第9話 祭りと決戦

「おまたせ~」

「お、美香~」

「時間まだ大丈夫、それに一人来てない」

「あはは」

そう言って、いつのもメンツで祭りにやってきた。

私も琴菜も浴衣。

「可愛いな、2人とも」

そう遥翔が言う。

「うるさい」

照れたように琴菜が遥翔を叩いた。

「美香、その色に会ってるな。」

そう言って、功太が言ってくれた。

「あ、ありがとう。功太も甚平似合ってるよ。」

「当たり前だろ~」

そう言って、私の腰を小突いた。

「あれやばいな」

「やばい」

そう言って、瞬たちはヒソヒソと話している。

「奏こねぇし、先回るか。時間勿体ねぇ」

そういう功太に一同苦笑い。

私もうーんと悩んでいると、頭にポンっと後ろから手が乗っけられた。

「奏~」

「遅い」

「遅刻」

とブーイングを受けながらもふわぁっと欠伸をした。

「ちっ」

(功太、今舌打ちした?)

私はそう思いながらも、頭に乗っている手にドキドキしていた。

「て、手。髪型崩れる…」

そう、小さな声で言うと、奏はニヤッと笑い手をどかした。

照れてる私に功太がすかさず

「まわろーぜ」

そう急かす。

「それも、そうだな。」

「腹減った。」

「琴菜、何喰う?」

「んー」

そう各々、各屋台に並びだす。

人多いな、さすがバンドが来るだけある。

そう思っていると、功太が手を差し出した。

「人多いからな、つなごうぜ」

「う、うん」

そう言って掴もうとした私の片手は引っ張られて、人込みをグングン突き進んだ。

「か、奏。は、早い」

そう言うと、ピタリと止まり、あれ食いてぇと並び始めた。

(あ、食べたかっただけね)

そう言って並んだ唐揚げやさんは人気のようでみんなに追いつかれた。

唐揚げを黙々食べる奏は、悪気もないようにうまいと言った。

「お前ら、マイペース過ぎ。」

「わかんなかっただろ」

そう言って、怒る瞬と遥翔。

琴菜は呆れてる。

「美香、喉乾いてねぇ?これやるよ」

功太がペットボトルを差し出してくれた。

「リンゴジュース!!ありがと、功太」

ゴクゴクと飲む私に嬉しそうな功太。

「時間そろそろだし、ライブ行こ。」

そう言って、また差した出された手に今度は手を取った。

「確かに時間だね、じゃあ7時にあそこの広場で待ち合わせよ、みんな」

そう行って歩き出した私たちに奏は止まったままだった。


「奏、既に始まってたんだな」

「うるせぇ」

そういう瞬がニヤニヤして言う。

「てかどーすんの?行かれちゃったけど」

琴菜が水を射したように言ったが、奏はニヤリと笑った。

「こわ、何その笑い」

「策でもあんの?」

瞬が楽しそうだ。

「遥翔と琴菜は二人で最後まで楽しめ。7時を過ぎてもだ。」

「どうゆうこと」

「俺は!俺は!」

と犬のように瞬が言葉を待つ。

「お前は功太と俺のどっちの味方だ?」

奏の言葉にうーんと悩んだ瞬が笑顔でこう言った。

「どっちも!!でも、美香に笑ってほしい」

その言葉にみんなが驚いた。

そして、奏が

「お、お前も敵か?」

「違う、美香の一年見てきたらわかる。奏をどんだけ好きか」

そう言ってにんまり笑った。

「こいつアホだと思ってたけど、」

「普通にいい奴だった」

「瞬って平和主義者だ~」

そう言って俺たちは別れた。


奏と瞬はライブ会場に潜り込んだ。

「すごい、盛り上がりだな」

「人多いな、見つかるのか、これ」

奏は目を凝らす。

「いた!!」

「え、どこどこ!!」

2人は最前列の二列目の中央にいた。


ライブが終わりぞろぞろと帰っていく。

人波に飲まれて私は功太を見失った。

「功太!!!」

携帯で電話をかけても応答がない。

「詰んだ…」

トボトボと歩く私は、集合場所に向かう。

屋台の並ぶ道を歩いているとカップルが楽しそうにしている。

「はぁ…」

溜息をついた私に1人の男の人が声をかけてきた。

「浴衣のお嬢さん一人?俺と回らない?」

(ナンパ?私が?)

嬉しいけど、怖くなった。声をかけてきた人を見ると

「奏…」

「はは、大成功」

奏の顔を見たら、涙が溢れた。

「なんで泣く!?」

「うるさい」

頭にポンっとまた手を乗せられ、抱き寄せられた。

「か、奏!?」

「怖かったの?」

優しい声で慰められる。

「うん」

そういうと、ギュッと強くなった気がした。

ピロン

携帯が鳴る。

「奏、携帯…」

「内容分かってる」

「それに、人…」

「少しは黙れ」

ちゅっ

一気に顔が熱くなった。

「ふふ、耳まで真っ赤」

そう耳元で囁かれた。

「し、心臓持たない…」

ピロン

また、携帯が鳴る。

「うるせぇな」

そう言って、離れた奏の熱が私に残ったようでさらに恥ずかしくなった。

俯く私を見て、奏は笑った。

「これみろ」

見せられた画面は瞬とのメッセージ画面だった。

<功太捕獲

<写真

「何これ、」

「瞬に少し協力してもらった。」

「よかった、功太一人じゃないんだね」

その言葉に少しムスッとした奏はもう一度キスをした。

「か、奏」

「功太の行動に少しは気付け、この馬鹿」

そう言って、デコピンをされた。

「いった。てか知ってたよ。功太の気持ち」

「な!?」

「だてに情報屋じゃない。もし告られたら断ろうと思ってた」

自慢げに言った私に、はぁっと大きな溜息をついた奏は手を差し出した。

「俺の手は取ってくれねぇの?」

と。

私は笑顔でも手を握った。

「もちろん!!!」

それから、時間ぎりぎりまで祭りを回ったのだった。



最後に海に2人で行った。

真っ黒の海に星が浮いていて、シャッターを切った。

「なぁ、いつもそうやって撮ってんの?」

「そうだけど」

「いつも思うけど、お前大体映らねぇよな。みんなでいる時も」

「うーん、撮ってる方が好きかも。笑ってる顔可愛いし、琴菜とか」

「ふーん」

そう言って私の携帯を取り上げた。

「ちょ、なにするの?」

「んー?」

そう言いながら、カメラを構える奏。

「まさか撮る気!?やだよ!!」

その言葉を無視して奏は内カメにする。

「これでも嫌?」

映った私と奏の後ろにはキラキラと屋台の光が並び、浴衣や甚平の人たちが歩いていた。色とりどりで思わず…

「綺麗」

そう答えてしまった。

「じゃ、撮るぞー」

カシャっと響いたシャッター音は波にかき消された。

「撮るのもいいけど、たまには被写体もいいかもよ」

シャッター越しに移った私たちは笑っていた。



ちなみに瞬から送られてきた写真はみんなに後で公開処刑となった。

半泣きの功太の写真がね。


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