第6話

「エイブル2、タッチダウン」


 降下を終えて、コールサインを名乗る。すぐさま手近な岩陰に身を隠した。

 周囲は岩と砂が延々と続く、乾いた大地だ。植物は数えるほどしか見えない。遠くのほうに野営地の明かりが見える。あれが目標の部隊だろう。多少距離はあるものの、乾燥地帯の夜は存外心地よく、身を隠すポイントが少ないことを除けば活動しやすい気候だった。


『エイブル1、タッチダウン』


 無線からテメルの声がした。視線を巡らせると、数メートル離れた場所に着地していた。今回の作戦でも僕らのチームは部隊長の捕縛を担当することになっている。

 それからチームの仲間たちが順次着地をする。エイブルであるチーム32は問題なく全員が降下を終えたようだ。そうして、続々と後続のチームが降下する。


〈ズールー1より各班へ。全員の降下を確認。これより開始されたし〉


 上空のオペレーターから通信が入る。


「さて、私たちの仕事は指揮官の確保ね。ちゃっちゃと終わらせましょ」


 降下地点から集合したメンバーに向けて、テメルが言う。


「やっこさんらは今頃明日に備えて夢の中だ。そう難しい任務じゃないだろ」


 同調するようにエニスが言うと、


「それでも、見つかれば終わりよ。慎重にね」


 テメルが釘をさした。


「あいよ」


 それに、それぞれがうなづきを返す。そうして僕らの作戦は始まった。

 とはいえ、僕らがまずやることといったら、標的がいるキャンプへ向けての徒歩での移動だった。行軍というほどの距離はない。けれど、視界を遮るものがない荒野での移動だ。監視している誰かの視界に入ってしまったらすぐに見つかってしまう。そういうわけで、岩陰をこそこそと迂回しながら、時には匍匐で草の影に隠れながら、じわじわとキャンプとの距離を詰めていった。散々移動訓練は受けているとはいえ、キャンプにちっとも近づいているように感じられないことには、じわじわとストレスを感じる。

 ようやくキャンプを目と鼻の先に捕らえた頃には、降下から一時間が経過していた。


「見張りがいるわね」


 岩場に伏せながらゴーグルを覗く。テメルの言う通り、手前に一人、奥にももう一人。ここからでも二名の歩哨が確認できた。しかし、立ち並ぶテントで視界が遮られ、奥深くまでは見渡せない。


「どれだけいるかわからないね」


 テントの影に入られたら姿を確認できない。いつどこから見つけられてしまうかわからないというだけで、難易度は格段に上がってしまう。


〈ベーカー1。完了〉

〈エドワード1、同じ〉

〈メリー1、同じ〉


 そのとき、僕らと一緒に降下した別班から通信が入った。


〈確認した。行動開始〉


 すぐさまオペレーターから返答が来る。そして、事態は急激に動き始めた。

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