第37話

 ひとまず倒せたからいいが、今回は色々と反省点があった。

 まず空からの襲撃を警戒していなかったことと、『感覚共有』を使いこなせていない点だ。

 キックバードの襲撃からソウガたちを守るため、俺とシロで連携攻撃を仕掛けたはいいが、あの場面はソウガたちに『感覚共有』で伝えるだけでも良かったかもしれない。

 さすがに数回使った程度では慣れないので、ここら辺は経験を積んでいくしかないだろう。


「それよりも、ますます【高性能マップ】なんかで敵を探す重要性が上がったな……」


 アンネのように、空を飛ぶ魔物がいるのは分かっていたはずなのだが、どうも意識から外れていた。

 ただ、五階層でシロたちという強力な索敵をこなせる仲間を手に入れたので、こちらが先に敵に気づくことが多いのは本当にありがたかった。

 周囲を警戒しながら俺は素早くステータスを振り分けていく。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:27→28

職業:召喚勇士Lv:21→22、トレジャー・マスターLv:13→14、ネクロ・ロードLv:13→14、武闘戦士Lv:13→14

MP:305→330(+270)

筋力:157→164

耐久:157→164

敏捷:158→165

器用:156→163

精神:152→159

BP:20→0

SP:38→43

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:6≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:1≫≪高性能マップ≫≪時属性魔法Lv:3≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:7≫≪気配遮断Lv:7≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:7≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:4≫≪魔物図鑑≫≪強制起床≫≪即時戦闘態勢≫

【武器】

≪棒術Lv:7≫≪投擲Lv:2≫

【魔法】

≪火属性魔法Lv:2≫≪水属性魔法Lv:3≫≪風属性魔法Lv:4≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:4≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:5≫≪生活魔法≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫

【装備】

身代わりのペンダント、白狼の外套

【所持G《ゴールド》】

4G

【契約】

ブルーゴブリン×1、レッドゴブリン×1、ゴブリン×6、スケルトン・ソルジャー×1、スケルトン×8、メタルスライム×1、ダーク・バット×1、白狼×1、グラスウルフ×10


 俺のレベルこそ上がったが、残念ながらソウガたちのレベルは上がらなかったみたいだ。経験値は次の戦闘に持ち越しだな。


「てか、気づけば召喚勇士以外の職業は次でレベルが15になるのか」


 召喚勇士はレベルが10とレベル15、20の段階で技能が解放されたのに対し、他の職業はまだ技能が解放されていない。次の15で解放されるのか、20までないのか……はたまた解放される技能がない可能性もあるが、どうだろう。


「まあ考えても仕方がない。先に進むか」

「ギャ!」


 ドロップアイテムを回収すると、俺たちは先に進むのだった。


***


「ギャギャ!」

「ギ」

「フシュー!?」


 襲い来るリザードマンの群れに対し、ソウガたちは圧倒的な力を見せつけていた。

 周辺の様子は相変わらず岩ばかりで特に代わり映えもなく、この様子だと階層のボスはシロの時と同じように何らかの魔物を一定数倒したりする必要がありそうだ。

 そして、C級の魔物こそシロやネクロといった仲間と協力して倒していたが、もうD級の魔物であれば二匹とも何の心配もせずとも確実に倒せるようになっていた。

 とはいえ、相手もそこそこの数がいるので、ネクロたちにも手伝ってもらいつつ、どんどん倒していく。

 おかげで俺自身が戦いに参加する間もなく、敵は蹂躙された。

 すべてのリザードマンを倒し終え、ドロップアイテムを回収したところでソウガたちのステータスを確認した。


【ソウガLv:11→12】

≪棒術Lv:7≫≪受けLv:7≫≪模倣≫≪軽業≫


【コウガLv:11→12】

≪棒術Lv:7≫≪二刀流≫≪怪力≫


【ゴブリンLv:6→7】

≪棒術Lv:6≫


【ネクロLv:9→10】

≪剣術Lv:7≫≪盾術Lv:7≫≪頑強≫


【アッシュLv:7→8】

≪液状化≫≪金属化≫≪溶解≫≪形状記憶≫


【スケルトンLv:4→5】

≪採掘≫≪格闘Lv:3≫


【ゴブリンLv:4→5】

≪棒術Lv:4≫≪採掘≫


【グラスウルフLv:1→2】

≪連携≫≪索敵Lv:1→2≫≪気配遮断Lv:1→2≫≪探知Lv:1→2≫


 ネクロのレベルが10になったため、ソウガの時のように進化があるのかと期待したが、特にそんな表示はなかった。

 まあネクロはD級だからな。E級なら進化したんだろうが、こればかりは仕方ない。

 そんなことを考えながら進んでいると、突如、地鳴りのような音が聞こえてくる。


「な、なんだ?」


 さらには地面が少しずつ揺れ始め、何かが近づいてきているのを感じた。


「――――シャアアアアアアアアア!」

「! この声は……」


 鋭い咆哮に警戒していると、【高性能マップ】に高速で近づいてくる反応を確認できた。

 さらにその数は一つではなく、何体もの魔物がこちらに向かってきていた。

 これは……逃げても追いつかれるな。


「グルル……」

「全員構えろ!」


 それぞれがより一層警戒すると……そいつは現れた。


「シャアアアアアアア!」

「あれは……!」


 現れた魔物は、リザードマンをさらに一回り大きくしたような存在で、全身黒色の鱗に所々青いラインが入っていた。

 そんな他とは違うリザードマン以外にも、通常のリザードマンの群れや、キックバード、しかもゴーレムまで集まって来た。

 しかも、どの魔物も特殊なリザードマンに従っているようにも見える。魔物同士で、他の種類の魔物を従えるなんてことできるのか?

 思わずそんなことを考えながら、俺は特殊なリザードマンに向けてすぐさま【鑑定】を発動させた。


【ハイ・リザードマンLv:20】……ランク:C。弱点:氷属性魔法、火属性魔法。耐性:斬撃。

説明:リザードマンが進化した存在。リザードマンの頃より身体能力や知能が大幅に強化されている。その知能の高さから、他種族の魔物を率いることもある。変温動物である性質こそ残るものの、リザードマンよりは体温変化によって受ける影響が少ない。


「ハイ・リザードマン……」


 どうやらリザードマンが進化した存在らしいが、そこに書かれている説明はどれも侮れるものじゃない。

 リザードマン自体はソウガたちでも十分対処できたが、それが進化したのなら話は別だ。

 リザードマンたちのときは特に意識していなかった体温変化による弱点も、進化の影響で緩和されているようだし……まあ完全に緩和されたってわけじゃないから、狙うなら火属性魔法や氷属性魔法だろう。ただ、残念ながら俺は氷属性魔法を覚えていないので、火属性魔法で戦うしかない。

 他にも説明通り、他種族であるゴーレムやキックバードも率いているのも脅威だ。

 だが、それ以上に俺が驚いたのはそのレベルだ。

 この場に現れた、ハイ・リザードマンと同じC級であるゴーレムやキックバードはざっと【鑑定】したところ最大でレベルが5なのに対し、ハイ・リザードマンはその四倍。

 シロならゴーレムも難なく倒せたのは分かったが、ここまでレベル差があるとどうなるか全く分からなかった。

 俺は契約している魔物全員を召喚し、構えていると、ハイ・リザードマンが咆哮を上げた。


「フシャアアアアアアアアア!」

『オオオオオオオ!』

「ピュィイイイ!」


 ハイ・リザードマンの咆哮に合わせ、一斉にゴーレムやリザードマンの群れが押し寄せてくる!


「『ファイアボール』!」

「フシャ!?」


 目の前に押し寄せるリザードマンたちに魔法を放ちつつ、それぞれに『感覚共有』を使って指示を出した。

 とはいっても、普通に契約したソウガたちは自由に戦ってもらいつつ、リョーガを含めた簡易契約組は最低でも三体以上で固まって行動するように指示しただけである。

 だが、そんな簡単な指示だけでも十分で、ソウガは棍棒を手に獰猛な笑みを浮かべつつ、リザードマンの頭を的確に打ち抜いていた。

 コウガは逆に冷静な様子で二本の棍棒を操り、近づくリザードマンたちを吹き飛ばしていく。

 ネクロは盾と剣を巧みに操り、相手の攻撃を引き受け、その隙をアッシュやグラスウルフたちが逃さず、確実に仕留めていった。

 リョーガやスケルトンたちも俺の指示通り固まって動き、格上であるリザードマンたちを倒していく。

 そんなそれぞれが活躍する中、やはり一番の動きを見せるのはシロだった。


「グルル……ウォオオオン!」

『オオオオオ!?』


 シロは一瞬でゴーレムに接近すると、その鋭い爪を振るい、次々と切り裂いていく。

 ただ、黙って相手もやられるわけではなく、何とかシロを撃退しようとゴーレムが巨大な腕を振るい、空からキックバードたちが攻撃を仕掛けるも、そのすべての攻撃を予知していた様子で避け、さらには同じく【霊能力】のスキルの一部だと思われるサイコキネシスを使い、キックバードを次々と地面へと引きずり落としていた。


「フッ!」

「ピュィ!?」


 落とされたキックバードたちが再び空へと逃げないよう、俺は気配を消しながらすぐにキックバードの下に向かうと、毎度のごとく首に骸骨兵の骨を当て、捻り上げるようにして倒していった。

 ……おかしい。俺のステータス的には戦士か魔法使いがしっくりくるはずなのに、どう見ても暗殺者じゃん。

 まあ確実に相手を倒すには首を落としたり心臓を潰したりする必要があるわけで、そういう意味ではちょうどいいんだけどさ。こんな戦い方でも【棒術】のスキルレベルは上がるし。

 最初こそ相手の魔物の多さに勝てるのか少し不安だったが、いざ戦いが始まると俺の仲間たちは全員強く、どんどん相手を押していく。

 もし無理そうなら空間魔法の『ワープ』を使って逃げることも考えていたが、これなら大丈夫そうだ。

 そんなことを思っていると、不意に嫌な予感がしたため、すぐさまその場から飛び退くと、先ほどまで俺が立っていた位置を鋭い何かが横切った。


「!」

「フシュー……」


 どうやらハイ・リザードマンはこのままでは負けると考えたようで、戦いに参戦し、手にした槍を俺に突き出したところだった。ついキックバードの首を折ることに夢中で接近されてることに気づかなかった。

 うーん……警戒しなきゃって考えてるのにどうもうまくいかん。本当に【不幸感知】には感謝だ。

 改めて俺はハイ・リザードマンと向き合うと、魔法を放った。


「『ファイアボール』」

「フシュー!」

「『スロー』、『アクセル』!」

「フシャアアア!?」


 相手の弱点である火属性魔法を使えば、ハイ・リザードマンはそれを避けると考えていたら、俺の予想通りの反応を示してくれた。

 そのため、俺はその隙を突いてすぐに準備していた『スロー』を発動させてハイ・リザードマンの動きを遅くしつつ、俺自身も『アクセル』で加速し、ハイ・リザードマンの懐に潜り込むと、そのまま手にした骨で思いっきり顎を打ちあげた。

 これが他の魔物ならこれだけで倒れてくれたのかもしれないが、相手は高レベルのC級。

 俺の攻撃によろけながらも尻尾を巧みに操り、反撃してきた。


「フシャアアア!」

「くっ!」


 すぐに骨を構えなおしたので何とか防げたが……一撃が重いぞ!

 しかも、相手はその一撃だけで済ませず、尻尾と手にした槍で怒涛の攻撃を仕掛けてきた。


「――――」


 相手の反撃に押されていると、すかさず近くで戦っていたネクロが間に入り、ハイ・リザードマンの攻撃を受けてくれる。

 何の指示も出していないのだが、的確にこちらの状況を読み取り、助けてくれるネクロは無口ながらも非常に頼もしかった。

 そしてネクロのおかげでできた隙を逃さず、再び魔法を放つ。


「『ファイアボール』!」

「フシャアアア!?」


 ハイ・リザードマンはとっさに攻撃を避けようとしたものの、ネクロの剣と盾さばきにより思うように動けず、ハイ・リザードマンは俺の魔法をまともに食らった!


「フシャアアアア!」

「これで……トドメだ!」


 魔法を受けたことで絶叫するハイ・リザードマンに対し、俺はすぐさま骸骨兵の骨を振り上げると、ハイ・リザードマンの脳天目掛けて思いっきり振り下ろした。

 その一撃を避けるだけの余裕は相手になく、もろにその攻撃を受けたハイ・リザードマンは何歩かよろめくと、そのまま静かに倒れる。

 それと同時に、周りで行われていた戦闘も終わったようで、無事すべての魔物を倒しきることができたのだった。


『レベルが上がりました。【岩石の間】の攻略に成功しました』


 さらに続いて現れたメッセージを見て、ハイ・リザードマンがこの階層のボスであったことを初めて知るのだった。

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