第20話

 スライムが予想以上に呆気なく倒れたことで、思わず驚いてしまったが、すぐに正気に返るとソウガに声をかける。


「ソウガ、大丈夫か? スライムの体液を浴びたりしてないか?」

「ギャ……」


 ソウガは俺の言葉に頷いたものの、そのままションボリとしながら棍棒を見せてきた。

 その棍棒を見ると、爛れて溶けている。やっぱりスライムの体は触れたものを溶かす働きがあるらしい。これは失敗だったな。

 ひとまずソウガの頭を撫でつつ、俺は【倉庫】から新たな棍棒を取り出すと、ソウガに渡した。


「ほら、これを使えよ」

「ギャ? ギャ!」


 溶けて使い物にならなくなった棍棒を放り投げ、新たな棍棒を手にしたソウガは嬉しそうに小躍りし始めた。棍棒一つでここまで喜ばれるなんて……不思議な感じだ。

 そんなソウガを眺めながら、先ほどの戦いでレベルが上がったと言うのでステータスを確認してみる。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:16→17

職業:召喚勇士Lv:11、トレジャー・マスターLv:3→4、ネクロ・ロードLv:2→3、武闘戦士Lv:1→2

MP:91→101(+50)

筋力:72→77

耐久:71→76

敏捷:70→75

器用:69→74

精神:82

BP:0→20

SP:20→25

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:4≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:1≫≪高性能マップ≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:4≫≪気配遮断Lv:5≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:5≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:1≫

【武器】

≪棒術Lv:5≫≪投擲Lv:2≫

【魔法】

≪火属性魔法Lv:2≫≪水属性魔法Lv:3≫≪風属性魔法Lv:2≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:2≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:4≫≪生活魔法≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫


「ありゃ? 召喚勇士はレベルが上がらなかったのか……」


 ちょうど経験値的に召喚勇士はレベルが上がるには足りなかったのだろう。

 それよりも、武闘戦士のレベルが上がった際の上昇するステータスが、筋力と耐久力だったのは嬉しい。

 まあ名前的に何となくそんな気はしていたが、これでBP以外でも満遍なくステータスが上昇するわけだ。

 となると、必然的にBPの使用する項目が悩ましくなってくる。


「……また最初に戻って、全部に満遍なく振り分けるか。MPと精神は振らなくてもいい気はするが、一応な」


 残りのBPも最初と同じく耐久と敏捷でいいだろう。

 そう思いながらBPを振り分けた後、俺はふとSPに目を向けた。


「うーん……時属性魔法を手に入れるまでためるつもりだったが、さっきのスライムとか、初見じゃちょっと躊躇するような魔物がまた出てきたら困るよな……」


 今回は【不幸感知】のおかげで大惨事にはならなかったが、これがなかったらどうなっていたのかと思うと笑えない。


「……前も考えたけど、魔物の生態的なのを詳しく教えてくれるスキルってあるのかね?」


 そう思いながら【スキルコンシェルジュ】を使うと、一つだけ表示された。


『習得推奨スキル【魔物図鑑】』


「そのまんまか」


 どうやらこの【魔物図鑑】とやらを習得すれば、魔物の生態が分かるみたいだ。

 ちなみに消費SPは5と中々重たい。うーん……仕方ない。これは必要経費として習得するか。

 決めたからにはまた迷ってしまわないためにもサクッと習得してしまう。

 すると、新たなメッセージが出現した。


『スキル【魔物図鑑】を習得しました。スキル【鑑定】と同期……完了。これより、【鑑定】した魔物の情報がより詳細に分かるようになりました』


「へぇ……【高性能マップ】の時は勝手に統合されちゃったけど、同期っていう場合もあるのか」


 そう思いながら、ちょうど近くにいたスケルトンに【鑑定】を発動させてみた。


【スケルトンLv:1】……ランク:E。契約者:神代幸勝。弱点:神聖魔法、打撃。

説明:生物の死体に魔力が宿り、アンデッドとして蘇った存在。その身を形成する骨格は生前の姿に由来する。ただし、ダンジョン内で生み出された場合は存在が最初からスケルトンとして定義された状態で生み出されるため、骨格は自然と人型になる。これはダンジョンという機構が関係しており、ダンジョンはそもそもその内部に魔物やアイテムを生成することで、人々をおびき寄せ、罠や魔物を用いてダンジョン内で殺すことにより、生命力や魔力を糧として成長する。だからこそ、ダンジョンは人型の存在と密接にかかわるため、スケルトンも人型が多い。骨の強度はスケルトンのランクによって変わる。


「予想以上に詳しかった!?」


 もっと簡潔な説明が出るかと思ったが、すごい詳細な説明が出てきて驚いた。

 てか、ダンジョンの機構とか初めて知ったけど怖いな!? なんでいきなり地球にダンジョンが出現するようになったのかは分からないが、ダンジョンという存在そのものは俺たちに富を与えつつ、その命や魔力をつけ狙う存在だということが分かった。そういや【悪意を見抜く者】の称号を獲得したのって罠を解除した時だったな……あの時は罠なんて悪意がなければ仕掛けないかって納得したが、ダンジョンそのものが人間にとって悪意のある存在らしい。ダンジョンに意思というものがあるのかは知らないが、より一層用心したほうがよさそうだ。

 ひとまず【鑑定】では色々と詳しい説明が出たが【魔物図鑑】の方を発動させるとどうなんだろうか?

 思いついたので早速発動させてみると、これはこれで【鑑定】と少し異なっていた。

 というのも【鑑定】で出現した説明もそのまま表記されていたのだが、それにプラスしてその魔物を倒すと手に入るアイテムまでも記載されていた。

 例えばスケルトンであれば、魔石の他に【魔力骨】と呼ばれるアイテムがドロップするらしい。ただこのアイテムは魔石以上にレアらしく、中々手に入らないそうだ。どおりで見たことないわけだ。

 スケルトンを見た流れでスライムのデータもないかと探したが、どうやら【魔物図鑑】を手に入れた状態でもう一度【鑑定】する必要があるらしく、情報は得られなかった。これは少し面倒だ。

 ただ、契約しているソウガの進化前なんかは【魔物図鑑】で確認できたので、毎回確認する必要があるのは契約していない魔物限定なのだろう。

 それにしても……こんなに有用なら、最初から取っておけばよかったし、SP5なのも納得だ。


「習得するまでは渋ってたけど、これはいい選択だったな」


 俺はホクホク顔でステータスの操作を終えた。

 結果、今の俺のステータスはこうである。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:17

職業:召喚勇士Lv:11、トレジャー・マスターLv:4、ネクロ・ロードLv:3、武闘戦士Lv:2

MP:101→104(+50)

筋力:77→80

耐久:76→80

敏捷:75→79

器用:74→77

精神:82→85

BP:20→0

SP:25→20

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:4≫≪魔法創造≫≪危機脱出Lv:1≫≪高性能マップ≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:4≫≪気配遮断Lv:5≫≪契約≫≪罠解除Lv:5≫≪隠匿Lv:5≫≪夜目≫≪超回復・魔≫≪超回復・体≫≪受けLv:1≫≪魔物図鑑≫

【武器】

≪棒術Lv:5≫≪投擲Lv:2≫

【魔法】

≪火属性魔法Lv:2≫≪水属性魔法Lv:3≫≪風属性魔法Lv:2≫≪土属性魔法Lv:3≫≪木属性魔法Lv:3≫≪雷属性魔法Lv:2≫≪神聖魔法Lv:3≫≪空間魔法Lv:4≫≪生活魔法≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫≪悪意を見抜く者≫≪制圧者≫≪孤高≫≪暴き見る者≫≪ザ・トレジャー≫≪着飾る者≫≪不死者を従える者≫≪ユニーク・ハンター≫≪無名の兵≫


「へぇ……SP5のわりに【魔物図鑑】はユニークスキルじゃないんだな。それに、スキルレベルもないし……」


 いわゆるレアスキル的な扱いなんだろうか。どのみちスキルレベルもなく、コンスタントに魔物の詳細が分かるのは大きいな。

 ステータスの確認を終えた俺は、続いてスライムのドロップアイテムを確認した。

 ただ、残念ながら魔石らしきものは見当たらない。


【スライムの核】……スライムの核。

【スライムの体液】……スライムの体液。触れたものを溶かす。


「スライムの核か」


 ソウガがスライムに一撃を加えた際、体内に何かあるなと思っていた小さな丸い石のようなものの正体は、スライムの核だったらしい。雰囲気的に心臓みたいなものだろうか?

 どちらにせよ、もしまたスライムと戦うことがあれば核を狙うのがいいのかもしれない。まあ先に【鑑定】してから攻撃したいところだが、また武器をダメにする覚悟はいるかもな。

 【倉庫】内に棍棒はたくさんあるとはいえ、無駄にしたいわけじゃないし。

 てか、核そのものは使い道が全く分からないが、体液の方はご丁寧に小瓶に入っており、何かに使えそうである。普通に振りかけてもダメージを与えられそうだ。

 すべての確認がすんだ俺は、ソウガたちに声をかけた。


「さて、もういっちょ先に進みますか」

「ギャ!」


 俺たちはまた、ダンジョン内の魔晶石を掘りながら進んでいくのだった。

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