第7話 学年と夜の海

私たちは高校3年生になった。

修学旅行からというもの、付き合っているんじゃないかとさらに噂が広まり、奏を好きだった隠れ女子たちは、私にいちゃもんをつけるようになっていた。

関係が曖昧なのは仕方ない。

でも、確実な情報がないのに文句を言われる筋合いはない。

私も奏もめんどくさがり、だから否定するのも次第に辞めていた。

「なぁ、なんで同じストラップつけてるのに、付き合ってないのに」

「そうよ、面倒なのよね、こっちにもあいつら聞いてくるから。」

遥翔も琴菜も、呆れている。

まぁ、そうだろうな、と苦笑いしながら、ジンベイザメに目をやった。


3年生は地味に面倒なことが盛りだくさん。

進路を決めたり、テストの単位が危ない人は勉強したり、人によっては部活の引退をかけた大会だって控えている人だっている。

ちなみに、私は、どれにも当てはまらない。

進路も決めてあるし、テストだって赤点ばかりだったけど、提出物のおかげで免れている。部活もしていない。

だから、いつも通りにバイトに行き、車校のお金を貯めていた。

親に、迷惑をかけたくなくて。

しかし、友達に連れられてある日、ある部活を身に行った。

奏のいる部活だ。奏は流れに身を任せて生きてる人。だから、私も興味を持った。

ここまでつるんできて、無表情だけど、なにも考えて無い訳じゃない。

感情を悟られないようにしてるだけ。なぜだか、わからないけど。


スマッシュを打った時の奏はとても、普段見ている奏とは違った。

羽の流れを読もうと、必死に目を動かし、反射神経で返す。そして、相手の隙をついて、撃ち落とす。

校内だけの練習試合では奏は勝ったり、負けたり。

でも、そんな彼を見て惚れ直している自分が居た。

しばらくして、奏は私のところにやってきて、

「何見に来てんだよ、バーカ」

と言って、手で私が居なくなるように、シッシッとしている。

まぁ、カッコいいとこ見られたし、連れてきてくれた友達に別れを連れて家に帰った。

バイクにまたがり、海に向かう。

春のせいか、少し風が肌寒い。

少し波立った海は黒に白が少し混ざり、空は夕日が夕日が沈もうとしていた。

「今日は、少し、遅くなったな。」

カシャっとシャッターを押した。


家に帰ると、圭太が半泣きになっていた。

今日、進路の話しようと思っていたんだけどな…。

良いことのある日は大体家が荒れている。

修学旅行もそうだった。何度も、ママからのメッセージと圭太からのSOSが届いていた。

「今日は、どうしたの」

ばぁちゃんとママに言う。

聞いてみれば、圭太の帰り時間が門限より少し過ぎてしまったらしい。

それに心配した祖父母がママに問い詰めたらしい。

圭太はもう中学2年生だ、部活で少し帰りが遅くなることもあるだろう。

それを1時間たっても帰って来なかったならまだしも、30分でこの状態なのだ。

はぁ…。

と大きな溜息をついた私に、ばぁちゃんはすぐに

「また、わしが悪いのかね!」

と言って持っていたお皿をドン!っと音を立てて置いた。

「そんなこと、一言も言ってないでしょ。それに圭太だって男の子だし、友達関係だってまだある。それを、私たちが邪魔しちゃいけないじゃないかな。」

その言葉に、大人たちが固まった。もっとも正論だからだ。

「圭太、遅くなるなら部活終わった後でもいいから、友達と別れた後でいいから連絡一本入れてね。」

そう言った私にコクンと頷き、私の後ろに隠れた。

「じゃ、この話終わりね。ご飯食べよう。」

私の言葉に祖父が動く出す。

ママも少しムスッとしながらも、お茶碗にご飯を盛る。

祖母は少し、部屋を出て行ってしまった。


私はご飯を食べ終わったあと、ママとパパに進路の話をした。

地元を離れる事、免許が欲しいこと。

「わかった、じゃ、6月面接なのね。」

「うん、受けてもいいかな。」

「いいよ、ただ、都会はダメ、県内で寮のある所にしなさい。それができないなら家から出ないで、地元就職しなさい。」

「え、今時そんな条件のところなんて。」

「なんで、行きたいところも行かせてくれないの!!いっつもそう!パパもママも圭太をを祖父母と仲良くないからって、美香を板挟みにして。どれだけ穏便に圭太に迷惑かけないように、私がどれだけ苦労してきたかも知らないで!いい加減にして!」

私は、バイクにすぐさまエンジンを入れていつもの海に走り出した。

時刻は既に夜8時半すぎ。

海は真っ暗で何も見えなくて、波の音と、かすかに光る星をテトラポットにもたれながら見上げた。

涙が込み上げた。こんなにも我慢してきた気持ちを爆発させてしまった。

圭太を守れるのは私だけなのに。

やっぱり、家に残った方がいいのかな…。

ふと、携帯を見ると、奏からメッセージ。写真付きで。

<これ、お前好きそう

<写真

写真を見ると、チョコレートの新商品だった。

<今度、学校持ってきてよ

悟られないように普通に返す。

<一緒に食おう、今

今!?

そう送られてきたのを見た後に物音がして顔を上げると驚いた

「な、なんで」

「コンビニ行った帰りに、お前のバイク見かけたから、追跡してみた?」

そう言った奏は、ニコッと笑って、ポンと頭に手を乗せて撫でてくれた。


それから、奏は合図地を打つだけで話を静かに聞いて慰めてくれた。

そしてこういった。

「よくがんばったな、あとは俺に任せろ」

と。そんなことを言った奏は、心強い味方になってくれたのだった。

そして、最後にこう言った。


「俺がこれからは守る。」



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