第10話
「つ、疲れたぁ……」
「ギャ」
レッドゴブリンを倒し終えた俺とソウガは、ついその場に座り込んでしまった。
しかし、メッセージの言葉が本当なのであれば、どうやら俺たちは無事にダンジョンをクリアできたらしい。
そのことを実感した瞬間、俺の中に達成感が沸き上がってきた。
「やったな、ソウガ」
「グゲ!」
ソウガも俺と同じく達成感に浸っているようで、満足げに頷いた。
このままここで寝てしまいたいが、このダンジョンがどうなるのか分からないし、早く出た方がいいだろう。
ただ、レッドゴブリンはドロップアイテムをいくつか残していた。
少し怠いが、気力を振り絞って立ち上がった俺は、そのままドロップアイテムを確認していく。
【魔石(レッドゴブリン)】……ランクDの魔石。魔力の結晶。この魔石にはレッドゴブリンの情報が刻まれている。
【小鬼の秘薬】……ゴブリン族の秘薬。飲むと筋力が上昇する。
【スキルオーブ『スキルボード』】……スキルが込められた宝珠。使用するとユニークスキル『スキルボード』を習得できる。
【小鬼の牙】……ゴブリンの牙。
「これは……」
ダンジョンボスのドロップアイテムだからか、たくさんのアイテムが落ちていた。
中でも目を惹くのが、スキルオーブだろう。
「このアイテムを使用することで、スキルが覚えられるのか」
どうやらスキルを覚える手段は本当に様々らしい。
ただ、このスキルオーブに込められている【スキルボード】というのを一応【スキルコンシェルジュ】で探し、効果を調べたところ、どうやら【スキルコンシェルジュ】の下位互換だということが分かった。
【スキルコンシェルジュ】は自分で習得したいスキルを探すことも可能だが、所有者の望む最適なスキルを教えてくれる機能もついているのに対し、【スキルボード】は同じくSPを消費してスキルを覚えられるものの、全部自分で探して習得する必要があり、コンシェルジュのようなサポート機能はない。
そうなると俺が使うのはあり得ないので、ソウガに使えないかと思ったが、何故かソウガには使えなかった。魔物には使えないのだろうか?
「まあいいや。何かあった時のために、【倉庫】に放り込んでおくか……」
ついでに【小鬼の牙】と【小鬼の秘薬】も放り込む。牙は使い道が全く分からないことと、秘薬は飲んだ時に何かあってもいいように、家に帰った状態で試したいからだ。ていうか、牙はもう少し説明をどうにかできなかったんだろうか? これじゃあ何に使うのかさえ分からんぞ。
そして最後に残った魔石を手にする。
「……魔石も、帰ってからにするか」
せっかく手に入ったボスの魔石だ。
できれば今度こそ、失敗することなく契約したいところだが……落ち着ける場所でやりたい。
結果、ドロップアイテムのすべてを仕舞った俺は、今度は称号もざっと確認することにした。
【制圧者】……世界で初めてダンジョンをクリアした者。
効果:『成長する迷宮』の所有権の獲得。戦闘時、称号保有者の全ステータス50%上昇。
【孤高】……世界で初めて誰ともパーティーを組まずにダンジョンをクリアした者。
効果:自身へのバッドステータス(状態異常や呪いなど)を無効化する。呪われたアイテムを使用時、呪いの効果のみ打ち消し、恩恵を受けることが可能。ただし、他者から受ける強化効果、回復魔法などを無効化する。アイテムによる強化効果は有効。
「なんじゃこりゃあ!?」
俺はつい称号を見て叫んでしまった。
これって……どう見てもソロ専用称号ですよねぇ!?
世界で初めてパーティーを組まずにっていうけど、ソウガと一緒にクリアしたんですが!?
……もしかして、ソウガは召喚獣だからパーティーに含まれないとか?
だとしてもこの称号は酷いだろ! この状況に遭遇しているのが現状俺だけしかいないのに!
効果は確かに強力だよ?
俺が恐れてた状態異常や呪いの心配がなくなったわけだからさ。
でも誰からの支援も受けられないのは果たして釣り合っているのか?
って言うか、【悪意を見抜く者】でせっかく耐性手に入れたのに全部無駄になったよ! まあ罠の発見率が上がるのは嬉しいけどさ。なんせ、スキルがなければ俺には罠があるかどうかなんて見分けがつかないのだ。猟師の人とかなら日ごろ山に罠を仕掛けることもあるだろうし、壁や床のちょっとした変化にも気づけるのかもしれないけどさ。
「今は人付き合いが嫌で世捨て人みたいな生活をしてるけど、この状況が世界中に広がった時、誰かと協力できないのはあまりにもリスクが高すぎるだろ……」
そもそも世界に広がるのかさえ不明だが。これ、俺の周りだけで起きてる不思議現象じゃないだろうな? 嫌だぞ、こんな危険と隣り合わせの生活は。
それと、【制圧者】の方も書かれてる内容がかなりヤバい。
戦いのときに俺のステータスが全部50%も上昇するのだ。これだけでも大きな恩恵と言える。
だが、それ以上に気になるのは『成長する迷宮』の所有権を獲得したということ。
「どういうことだ? 『成長する迷宮』ってのはこのダンジョンのことなんだよな?」
もっと詳しく調べたいところだが、情報が少なすぎる。
「……これも帰ってからじっくり考えるか」
ダンジョンをクリアできたことに変わりはないのだ。ここを脱出する以外は焦ることはない……と思う。
もろもろの確認を終え、帰ろうとしたとき、メッセージが新たに出現した。
『【ソウガ】の進化条件が整いました。進化しますか?』
「え?」
「ギャ?」
呆然とする俺をよそに、ソウガはのんきに首を傾げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます