メイストームに花束を


君に花の名前を教えよう。花は毎年必ず咲きますからね。タンポポという花、知ってるよね。君にはそれが似合う。

 





拝啓 だいすきだった、「堕天機ボーイ」こと義久くん



今日は、ありのままの私を、語りきれない気持ちを語ろうと思う。


今日は、5月13日、メイストームデイ。

何の日かは、わざわざ説明したくないからググって。


この13という数字を見ると思うんだ。私たちが付き合ったのは10月13日だったね。「らぶ米」の、イルミネーションのエピソード、覚えてるかな。あの日から、ずっと私の頭の中は君のことでいっぱいよ。卒業して、大学生になって、会えなくなっても、13が来るたびに君のことを思い出す。思い出すんじゃない、本当はずっと君のことしか考えてない。


いい加減、自分の道に集中しないとって思いながらも、シロクマ効果ってやつだね。ミルクとパンダはシロクマで世界が弾むの。関係ないや。


本当は、毎週のように遊んだり、どうでもいい話で笑ったり、そんな生活を永遠に続けたかった。でも、そういうわけにはいかないみたいだね。







私はこれからも私らしく、楽しく、強く、笑って、生きようと思っていて。がんばってきた。これからも、がんばっていく。


本当は、悲しくて、寂しいのよ。誰にも見えないところでは、ちゃんと、いっぱい、いっぱい泣いた。食いしばって泣いたし、嗚咽を漏らして泣いた。だいたい手元にティッシュが無いからめんどくさいことになるんだけどね。辛いなんて言ったら「茶目娘」失格だから言わなかったけどさー。


他人の思考ってさ、面白いくらい分からないし、読み取れないよね。SNSを見ても、謎は深まるばかり。そう、君のことだよ。本当に最近、何を考えているのかわからない。お互い少し大人になっちゃったのかもね。


正直ね、私たちが進展したあの10月、卒業と進学が区切りになることは予想していたんだよ。私もそこまで向こう見ずじゃないの。それを踏まえた上で、最後の数ヶ月だけでも、「ちゃんと君だけの特別の女の子になりたい」と思って振り絞った勇気だったの。だけどさ、いつだったか「花火見たかったな」って話をしていて、「来年見よう」って言ってくれたとき、「あぁ、来年も一緒にいるつもりなんだ……」ってホカホカしたのを覚えている。結局は予想通りのシナリオになるだけ。なにも、なにも悪くないよね。


ただ、どんなに君のことを考えないようにしても

あのとき買ったもの、あのとき一緒に見た動画、あのとき行った場所、君がいるはずの土地、って身の回りに思い出が溢れ過ぎていてさー、


この記憶は、今の私って人間と切っても切れない関係なんだって思った。目を背け続けるわけにはいかなかった。封じ込めたはずなのに、あらゆる隙間から出てきちゃう。もう、呪いみたいなものだよね。


だから、ちゃんと向き合って、受け入れて、きれいにしまって生きていくしかないんだ。


それにしても、きれいすぎるよね。


ほんとにほんとに素敵な冬だった。欲張りを言えば素敵な春と夏も見てみたかったし、なんならあの冬をもう一度再現したいくらいだよ。



でもでも、付き合う前もそれはそれで楽しかったの。「できることなら一緒になりたいけど、今のままでも楽しいからいいや」ってスタンス。友達ごっこ。好きなのに、「ドキドキ」より「楽しい」が勝つ不思議な感覚。あれサイコーだった。君もさ、よく気づいてないフリ貫いたよね!


ねえ知ってる?カップルとしての私たちは、読者さんたちからすごく推されてたんだよ?自分でもいま客観的に考えたらけっこう推せた(笑)

暇人茶目娘×堕天機ボーイ。個性派キャラのコラボ。



君はさ、いろいろ極端で、メンタルも不安定で、謎にプライドが高くて、視野が狭くて物事の側面ばかり見てる、今になって言えるグチはたくさんあるけれどね。それを遥かに上回るまっすぐさと、邪念の中に覗き見える純粋さと、気持ち的な忙しさと、話題豊富で自分についてもたくさん話せるところ、何にでも興味を持つところ、他人思いなところ、細かいことに気づけるところ、目の前のことに一心不乱になるところとか、とにかく全力少年って感じの義久くんが、私はすごい好きだった。


君はそれ以上に私の欠点もたっっくさん気づいてて、癪に触るところがたくさんあったんじゃないかな。そんな私を側に置いてくれてありがとう。



私たちはもう一緒にいなくても、お互い違うところでまた幸せになるんだろうね。けどまあ、関係性はなんでもいいから永遠に同じ世界で生きていたい。これ格上げか格下げかもう分かんないねぇ。本当に本当に元気でいてほしい。だって死なれたらこちらも「病む〜」じゃ済まないからね!頼むよ!



最後に残るのは、「ごめんなさい」と「ありがとう」ばっかり。


まずは、たくさん強がってごめんなさい。もうちょっと上手に甘えられたら良かったな。嫉妬して、バカなマネして、しつこくして、ごめんなさい。意地悪な質問をしてごめんなさい。たっくさん悩ませて、迷惑かけて、大切な時間を奪ってしまって、ごめんなさい。君が伝えてくれたことは全部、君が思う以上に真剣に受け止めてるよ。


そして

成長させてくれてありがとう、幸せを教えてくれてありがとう。


今の私は、毎日が楽しく忙しい。私はもう暇人じゃない。お茶目でもないし、娘と呼ばれる歳かも分からない。



私は「暇人茶目娘」を卒業する。九ノ瀬めぐみとして、大人になる。



義久くん、私を茶目娘でいさせてくれて、ありがとう。




このさき何十年と生きていくなかで、辛くなったとき、人生つまんないなぁって思ったときにさ、これが畢生の須臾だとしても、ちゃんと楽しい青春があったんだよってことを読み返せるように。ちゃんと結びを作っておこう。




これは、失恋なんかじゃない。

ひとつの物語の「完結」


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