方でそれを感じないのなら、久しぶりにボス以外で普通の契約を試してみるか。
リザードマンは……こっちは簡易契約でも嫌な予感がしないし、むしろ普通の契約を挑戦しようかと考えた瞬間嫌な予感がしたので、リザードマンに関しては簡易契約を試みる。
すると、【不幸感知】の効果通り、何とゴーレムもキックバードもすべて普通の契約に成功した!
「マジか……こんなことあるんだな……」
逆にここまで運がよかったらリザードマンも……って思うけど、そううまくはいかないようだ。リザードマンを改めて普通の契約をしようとしたら嫌な予感がしたし。
諦めてリザードマンたちは簡易契約をして、最後にハイ・リザードマンの契約を行う。
やはりというか、ボスだった魔物は普通の契約に成功した。
「ゴーレムやキックバードの契約ができたのは単純に運が良くて、ハイ・リザードマンは【鬼運】の効果なんだろうなぁ……」
「フシャー」
「ああ、すまん。そうだな……リョーガ以外は今まで普通に契約できたのには名前を付けたわけだし、皆にもつけるか」
今回の名づけには関係ないリザードマンたちを帰還させた後、ゴーレムたちを前に名前を考える。
「……うん。ゴーレムは
名前の由来? いつも通りのセンスのない名づけですが。
ゴーレムなんて見ての通り岩だし、一号二号とかでもいいかなって思ったけどそれだと味気ないから名前っぽくして。
キックバードは何を特徴としてとらえて付ければいいのか全く分からなかったから『キックバード』って名前を二つに分解して付けた。
ハイ・リザードマンはなんかボスだったので、ひとまずリーダーっぽい名前を……と考えたらこうなった。まあ【岩石の間】の将軍ってことだな。実際は将軍でも何でもないけど。
こうして何とも言えない名前を俺から貰ったのに、ハイ・リザードマン……改め、岩将たちは嬉しそうな様子を見せる。
そんな風に喜ばれると罪悪感が……ごめんな、俺の名づけセンスがなくて。
ちょっと胸を痛めながら、俺はひとまずそれぞれのステータスを確認した。もちろん、リザードマンたちのも確認済みだ。
【岩一(ゴーレム)Lv:1】
≪硬化≫≪自己修復≫
【キッド(キックバード)Lv:1】
≪強襲≫≪
【リザードマンLv:1】
≪槍術Lv:1≫≪連携≫
【岩将(ハイ・リザードマン)Lv:1】
≪統率≫≪槍術Lv:1≫≪鼓舞≫
「へぇ! なんだか面白そうなスキルが多いな……」
岩一たちの【硬化】は効果が何となく想像つくが、【自己修復】ってどうするんだろうか? 体が岩だから、周辺の岩や土から体を修復するとか?
キッドたちは上空からの攻撃に優れたスキル構成だ。特に【偵察】は役に立ちそうだし。
今のところ、空中戦ができたのはアンネだけで、そのアンネも昼間は活動できないから昼間の空中戦力が増えたのは大きい。逆に夜はキッドたちには厳しいかもしれないし、昼夜どちらも対応できそうだ。
リザードマンは戦った時の印象そのまんまって感じだが、岩将のスキルは本当にリーダーっぽい内容だ。それっぽい印象で名前を付けた割には当たってるかも。
【統率】も【鼓舞】も詳しい効果こそまだ分からないが、強そうだ。
「改めて、皆よろしくな」
「フシャ」
「ピュイ」
『オオオ』
それぞれと挨拶を終えると、俺は一度全員を体内に帰還させる。
そして、再び残りのドロップアイテムの確認を再開した。
【魔岩石(まがんせき)】……ゴーレムの体表だった岩。魔力が浸透しており、通常の岩より硬い。
【脚鳥の羽】……キックバードの羽。丈夫で美しく、矢の羽根として人気がある。
【脚鳥の肉】……キックバードの肉。栄養価が高く、非常に美味。
【蜥蜴人の槍】……リザードマンの持つ槍。作りは簡素だが、その分手入れがしやすい。
【蜥蜴人の鱗】……リザードマンの鱗。丈夫かつ軽い素材だが、熱の温度差に弱い。
【高位蜥蜴人の鱗】……ハイ・リザードマンの鱗。軽さはそのままで、リザードマンの鱗以上に丈夫。さらに温度差に対してもある程度耐えられる。
「うーん……魔石以外のドロップアイテムはあんまりいい感じじゃないなぁ」
蜥蜴人の槍はそのままリザードマンや岩将に使わせることができるけど、鱗は現状俺には使い道がない。
というのも、DMとかに素材ごと持ち込めば防具に加工とかできるんだろうが、E級の冒険者の俺がD級やC級の魔物の素材を持ち込めばどうなるのかなんて分かり切っている。
それに俺はソロで活動してるし、アンネと出会ったダンジョン以外には外のダンジョンには参加してないんだし、出所を調べられれば終わる。
そういう意味では脚鳥の羽や魔岩石も使い道がないのだ。
「幸い肉は美味しそうだし、そこそこ数があるから、今回はこれと岩将たちという新戦力が大きな収穫って感じだな」
そう呟きながら、俺はステータスを確認した。
名前:神代幸勝
年齢:22
種族:人間Lv:28→29
職業:召喚勇士Lv:22→23、トレジャー・マスターLv:14→15、ネクロ・ロードLv:14→15、武闘戦士Lv:14→15
MP:330→355(+270→620)
筋力:164→171
耐久:164→171
敏捷:165→172
器用:163→170
精神:159→166
BP:20→0
SP:43→48
【オリジンスキル】
≪鬼運≫≪不幸感知≫
【ユニークスキル】
≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:6≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:1≫≪高性能マップ≫≪時属性魔法Lv:3≫
【スキル】
≪精神安定≫≪鑑定Lv:7≫≪気配遮断Lv:7≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:7≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:4≫≪魔物図鑑≫≪強制起床≫≪即時戦闘態勢≫
【武器】
≪棒術Lv:7≫≪投擲Lv:2≫
【魔法】
≪火属性魔法Lv:2→3≫≪水属性魔法Lv:3≫≪風属性魔法Lv:4≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:4≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:5≫≪生活魔法≫≪召喚術≫
【称号】
≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫
【装備】
身代わりのペンダント、白狼の外套
【所持G《ゴールド》】
4G
【契約】
ブルーゴブリン×1、レッドゴブリン×1、ゴブリン×6、スケルトン・ソルジャー×1、スケルトン×8、メタルスライム×1、ダーク・バット×1、白狼×1、グラスウルフ×10、ゴーレム×3、キックバード×2、ハイ・リザードマン×1、リザードマン×5
契約による魔力の伸びがすごいな!
内訳はC級が一気に六体の300、そしてD級が五体で50のプラス350もの増加だ。
全員召喚したらその恩恵は消えるが、それでも総量が増えることに変わりないのでこの強化は非常に大きい。
それに火属性魔法も一つレベルが上がったので、シールド系の魔法が使えるようになった。
まだシールド系の魔法を使うような場面に遭遇していないので効果がどんなもんなのか実感はないが、使える手札が増えるのは歓迎だ。
「さて……あとSPが2手に入れば【経験値獲得量増大】が手に入るし、明日はレベル上げを行おう」
次の階層も気になるが、せっかくレベルを一つ上げればスキルが手に入るのだ。
それに、今回は結局できなかった魔法の練習もしておきたいし、ちょうどいいだろう。
「なんにせよ、今日は疲れたし……ソウガたちが上がったら俺も風呂に入って寝ますかね」
俺は伸びをしながら着替えの準備などをするのだった。
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