第4話  現場検証


 ゴーカート場の駐車場は、まるでミニカーのように新しいパトカーで埋め尽くされていた。


「まあ、若手ワンマン社長のわがままが引き起こしたことだな」


「では警察としては、私の責任は・・・・」


「あなたが彼に忠告している映像も残っていますから、責任はないですよ。このゴーカート場が営業停止にはなりませんが、大変ですね、評判が悪くなって」


「いえ・・・それがですね、いつ再開するのかって問い合わせが結構多くて」


「死亡後に脱税で起訴されている人物の死亡場所だ。会計士も悪質だと家宅捜索を受けている、まあ時の人と言えばそうか。それでは良かったじゃないですか」


「まあ・・・でも・・・やっぱり人が亡くなるのに立ち会ったんですから」


「彼は何か言っていましたか? 」


「不思議な事を。Uターン、Uターンって。何の事かなと思って。まあ、ヘアピンカーブもUターンと言えばそうかなとは思いますが」


「Uターンね・・・」


警官はそこで話を止め、実質的な仕事をし出した。現場検証は速やかに終わり、彼の会社は大変な事にはなっていたが、このゴーカート場を含め周りの人間には不思議と益があった。



パトカーの中で警官たちは話した。


「本当に打ちどころが悪かったんですよね。でもどうでしょう、これがケガで済んでいたとしても、刑務所行か、莫大な保釈金だ。会社の経営が傾いているのに払えましたかね」


「もし刑務所に入ったら、猶更悪知恵を付けることになっただろうから、まあ・・な」


「占い師から直接話は聞けなかったんですが、そこを紹介した人物から確かに「Uターンに気を付けるように」と忠告されたらしいんですよ。この事で占い師の所に客が殺到しているらしいんですが、でも客からクレームもあって」


「どうして? 」


「彼女が「社会的に悪いことは絶対にしてはいけない」ということを強く言うんだそうです、でもそれは占いじゃないと客は思うらしくて」


「まあ、今度の事でそう言わざるを得ないだろう。

皮肉なものだ、法の隙間で悪いことをして成功した男が、ゴーカート場でヘルメットの着用をしなかった、って言う小さなルールで命を落とした。Uターンとヘアピンカーブはまあ近いと言えないこともないから、占い師としても当たってうれしいような、怖くなるような出来事だったんだろうさ。

彼に下された、「見えざる法」による神の裁きのようだ。占い師がそれに抗うことなどできはしないさ、神秘を扱うものとして」


「なるほど。じゃあ今回の事件はスムーズに解決できたということですね」


「そう言うことだろう、彼の死で色々な所に金が回っている、亡くなったが、本望だろう」


パトカーはスムーズに加速した。



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占い師の忠告 @nakamichiko

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