これは必要火急っ!

「何しに来たんだよ」

「暇すぎで死にそうだから。猫なでに来た!あとさー、なんか面白いマンガとかあったら貸してよー」

「そうゆうのを不要不急の外出っていうんだよ」

「だから!これは必要火急っ!暇すぎて私ほんとに死んじゃうよ??あ、火急って言葉知ってた?不急じゃないこと、あ、その!対義語ってやつ!」

「君みたいな奴がいるから終息しないんだよなぁ...」


スルーして、私は眠る猫をなでる。

「まぁ好きにすりゃいい、俺は英検の過去問120分やるから」

「マジメかよぉ。いいの、私はネコちゃんと濃厚な時間を過ごしますから〜」


「にしてもさぁ、英検ってほんとにやるのかなぁ」

ついさっき私は知ってしまったのだ。級は違うけど私も受験する予定だったから。英検は延期になったってことを。延期日程だってまだ目処も立っていないらしい。でも推薦だかAOだかを狙う彼には、延期すると間に合わないかもしれないらしい。それに気づかせるために...


「中止だってな」

「あ、知ってたの?」

「ついさっき」


「それなのに、今から模試やるの??」

「いつか受けるんだし、集中力もつくし、やっといて損はないからな」


意外な反応だった。え、中止?って驚いて、勉強のやる気なくして、しばらく私と駄弁ることになるのがシナリオだったのに!


「ふぅん。マジメすぎてちょっとキモいかも」

「必要火急とか言って俺んち来る方がちょっとキモいかも」

「ふんっ!あ、そうだ、通学定期ってもう解約した?」

「もともと1ヶ月だから、解約しない」

「おぉ、私もだよ!いつまで?」

「来月の、6日くらい」

「わぁお同じだ!奇遇だね!」

「知ってた。買ったとき定期券売り場で会ったもんな」

「あーーそいえばー、そーだったかも......、じゃあ、6日まで遊びに行き放題だね!!」

「どうしたらこんな馬鹿が生まれるのやら」


そうして私たちの漫談はかれこれ2時間くらい続いた。そう、120分。


彼は私をさんざんバカにし、私は彼をさんざん変人扱いした。あっという間に4時の鐘が鳴る。小学生のころの門限、友達と別れるのは寂しいけれど、おうちであったかいご飯が待ってる音楽。

「さ、お子ちゃまは帰る時間ですよ」

「せめて小学生にしてよ!」

「あ、小学生でいいんだ」

「なんかはらたつ」


最後にもう一度猫をなで、私は帰り支度をした。

「さて、これで必要火急の用事は済んだのか?」

「ん」


死にそうになってたのは本当なんだよ?会えないと寂しいもん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る