第5話

「また称号か……」

「グゲ?」


 ソウガを連れて家に入ると、俺は新たに手に入れた称号を確認する。

 ……【未知との遭遇】って称号は俺的にはあまり嬉しい効果じゃなかったが、この称号はどうだろうか?


【魔と友誼を結ぶ者】……世界で初めて魔物と契約した者。

効果:職業『召喚勇士』の解放。魔物に好かれやすくなる。ドロップした魔石を用いた契約の成功率が大幅に上昇する。


「これ……かなりいい感じの称号じゃないのか?」

「グギャ?」


 ソウガには何のことか分からないようで、首を傾げている。

 まだまだこの世界にこういった魔物が出現していないためか、契約できたのは俺が初めてなようで、おかげで俺は遭遇した魔物に好かれやすくなるらしい。

 それに、よく分からないが、魔石を使った契約とやらも成功しやすいそうだ。

 って言うか、ソウガと契約した時、何か光の粒子が俺の体に入り込んだけど、あれが契約の何かだったんだろうか?

 色々気になることはあるが、称号の効果で一番気になるのは職業『召喚勇士』とやらだろう。

 一応、確認のためにステータスを開いた。


名前:神代幸勝

年齢:22

種族:人間Lv:2

職業:召喚勇士Lv:1

MP:3(+5)

筋力:8

耐久:9

敏捷:7

器用:7

精神:6

BP:0

SP:0

【オリジンスキル】

≪鬼運≫≪不幸感知≫

【ユニークスキル】

≪システム≫≪スキルコンシェルジュ≫≪魔力支配Lv:1≫≪魔法創造≫

【スキル】

≪精神安定≫≪鑑定Lv:1≫≪気配察知Lv:1≫≪気配遮断Lv:1≫≪契約≫

【魔法】

≪神聖魔法Lv:1≫≪召喚術≫

【称号】

≪先駆者≫≪未知との遭遇≫≪原初の超越者≫≪原初の魔術師≫≪魔と友誼を結ぶ者≫


「何か増えてる……」


 これ以上俺を混乱させないでほしいんだが。

 まず職業がいつの間にか『召喚勇士』になってるし、スキルにも【契約】と【召喚術】ってスキルが追加されてる。これは職業に付随する形で習得したスキルだと推測できる。【召喚術】にレベルがなかったのは少し意外だが。

 しかしそれ以上に気になるのは、俺のMPの部分だろう。


「何だ? このプラス5っていうのは……」

「グギャ? ギャギャ」

「え!?」


 すると、俺の言葉に反応したソウガが一つ鳴くと、突然、ソウガの体が光の粒子に変わり、そのまま俺の中に入ってしまった!


「な、何だこれ!? ソウガ!? おい、どうしたんだ!?」


 慌てて自分の体を触り、ソウガに呼びかけると、再び光の粒子が俺の体から出現すると、それはソウガの形へと戻っていった。


「グギャ」

「いや、そんなドヤ顔されても……」


 いきなりソウガが消えたことで焦ったわけだが、こうして元に戻ったことでソウガが何を伝えたかったのか、何となく理解した。


「まさか……あのMPの5っていうのは、ソウガの魔力か?」

「グギャ!」


 俺の問いに対し、ソウガは正解だと言わんばかりに頷いた。

 確か、【システム】のヘルプに書かれていた通りなら、魔物って言うのは魔力の塊らしい。

 そしてそんな魔力の塊であるソウガは、俺と契約したことで、俺の体にその魔力が宿ったってことになるのか?

 疑問点が多く出てきたことで、一度落ち着いて考えてみることにした。

 ――――その結果、『召喚勇士』だけでなく、【契約】や【召喚術】も含めて調べなおすと、色々なことが分かった。

 まず、俺の予想通り、あのMPに書かれていた+5って言うのはソウガの魔力で合ってるみたいだ。

 そして、そんなソウガを召喚するにはMPを5消費する必要がある。ソウガを形作るために必要な魔力量が5なのだろう。

 しかし、俺のMPは3しかなかった訳だが、ここでソウガと契約したことでその存在の魔力を俺の体に宿した結果、俺の総合魔力は8なのである。

 あの+5とされていた魔力は、別にソウガを召喚せず、普通に魔法を発動させるために使用しても問題ないみたいだ。

 それと同じでソウガを召喚すると、俺の総合魔力から5を消費するというより、5の魔力を使ってソウガの体を作り上げる、といった形になるため、ソウガを召喚している間の俺の総合魔力量は元の3になる。5の魔力が常に減った状態になる代わりに、召喚し続けている間にMPを消費するってことはないらしい。

 ここら辺はかなりややこしいが、ステータスには自分の元のMPとソウガのMPが分かれて表記されているので、元のMPで過ごすくらいの気持ちの方がいいだろうな。今のところMPをそんなに使う予定もないし。

 それにしても……ソウガを常に召喚しなくてもいいことが分かったのは大きかった。実は契約したはいいものの、普段どうするか非常に悩ましいところだったからだ。

 今のところ人と会ったり、この家に招いたりする予定はないが、何かの拍子にソウガの存在がバレても困る。こうして仲間になった今は、もう警察やら自衛隊やらに連絡する気もないし。

 なので、人目から隠すための手段ができたのは素直に嬉しい。

 しかも、こうして契約したことで、ソウガは俺が死なない限り、不死身となったようだ。

 どういうことかと言えば、ソウガの体を維持する魔力は今は俺のものになっており、それを消費することで召喚しているため、例え戦闘でソウガが死んだとしても、俺の魔力があれば、いくらでも復活できるようなのだ。

 逆にいえば、俺が死んでしまえばソウガも死ぬことになる。いきなりソウガの命まで預かることになるとは思わなかったが、こればかりは仕方ない。

 とはいえ、好き好んでソウガを危険な目に遭わせようなんて全く思わないがな。


「しかし……まさか契約にも種類があるとはなぁ」


 改めてスキルを調べたことで、何と【契約】の方法が二種類あることが判明したのだ。

 その一つが、まさに俺とソウガの様に、直接ソウガから契約を持ち掛けてきた『直接契約』。そして、もう一つは称号の【魔と友誼を結ぶ者】にも書かれていた魔石を用いた『魔石契約』の二種類だ。

 どこにどう違いがあるのかと言えば、『直接契約』は戦闘することなく契約できるのに対して、『魔石契約』は一度相手を倒したうえで、なおかつドロップアイテムとしてその魔物の魔石が必要になる点が大きな違いだろう。しかも『魔石契約』はそこまで用意できても失敗する可能性もあるのだ。

 ただし、一概にどちらが難しいかと言われても、何とも言えないだろう。

 もちろん、直接戦って倒す上に、ドロップアイテムまで必要かつ失敗のリスクもある『魔石契約』は難しいかもしれないが、そもそも敵対関係っぽい魔物と意思疎通したうえで直接契約するのも難易度は高いはずだ。毎回ソウガのようにいくとは限らないわけだし。

 まあ契約の仕方が違うとはいえ、契約が成功すれば、あとは同じでその存在を維持するだけの魔力が俺に追加され、それを分け与えて召喚ということになる。

 そう言えば魔石って、【システム】の【ショップ】でも通貨として使用するみたいだけど、魔物の種類によって価値みたいなのは変わるんだろうか。まだちゃんと【ショップ】は確認してないから分からないけどさ。てか、魔石ってかなり重要な感じだ。


「何だか知れば知るほどゲームみたいな話だなぁ」


 俺が獲得し、いつの間にか変わっていた職業の『召喚勇士』とやらも、ますますRPGのゲームっぽい。職業にもレベルがあることには驚いたが。職業のレベルが上がると何かいいことがあるんだろうか? 新たなスキルが手に入るとか……ありそうだ。でも、職業によるステータスへの補正はないみたいだ。いや、この【召喚勇士】って職業だけが特別かもしれないが。

 それはともかく、この手に入れた職業はユニーク職らしく、効果も中々すごかった。


【召喚勇士】……召喚士系のユニークジョブ。

効果:召喚獣のステータスを2倍にする。召喚獣との意思疎通がしやすくなる。召喚制限の解放。


 これである。

 普通の召喚士? が召喚する魔物より、俺が召喚する魔物の方が強くなるみたいなのだ。これは普通にありがたい……のか? まだ他の場所で俺みたいに変なことに巻き込まれてるって情報は見ないが。

 それに、召喚制限の解放ってことは、無制限に……いや、俺のMPの範囲内だろうけど、MPが許す限りは何体でも召喚できるようなのだ。

 つまり、契約した魔物は倒されない限りはすべて召喚したままでいられるっぽい。倒されちゃうとすぐに同じだけのMPを消費して、召喚しなおすかしないといけないらしいが……。

 朝っぱらから色々調べたり、驚きの連続だったが、まさか人付き合いを嫌った俺が、魔物と暮らすことになるとは……。

 視線を隣でボーっとしているソウガに向けると、ソウガは不思議そうに首を傾げた。


「グゲ?」

「……いや、これからよろしくな」

「グギャ!」


 棍棒を振り上げ、ニヤリと笑うソウガ。

 昨日襲われた時はその笑みは恐ろしかったが、ソウガの笑みはどこか愛嬌があって、少し可愛かった。

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