勇者と魔王の娘がお互いにまさかの出番が無い話の続き
「し、知り合いだったんっスか兄貴ィ!?」
「まぁな。で? わざわざこんなとこまで何の用だ?」
サラバントの質問を受け、ミリアリアは口を開く。
「今日は、サラバントさんに折り入ってお願いがあって参りました。貴方に、元
瞬間、サラバントを兄貴と慕う青年が、ミリアリアの胸ぐらを掴み上げた。
ブレイブリー。それは、数年前まで存在した、天上天下以上に名を馳せた最強のギルド、別名、勇者パーティー。所属メンバーは、勇者アヴェルを始めたったの5人。そのうちの一人が、黒魔道士サラバントであった。
ブレイブリーは数年前、アヴェルが王国騎士団に加わったことで解散となった。ブレイブリーは冒険者達にとって憧れであり、目標であり、皆のリーダー的存在であった。そんなギルドが国の引き抜きによって解散となったのだ。冒険者達が国を良く思わないのも当然である。
そしてミリアリアもまた、今はその国の一員。青年の言葉を受け、彼女はただ押し黙るしかない。そんな彼女を救ったのは、意外にも当の本人だった。
「やめとけジーノ。俺りゃ別に国に恨みは無い。」
「兄貴… で、でも…!」
「それにな、ブレイブリーは何も国のせいで解散になったわけじゃない。アヴェルは自らの意思で王国騎士団に行ったわけだし、俺らはそれを後押しした。解散になったのは、いい機会だし、各々それぞれの道を歩もうかって、皆でそう決めたからだ。…てなわけだから放してやれ。」
「兄貴がそういうなら…」
ジーノはそう言って、ミリアリアを開放した。
「すみません、サラバントさん。」
「なーに、感謝されるようなことはしてねぇよ。だがなんであいつら集めろなんて… 何かあったのか?」
「はい。まだ報じられていませんので、詳しくは言えませんが…」
ミリアリアは、懐から一通の書簡を取り出し、サラバントに差し出す。
「姫様からです。」
「エリーゼ姫から?」
サラバントは驚きつつ書簡を受け取り、目を通し始める。
書簡には、エリーゼの手書きと思しき字で、アヴェルを国が引き抜いたことへの謝罪、詳しくは言えないが深刻な事態が起こったということ、それの解決には元ブレイブリーの方々の協力が不可欠であること、どうか話だけでも聞きに来て欲しい、依頼はその時正式に出すという旨の記述がなされていた。
「…なるほどね。それで俺に、あいつらに声かけてくれと。」
「はい。
サラバントはミリアリアのそのセリフを受け、何かを感づいたように目を細める。
「…ふーん。よし、協力しよう。すまんがジーノ、ギルマスに暫く暇貰うって伝えといてくれ。ダメって言われたら俺抜けるって言っといて。」
「えぇ!? 兄貴うち辞めちゃうんスか!?」
余談だが、サラバントは現在、ジーノと同じギルドに所属している。
「なんかすいません。」
「いいのいいの。だがまぁ正直、全員を集めるのは厳しいだろうな。ドワ娘の奴は王都にいるからすぐ連行できるが… クオリアは故郷に帰っちまったし、マールス様は旅に出るとか言ってそもそも何処にいるかもわからねぇし。」
「そうなんですね… できうる限りで構いません。お願いします。」
「あいよ。」
ミリアリアは最後に深くお辞儀をし、去って行った。
「何があったのか、気になるっスね…」
「ま、大方予想は付いたかな。」
「えぇ!?」
—————
【勇者パーティー】
アヴェル
リーダー。剣士。女の子と手を繋ぎたいが為に、国宝を真っ二つにへし折ったことで有名。
サラバント
副リーダー。黒魔道士。みんなの兄貴的存在。よく半裸で風を受けている。子供達の間で、S.B.Revolutionごっこが流行中。
リチェルカ
ドワ娘。白魔道士。ドワーフ故に、戦士系の職の方が適性があるのに、姫プをしたいが為に白魔道士をやっている。尚、勇者パーティーにおいて姫プは一度も成功していない。
クオリア
褐色系少女。アーチャー。超遠距離射撃が得意。口癖は「狙い撃つぜぇ!」。異世界転生してきたと思しき冒険者達からソワソワされがち。
マールス
マールス様。魔法剣士。仮面系二刀流魔法剣士とかいう男のロマンを体現している凄い人。女性冒険者達から神格化されがち。
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