第8話 期待してもいいですか??

さっきの事を思い出して一人で家に帰ってニヤけてる。

家が嫌になって出たはずなのに彼の一言で一喜一憂してしまう。

(俺がこれからは守る)

そんなこと言われたら、期待してしまう。

あんな時間に出会うなんて、運命なんじゃないかって思ってしまう。

そんな事を思いながら、携帯に付いたジンベイザメを見つめた。

「期待してもいいの?」

てか、明日も学校がある。

どんな顔をして会えばいいのだろう。

二ヤケてしまいそう…。

その夜は、あまり眠れなかった。


朝になると質問攻めにあった。

「美香!昨日は突然飛び出して危ないじゃない。」

「帰りも遅かったみたいだし、何してたんだ」

海に行ってたなんて口が裂けても言えない。

お気に入りの気持ちを整理するための場所。

今後行けなくなってしまったら大変だ。

「ごめんなさい、少しコンビニ行ってきた。」

「駄目よ、行き先も伝えずに」

誰のせいだと思ってんだよ。

と、内心思いながらも申し訳なさそうに謝った。

「あんまりひどいと、バイク取り上げるからね。」

「もちろん自転車もだ」

「わかった、今度は連絡する。」

そう言って立ち上がり、学校に向かった。

バイクにまたがり、今度鍵取られないようにどっちか隠さなきゃなと思った。

海に行けなくなったら、何もかも終わりだ。

「シャッターが切れなくなってしまう」


学校に付くと、遥翔が話しかけてくれた。

「おはよ、どしたの、浮かない顔だね。」

「親と少しバトッただけ。大丈夫、ありがと」

そう言って、笑った。

頑張っての作り笑顔。こんなのは遥翔には通用しないというのに。


そんなこんなで昼休み

琴菜も遥翔も楽しそうに話している。

私もパックのリンゴジュースを飲みながら、その会話に混ざっている奏を見た。

昨日の事はなかったかのようにいつも通りだ。

「おい、お前ら、これ知ってるか?」

瞬が1つのチラシを持ってきた。

功太が後から追いかけてきて、言葉を付け加える。

「この春祭り、町おこしのやつだからこのバンドが来るんだって。美香好きだよな?」

「す、好き!?あ、う、うん。この人の曲はよく聞くよ。」

「だよな、俺一番に知らせたくて来たんだけど、美香これ行かね?俺も好きだし。」

「ライブか~、あんまり行きなれてないけど、大丈夫かな。」

「出店とかも出るし、桜綺麗らしいし、行こうぜ。」

功太がグイグイと話を進めてくれている。

嬉しいけど、奏のオーラが明らかに変わったのはみんなが気が付いたのは言うまでもない。

「こ、功太。それみんなで行かね?俺らも気になるし、ライブの時だけお前ら別行動すれば。」

「そ、そうだよ。高校最後だし、いいじゃん」

「思い出作りだな。」

「それそれ、瞬」

遥翔、瞬、琴菜が頑張って話を膨らます。

「それもそうだな」

と、単純な功太は納得し、その場は落ち着いた。

1人を除いては。

「俺行くわ」

奏がそれだけ残して立ち去ってしまった。

「あ、ちょ、次私も一緒だから待って!」

そう言って、私が追いかけた。

走り際に功太の言葉がよく聞こえなかった。

「俺、見てらんねーよ、美香一年も待たせるなんて。」

「おまえ…。」

照れくさそうに頭を掻きながら

「察しの通り、俺は奏の前からだ。」

「「「まじか」」」

これは、また波乱の予感です。

琴菜はそう思って溜息をついた。


「奏!!待ってよ!」

スタスタと歩く奏はいつもより早きがする。

「奏、昨日ありがとうね」

やっと私の言葉に振り向いた奏は照れくさそうに話してくれた。

「おう、あの後家大丈夫だったか」

「忍びのように気配消して家に潜り込んだよ。」

「忍者かよ、でも朝怒られたっぽいな」

「え、なんでわかるの!」

「さっき遥翔が朝浮かない顔してたって言ってたから。」

「筒抜けじゃん」

「お前は全部顔に書いてある、分かりやすすぎ」

「まじか~」

「そこ、うるさいぞ」

「すみませーん」

先生来てたの気が付かなった。

奏も同じ顔、びっくりしてる。

目を合わせてニコッと笑った。

やばい、楽しすぎる。

やっぱ、奏カッコいい。優しい。

こんなんどんどん好きになるじゃんか。

笑った顔、可愛すぎだろ。


放課後になり、またいつものメンツが集まる。

功太と私不在で会議が行われていたらしい。

ちなみにバイトだ、私は。

「奏ー、なにその装備、かっこよ」

「だろだろ、でも瞬もマニアックだな」

「渾身の装備ですぞ」

「お前ら、私守れよ、弱いんだから。」

「「「イエス、マーム」」」

そうして携帯ゲームの戦闘が始まった。

「こいつ火力でゴリ押し効かなくね。」

「よし、三方向からの射撃と琴菜の魔法で」

「「りょ」」

カタンと携帯をみんなおいて、脱力している。

瞬がしびれを切らして口を開いた。

「功太も好きとか聞いてねぇよな。奏、どーすんのよ」

「それそれ、奏は美香の事どう思ってんの、明らか修学旅行から変じゃん」

「部活にも見に行ったって聞いたよ。」

はあ、と深いため息をついて一言言った

「俺が、あいつをもらう。功太には引いてもらう」

そのセリフに三人はやっとか、と安堵し脱力した。

「あの、一匹オオカミ奏がここまで言うとは。がんばったな、美香」

「それな」

「美香聞いたら喜ぶだろうな。」

呆れたように奏が釘を刺す。

「俺からちゃんと言うからお前ら何もするなよ」

「「「アイアイさ~」」」

「やる気ない返事だな」

と言って笑った。


私はバイト終わり、家にあまり帰りたくなくて海に向かった。

<先にご飯食べてていいよ>

<門限までには帰る>

母親にだけメッセージを送り、既に夜になってしまった海と空。

空には少しの星とかけた月が出ている。

「私はなんとか今回うまくいかせたいな」

カシャカシャ

二枚シャッターを切って思った。

夜の月の存在が大きいことに。星なんて簡単にかき消してしまう。

時刻を見ると、門限に間に合わないような時間だった。

「飛ばせば、なんとか」

慌ててバイクに跨り、家に帰る。

「美香ちゃん、ギリギリ」

「セーフ」

そういう両親は遅めのご飯を食べていた。

圭太は疲れたのか部屋で寝ている。

私も遅めのご飯を食べ始める。

「美香、進路の事なんだが。県外になると親戚の家からとかになってしまうし、迷惑になるかもしれない。」

「それにそう簡単に帰って来れないでしょう?」

「わかったから、もうこの話終わり。」

「パパもママも心配なのよ」

「わかったから!じゃあ圭太の件は?進路は私が我慢すればいい。圭太をいつまで我慢させる気?それが一番心配なんだけど。」

「それは…。」

「そうだよね、パパだって被害者だもん。答えられない。ましてや自分の親」

「ママは?いちいち腹立てて喧嘩していた板挟みにするもんね。思ったことは言っちゃうもんね。」

「そんなにママを悪く…。」

気まずい雰囲気になってしまった。

こんなのは、私がどうにかするしかないのだ。

「私、県内の学校で国家免許をとる。県外じゃなくて。その代わり」

私の言葉に驚いている。

「圭太も連れていく。確かに寮のが安全かもしれないけど、ここにいたら可哀そうだもん。だから、それを認めてください」

「お金は。」

今の銀行の口座の金額を見せた。

「これは…。」

貯めに貯めて100万を超えていた。

「初めの月くらいはこれで生活できるでしょ。」

「いつから、そんなに。」

「高校入った時から。」

まあ、あと約一年あるのでそしたら50万くらいは増えてるかもね。

「話変わるけど、来週の土曜日琴菜の家泊まるから。帰って来ないんで。」

淡々と話す私にもうつていけてないママは残りのご飯を食べ始めた。

「その泊まりは男子もいるのか。」

「男子は男子で他の家に泊まってるよ。」

言い忘れてた

「パパ、ママ。圭太には美香から言うし、ジジババにも美香から言う。話を勝手にしないでね。ぐちゃぐちゃになるから。」

そう言い残して、部屋に入った。

<よぉ、祭りの日。楽しみだな。

<そうだね、泊りの件も無理やり取り付けてきた

<そうか。進路は?

<何とかなると思う。弟次第だけど。

<そうだな。でも頑張った。

えらい褒めてくれるな。

<そんな褒めてもなにも出ないぞ

<俺様からご褒美をやろう。祭りが楽しみだな。

<なになに、怖いんだけど。

マジでこわーい。でも嬉しいような。

私ってMなのかな。

<ほら、早く寝ろ、肌に悪いぞ

<そうだね、おやすみ

<おやすー


こんな長いやりとりは初かも。

やば、何着ていこう。

ワクワクで寝れなくなったのは言うまでもない。


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